漢は諦めが肝心。
めぐみはW・S・U・S本部に程近い純喫茶で駿と待ち合わせをした――
「此処のカレーライス、ハンパ無く旨いっ! 卵サンドとオムライスが名物みたいだけど……chatGPTがこんな事で役立つなんて……恐らく巫女twin’zの情報源は神官だな……」
‶ ベン、ベン、ベベン、ベン、ベン、ベベン、ベン、ベン、べべべベッ! ″
‶ カラン、コロン、カラララ――――ン、カラン、コロン ″
‶ いらっしゃいませぇ――――――っ! ″
「めぐみちゃん、お待たせっ!」
「あっ、駿さん。呼び出してごめんなさいね」
「あ。ズルいなぁ、何、ひとりで美味しそうな物食べているの」
「いやぁ、チョっとお腹が空いたもので……ほらっ『腹が減っては戦が出来ぬ』と言うでしょう? あはは」
「じゃぁ、僕も食べようかなぁ」
「名物は『ふわっふわ食パンの卵サンド』それと『デミグラスソースのとろッとろオムライス』よ」
「ん? めぐみちゃんのは?」
「これは『懐かしい昭和のカレーライス』よ。神官の情報では『この店に来たら、まず、第一に食すべし』って事で」
「神官は食道楽だからなぁ……じゃぁ、僕もそれ」
めぐみはオーダーを済ませ、料理を待っている間に本題に入った―
「駿さん、レプティリアン達を人間に生まれ変わらせる事なんて出来るの?」
「勿論だよ。神様だからね。只、正直に言うと宇宙人は初めてだから、やってみなければ分からない。でも、問題が無ければ大丈夫さ」
「問題って?」
「つまり、生まれ変わらせた後の事さ。ラノベ小説やTVドラマでは『やったー!生まれ変わったぁー、ウォ――――オ!』でエンディングだけどさ。完全な人間にしなければいけないんだ。真人間じゃないとね」
「真人間に生まれ変わらせるのね……」
‶ お待たせいたしました。『懐かしい昭和のカレーライス』とセットのコンソメ味噌スープと、もろみ醤油ドレッシングのサラダでぇす ″
「おぉっ。こりゃ美味しそうだね。いただきます」
―― W・S・U・S本部
館内はレプティリアンによって破壊され、職員は逃げ惑い、地獄絵図の様相を呈していた――
「止めろっ! 止めてくれっ! こんな事をしても無駄だ、冷静になるんだっ!」
「俺達を散々利用しておいて、何を言いやがるっ! おいっ! 八岐大蛇プロジェクトを粉砕するぞっ! 総力戦だぁ!」
‶ おぉ―――――――――おっ!!! ″
「クソッ、マズい事になったぞ。マックス、金田に至急非難する様に伝えてくれっ!」
「ハイ。ショチョウ、金田研究員は、小笠原諸島に、主張で、不在デス」
「何だとっ?」
「ザンネンナガラ、八岐大蛇の、取り扱いは、誰にも、デキマセン」
「それでは……」
「ハイ。間もなく、レプティリアンと、全面衝突になると、オモワレマス」
「どうすれば良いんだ……」
「ハイ。何か、する事を避け、逃げるのが、得策と、オモワレマス」
「そうはいかない、このままでは、これ迄の苦労が水泡と帰するではないかっ!」
「ショチョウ、男は、諦めが肝心です。オカクゴヲ」
「いいや、覚悟をするなら……全面対決、受けて立つ!」
「イイエ、それこそ、悪手です。ショチョウ……」
「マックス! 敵に背を向けて逃げたとあっては、それこそ漢の……武神、軍神の名折れであるっ!」
南方が覚悟を決めたその時、館内のスプリンクラーは停止して、とうとう、火が回り始めた。メラメラ、轟々と燃え盛る炎の中で、レプティリアン達は八岐大蛇と対峙した――
「おいっ! 見ろよ、あれが八岐大蛇だぜっ!」
「此奴のせいで、俺達はお払い箱になったんだっ! 殺してしまえっ!」
‶ うおぉ―――――――――おっ!!! ″
血気盛んなレプティリアンが、我先にと飛び込んで行った。だが、手に持った鉄パイプやバール、サバイバル・ナイフなど全く役には立たなかった――
「な、何なんだっ! 鱗はまるで鎧の様だっ!」
「切っても切っても再生してしまうぞっ!」
攻め手に窮するレプティリアンを余所に、繁殖された八岐大蛇が火の手を察知して地下室から大量に湧いて来て、前線のレプティリアン達は撤退を余儀なくされた。だが、押し寄せて来る仲間のレプティリアンに退路を塞がれ、逃げる事が出来なくなっていた。そして、それだけで済むはずも無く、レプティリアン達の背後に八岐大蛇が迫って来ると、反撃が始まった――
「退けっ! 退けっ! 退くんだっ!」
大きな口を開けて鋭い舌が伸び、後頭部から首へと巻き付くと、ウインチの様にジリジリと口中へ引っ張り込んで行った――
「うごっ、く、苦しい。助けてく……」
‶ ガブッ! ウンゴッ、ウンゴッ、ウンゴッ、ゴックン、ゴフッ ″
頭から丸呑みにされて、消化されて行く仲間の姿を見ていたレプティリアン達に動揺が走った――
「おい、これはっ! 本当に死ねるぞ。俺達の死に場所は、此処だったんだ……」
「あぁ、長い旅も……これで、終わりに出来るんだ……」
「みんな、ありがとう」
「お疲れ様……」
―― W・S・U・S本部 正面玄関
「あぁ、美味しかった。めぐみちゃん、神官の情報は間違いない鉄板だね」
「いやいや、chatGPT経由だから。鉄板なんて言ったら、鉄板焼きの名店を紹介されてしまうわよ」
「ん? めぐみちゃん。何だか静かだね……」
「本当だ。破壊され尽くして誰も居ない感じね……」
館内は静まり返っていた。そして、ふたりが歩みを進めて行くと、レプティリアン達を全て飲み込んで、大きなお腹を上に向けて消化をしている八岐大蛇が数え切れない程だった――
「あらあら、食い倒れですか? これなら簡単に退治できるわね」
「めぐみちゃん、そう簡単では無さそうだよ」
「え?」
駿の視線の先に目をやると、そこには、仁王立ちの南方武が居た――
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