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生きるとは、死ぬ事とと見つけたり。

 ―― W・S・U・S本部


 メールが一斉送信され、数時間が経過すると、W・S・U・S本部前には中に入り切れない程のレプティリアンが集り、溢れ返っていた――



 ‶ ザワ、ザワ、ザワ、ザワザワ、ザワ、ザワザワザワ、ザワザワザワ ″



「ショチョウ、大変です。W・S・U・S本部の、周囲が、レプティリアン達に、囲まれています。異常事態デス」


「何だって? 一体、何の騒ぎだ……」


「ハイ。レプティリアン達は、何か要求が、有る様です。行って、確認をして参ります。暫く、お待ちクダサイ」



 マックスがロビーに出ると、レプティリアンの代表が南方と面会を申し込んだ――


「ハイ。ザンネンデスガ、ショチョウハ、ミナサマト、チョクセツ、オアイスルコトハ、デキマセン」


「今後に関わる重要な話なのだ。何とか……取り次いで貰いたいっ!」


「ハイ。ゴヨウケンハ、ナンデショウカ?」


「俺達は、本当に人間にして貰えるのか確認をしたい。具体的に何時なのかを教えて欲しい」


「ハイ。ソノケンニ、カンシテハ、コベツジアンノタメ、オコタエデキマセン」


 マックスは頭を下げて礼をすると、踵を返して戻ろうとした――


「待ってくれっ! 八岐大蛇ヤマタノオロチプロジェクトが進行中で、俺達は、お払い箱だと皆が噂をしているんだ、このままでは、士気が下がる一方だ」


「オヒキトリ、クダサイマセ」


 マックスの対応に、館内に怒号と罵声が響き渡り、鳴り止まなかった。そして落胆して泣き出す者まで現れると、怒りは最高潮に達した――



「やっぱり、俺達は騙されたんだよっ!」


「あぁ、そうだっ! そうに決まっている。良い様に利用されていただけだっ!」


「こんな事が、許されるのかっ!」


「こうなったら、こんな奴等の云う事なんか聞いていられない、大人しく黙って引き下がったりしないぞっ! こんな所、こうしてやれっ!」


 レプティリアンの中には気の短い者も居て、ロビーの椅子を持ち上げると、正面玄関の大きなウインドウに投げ付け、破壊した――


 ‶ ガッシャ――――――――ンッ! ガラガラ、ドッシャ―――――ンッ!! ″


 その音と、崩れ落ちるウインドウが床に落ちて粉々に砕ける姿に、レプティリアン達は自分たちの姿を重ね合わせ、一瞬、息を飲んだ。だが、次の瞬間、堰を切ったように破壊はエスカレートして行き、テーブル、什器、ありとあらゆる物が破壊され散乱してロビーは地獄絵図の様になっていた――



「止めろっ!」


「おいっ、見ろよっ。南方所長だっ!」


「落ち着き給え。何か、誤解が有った様だな。君たちの要求に従おう。さぁ、確りと話し合おうではないか」


「有難う御座います。南方所長」


「あぁ、但し全員は無理だ。入りきれないからな。代表と各地域のリーダーだけにしてくれ給え」


「はい。畏まりました」


 南方の指令を受けた代表はリーダー達の点呼を取ると四十人になった――


「おいっ! 騙されるなよ。此奴は食わせモンだぁ。言い包められちゃあ、何もならねぇぞっ!」


「俺達の要望だけは……きちんと伝えてくれよ……」


 代表は力強く頷くと、レプティリアン達を解散させ、会議室に向かった――



 ―― 第一会議室


「さぁ、どうぞ皆さん、お掛け下さい」


「所長、早速ですが、お聞きしたい事が有ります。我々は、何時になったら人間にしてもらえるのですか?」


「何時? と言われましても……何故、そんなに急ぐのですか?」


「急いでいる訳じゃありません。只『人間にして貰えないのではないか』と、疑っているのです」


「代表っ! もっと、ハッキリ言わなきゃダメだっ! 個別事案などと言ったところで、此れ迄、誰一人として人間になった者などいないじゃないかっ!」


「そうだ、そうだっ! 八岐大蛇ヤマタノオロチプロジェクトの成功で、俺達は、お払い箱なんだろっ!」


 ‶ ザワザワザワ、ガヤガヤ、ガヤガヤ ″


「皆さん、静粛に。落ち着いて話し合いましょう。八岐大蛇ヤマタノオロチプロジェクトは成功したとは言え、まだまだ道半ばなのです。皆さんにはこれ迄通り、活躍して頂きたい。先に申し上げた通り、何か誤解が有る様ですな」


「誤解? 俺たちが何を誤解していると云うんだっ!」


「皆さんは『人間になりたい』と言うが、既にヒト型爬虫類として社会生活を送っている。本当の人間になると云う事は、つまり……生命体として、今よりも劣化した状態になると云う事です」


「あぁ。分かっているとも」


 南方は。予想もしていない言葉に驚いた――


「わ、分かっている……? 本当の人間になると云う事は……たかが百年の命、下手をすれば、今日、帰りに交通事故で死んでしまう様な、脆弱な生命体になる事を意味しているのだっ! そんな、馬っ鹿馬鹿しい事をする意味など……」


「南方所長。誤解しているのはあんたの方だ、あんたの勘違いだ」


「この私が勘違いだと?」


「あぁ、そうさ。俺達、地球外生命体は不老不死だ。だが、それは幸福な事では無い。永遠の命のせいで、何万年も音も光も無い宇宙を流離って来たのだ」


「そうだ、そうだっ!」


「ならば、君達は死に場所を探していたと云うのか? フッ。安心し給え。死に場所なら幾らでも用意してやる」


「違うっ! 俺達は、この、美しい青い星で……『人間として』死にたいんだっ!」


「俺達は、時に悩み、苦しんだりしながらも友情を育み、恋をして、子供を儲けて慎ましく暮らしたいんだっ! もう、二度と宇宙を流離うのは嫌なんだよっ!」


「あんたは神様だから、そんな、ちっぽけな幸せは取るに足らないと思っているのだろう? でも、俺達には……それこそが、かけがえのない物なのだっ!」


「馬鹿なっ! 人間になんかになってもロクな事は無いっ! 君達には八岐大蛇ヤマタノオロチプロジェクトと並行して、国籍を取得する用意が有る。そうすれば、晴れて日本国民になれるのだ。死に場所を探すなんて馬鹿な事は止めろ。君たちは、どう生きるかを考えるべきだ」


「どう生きるかだぁ? 永遠の命なんて『明日、本気を出す』必要すら無い、退屈な砂漠だっ! 死んでいるのと同じだっ!」


「檻に入れられて世界一周旅行をする様な物だっ! 楽しくも、なんとも無いねっ!」


「限りある命だからこそ、生き甲斐が有るんだよっ!」


「永遠に執行されない死刑を待ち侘びる死刑囚なんて考えた事が有るか? 永遠に続く明日を思うとゾッとするよっ! そして、その明日は今日を……今さえも価値を無くしてしまう、虚無の谷だっ!」



 南方は思いもよらぬ展開に驚愕していた。そして、自身の野望が崩れ始めている事を自覚し始めていた――






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