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食糧危機なら虫を食えっ!

―― 一月十七日 友引 庚午


 八時のニュースです。突然の食糧危機にネットでは『令和の大飢饉』と言われて大騒ぎになっています。国会議事堂前より、中継です。


 はい。政府与党は閣僚会議で、突然の食糧難で国民がパニックに陥っている事を鑑み『今こそ、昆虫食にシフトするべきである』と発表しました


野党の反応は如何でしょうか?


はい。野党はこの決定を受け『付け焼刃過ぎる、場当たり的で無策ではないか。いくら何でも、昆虫にシフトするのは無謀に過ぎる』と、与党を追及する予定です


それに対して与党の反応は如何でしょうか?


はい。大臣のインタビューをお聞き下さい


「食料が突然消えてしまい、国民の皆様方は大変心配をされております。この国難に際し、与党である我々は、かねてよりW・S・U・Sと連携を図り、万が一の時に備えておりました。昆虫食の安全は担保されていますので、どうぞ、安心してお召し上がり下さい」


「大臣、野党は『昆虫にシフトするのは無謀過ぎる』との声もありますが?」


「申し上げた通り、この国難に対して意見を言うのであれば、批判ではなく、対案を出して頂きたい。今日明日の人命に関わる問題に無責任なのは何方か……言うまでも有りませんね。失礼する!」


以上、国会議事堂前より、中継でした。



 ‶ プチッツ ″


「あーぁ、今日から昆虫食かよ……まぁ、喜多美神社には珠美の食糧が有るから困らいけど、七海ちゃんはどーすんの?」


「あっシはパン屋に食料が有るけど、母ちゃんに食わせればお終いよ。その代わり、今日から昆虫が支給になるから、タガメのピザパンとイナゴのパイを焼くんだぁ……めぐみお姉ちゃんも実食して、感想を宜しくねっ!」


「えぇっ! 勘弁してよ……朝っぱらから、鬱だよ……」



 ‶ ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン ″


「朝っぱらから、誰だよ?」


 のぞき窓から確認すると、集団疎開に行く様な大きなリュックに両手には大きな袋を下げたイッケイが立っていた――


「あら、イッケイさん、お久しぶりっ!」


「めぐみさん、おっはーっ! 七海ちゃんも、おっはーっ!」


「イッケイさん、おっはーっ! 今朝は何なん?」


「忘年会も新年会も無かった上に、七海ちゃんの、お誕生日のパーティーまでの中止になってしまったでしょう? 何だか申し訳無くって。食べ物に困っているでしょう? 持って来たわよぉ―――っ! こんなに沢山もう、どんだけぇ―――っ!」


「うわぁっ! こんなに? でもイッケイさん、何処で手に入れたんですか? まさか……大日本帝国 農業連合?」


「そうよ、そうなのよ。めぐみさん御存知? 私、珠美ちゃんから買っているの。本当に良い人なのよぉ――っ! もう、幾らでも注文すれば届けてくれるのよ。感謝感激なのよぉ―――っ!」


「これが、ピースケちゃんの言う顧客満足度200パーセントって奴か……」


「めぐみさんにも今度紹介するわね。それじゃぁ、私は仕事が有るから。七海ちゃん、義男さんのお店はぁ、通常通り営業しているから――ぁ、お誕生日のパーティーもぉ、日を改めて皆でお祝いしましょう。じゃあねっ!」



 イッケイが帰ると、冷蔵庫に入りきらなかった野菜をダイニングテーブルの上に置いて眺めた――


「こうして見ると、キャベツが神々しいわね」


「何かさぁ、大根の存在感がハンパねぇっつーのっ! かぼちゃが有難いんよぉ」


「本当ねぇ。鯉乃めぐみ、天の恵みに感謝っ!」


「あっシも感謝っ!」



 ふたりが農作物に感謝をしている頃、喜多美神社には珠美が来ていた。拝殿に昇殿すると本殿に向かった――



「ちょっと、ちょっと、ちょっとっ! 父ちゃん、話が違うじゃんよ―――ぉっ! 」


「おぉ、珠美、良く来たのぅ。まぁ、ゆるりとな」


「めぐみが、あんなに強いなんて聞いて無ぇ――しっ! 合気道やっていたなんて知らねぇ――しっ!」


「ほぅ。知っていたら、勝っていた様な言い草じゃのぅ」


「だって……知っていたら、掴まなかったもんっ!」


「珠美っ! 負けを認める事こそ、成長への第一歩じゃっ! まだまだ修行が足らんっ!」


「…………」


「ふぅむ。良い勉強になったのぅ」


「勉強なんか、勉強なんか、何よっ! うぇ―――んっ、めぐみの奴、良いとこ全部持っていきやがったぁ――――っ! その上、私、説教されたんだぞ。まるで、この私が悪人みたいに言いやがって。何よっ! 話が違うじゃないのっ!」


「めぐみちゃんは天国主大神アメクニヌシノオオカミの使者じゃ。これ迄の神話の様には行かんのじゃよ」


「何が違うのよ……」


「令和の今。天罰によって人々を懲らしめ、正しい生き方へ導くやり方は古いんじゃよ。時代遅れなんじゃ」


「今まで通りに天罰を与えたら、時代遅れって言われたぁ――――っ! 私の立場無いじゃん、可哀想な私。ぐっすん、すんすん、うえぇ―――んっ!」


「珠美よ。泣きたい時は思い切り泣け。涙は心の汗じゃっ! ほれ、胸を貸してやるぞ。ほれほれ」


「要らねぇ――よっ! 調子に乗んなっ! クソ親父っ! 良いかぁ、外食産業を見てみろっ! 食べ物を粗末にしつつ、そこで働く人間から搾取して、ぬくぬく肥え太りがって、メディアも旨いだの不味いだのと一方的にジャッジして、優劣付けて儲けてやがる。騙された人達は皆、成人病で医者は大儲けだぁ。おうっ! この、宇迦野珠美はコレぽっちも、何一つ間違った事はしていねぇんだよっ!」


「ほぅ。ならば聞くが、何一つ成果が無いのはどう云う事かのぅ」


「うっ……」


「令和の大飢饉どころか、今日から日本全国、昆虫食じゃ。外食産業は昆虫バブル到来と大喜び。マスメディアは芸能人を利用して昆虫フェスにイベントに大忙しじゃ。まんまと南方に利用されているだけじゃ。哀れよのぅ」


「南方!? そう云えば、めぐみの奴『人を生かすために殺すなら……あんたも南方と同じ』と言っていた……南方って一体誰なのっ!」



 素戔嗚尊スサノオノミコトは瞼を閉じて、深いため息を吐いた――







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