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出逢いはスローモーション。

 マックスは金田の元へ行くと、レプティリアンの手配を頼んだ――


「一度に九人も確保するなんて凄い、お手柄ですよ。しかも、既に研究所に連行しているだなんて……驚きです。今直ぐ手配しますよ」


「アリガトウ、御座います」


「ちなみに、連行した人間と云うのは、クラブ活動の学生さんか何かですか? 特別に活きの良い大蛇オロチを揃えましょうか?」


「ソレニハ、及びません。確保したのは、訪問された国会議員の、センセイデス」


「ほほぅ…………それは、願ったり叶ったりではありませんか。フッフッフ」


 マックスは声を出して笑う金田の脳波に乱れが無い事を確認した。しかし、それでも尚、疑いの目を向けていた――



 ‶ ガチャッ、ウィ――――ンッ、プッシュー ″



「お、おいっ! あれは何だっ!」


 所長室の扉が大きく開くと、入室したマックスの後方に、まるで蛇使いの様に大蛇オロチを先導している金田の姿が見えた。そして、大蛇オロチは大きな頭を通路の天井にまで届きそうなくらい高く上げて、鋭い舌を出していた――


 ‶ ニョロ、ニョロ、ニョロ、ニョロッ、ニョロ、ニョロ、ニョロ、ニョロッ。ニョロ、ニョロ、ニョロ、ニョロッ、ニョロ、ニョロ、ニョロ、ニョロロロロッ、シャアァ――――――ァッ! ″


「おい、何をする気だ?」


「お教えしましょう。今日から、あの大蛇オロチが、あなた方の国籍を頂くのです」


「ふざけるなっ! き、貴様、何を企んでいるっ!」


「『人間は皆、何時かは死ぬ。遅いか早いかの違いだけだ』と、先生は何時も仰っていたじゃないですか? 不服ですか?」


「不服だっ! 不服だっ! 人を殺す気か? この、人殺しっ!」


「人聞きの悪い事を言って貰っては困りますな。大臣、あなたは何時も仰っているではありませんか。政治とは……?」


「…………」


「ダイジン、続きを、言って下さい。イツモノヨウニ。オネガイシマス」

 

 言葉を失い黙り込む大臣にマックスが促がした――



「三人しか乗れない救命ボートに、よ、四人の救助を求める者がいる時、誰か一人に死んで貰う決断をする事。それが政治だ……」


「そうです。良く出来ました」


 南方と金田とマックスは拍手をした――


 ‶ パチパチパチパチ、パチパチパチパチ、パチパチパチパチ ″


「まさか……」


「あなたの番ですよっ!」


「……助けてくれっ!」


 金田は命乞いをする大臣を嘲笑うかのように目で合図をすると、大蛇オロチは大きな口を開けて頭から齧り付いた――


「うんごっ、ぐおっ、うぅ―――っ!」


 大臣は大蛇オロチの口中で何かを叫んでいる様だったが聞き取る事は出来なかった。その他の議員と秘書達は、とっくに気を失い大蛇オロチに丸呑みにされていた――


 そして、暫くすると不思議な事に、大蛇オロチはどんどん縮んで小さくなって行き、丸呑みにされた人間の輪郭が浮き彫りになったかと思うと、とうとう鱗だらけの人間になってしまった――


「どうですか所長っ! これこそ最終進化系のヒト型爬虫類です、ヤマタノオロチ・プロジェクトの完成ですっ!」


「金田君。見事と云う他あるまい」


 ‶ アーッハッハッハッハッハ、アーッハッハッハッハッハ! ″


 マックスは金田と所長が手を取り合い、がっちりと握手をしてお互いを讃えあっている事に安堵していた――



 ‶ ゴォゴォ――ゴゴォッ、ゴォゴォゴォゴォゴォ――――――ッ! ″


「うぅっ……あぁ――――ぁ」


「所長、見て下さい。鱗が消えて、完全な人間の皮膚が再現されましたっ!」


「うーむ。素晴らしい、でかしたぞっ!」



 人間と同化した大蛇オロチが、人間の言葉で話し始めた――


「所長さん……金田さん……有難う御座いますニョロ」


「諸君。これからは我らW・S・U・Sの指示よって活動してもらう。良いなっ!」


「Yes sir。ニョロッ!」


「ん? ニョロは要らないぞ。尻尾を出しては元も子もないからな」


「所長さん……尻尾なんて出しませんよ。蛇だけに舌は出ますがね。イッヒッヒ」




 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――


「さてと、これでお終い。典子さん紗耶香さん、お先ですっ!」


「めぐみさん、お疲れ様」


「お疲れですぅ」


「じゃあ。僕も今日はコレで失礼します」


「ピースケさん、何時もご苦労さん」


「ピースケ君。気を付けて帰ってねっ!」


「はい、有難う御座います。お先に失礼します」


 

 自転車に颯爽と跨り、帰ろうとするめぐみをピースケは呼び止めた――


「待って下さいよ、めぐみ姐さんっ!」


「あン。何か用?」


「用が無きゃ呼び止めてはいけませんか?」


「あ。何よ、その言い方」


「用と云うか、相談したい事が有りまして……」


「相談??」



 めぐみは自転車を引き、最近オープンしたばかりの「たこ焼き屋」にピースケを連れて行った――


「かりっ、ふわっ、とろぉ―――りっ。旨す」


「病ツキになりそうです」


「みんなに教えなくちゃ」


「これが、本場大阪の味なんですね」


「ん? 此処の大将はチャキチャキの江戸っ子よ。ねっ!」


「おうっ! お兄ちゃん、タコは佐島の奴だから。関西の味じゃねぇかもなっ! でもよ、旨いだろ? 旨きゃ良いんだよ。へっへっへ」


「そうですね。あはは……」


「ねぇ。ところで、相談って何?」


「あ、はい。あの、例の行方不明の週刊誌の記者と新聞記者を探すのを手伝って欲しいのです」


「手伝うって、何をすれば良いのよ?」


 ピースケは耳打ちをした――


「えぇっ! W・S・U・S本部に潜入ですって? 無理に決まっているじゃないの」


「めぐみ姐さん、無理を承知で頼んでいるのです。実は昨日、仕事帰りに街を歩いていると……闇バイトで知り合ったレプティリアンに偶然出会って……」



―― 昨日の今頃


「おいっ! 君は、ピースケ君だろ? 僕の事、覚えてなぁい?」


「あ。君はバイトで何度か一緒になった……えっと……」


「弥助だよ。弥助っ!」


「あーっ、そうだったね。昔っぽい名前だって思ったんだけど、出てこなくて……ゴメン」


「うぅん。良いんだよ。誰も、僕の事なんか覚えちゃいないさ……」



 ピースケは、寂しそうな眼をするレプティリアンの弥助に掛ける言葉が無かった――










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