怪しい新年会。
ピースケは駿からの連絡を受け、めぐみと応援に行く準備をしていた――
「めぐみ姐さん、早くして下さいよっ!」
「だって、突然『応援に行く』なんて言われても、大帝国ホテルに行く様なお洒落な服は持っていないの…………有った! そう云えば、去年、地上の住人になった時に愛美さんに貰ったシャレオツな服がクローゼットの中に……コレコレ。ふん、ふん、ふーん。きゃわいい。セクシーな感じ? 似合っちゃうんだなぁ、これがっ!」
「あ。姿見の前で見とれてる。おい、ピースケ、めぐみお姉ちゃんとお出掛けかよ?あっシだけ仲間外れかよっ! ちょっ、聞いてる? あっシは、ひとりで寂しくお留守番かっつーのっ!」
「七海ちゃん、怒らないでよぉ。巫女の任務なんだから。ねっ」
「任務にしては、きゃわいい、セクシーな奴、選んでるじゃんよぉー」
「任務と言えども女ですからねぇ。でも、たまにはお洒落してお出掛けするのも良いよねぇ。うふふふんっ」
「あんだおっ、面白くねぇなぁ。おまぁーら、神様の罰が当たっぞ!」
「あぁ、そうだっ! 良い事を思い付きましたよ。めぐみ姐さん、七海ちゃんも居た方がカモフラージュには都合が良いですよ……」
「あ、そっか……そうね」
めぐみは七海をマジマジと見つめるとと、にんまりと笑った――
「ねぇ、七海ちゃんも……御一緒する?」
「マジで。良いの? 御一緒するするっ! 何処行くの?」
「大帝国ホテルでぇ、和樹さんとぉ、駿さんとぉ、会食よんつ!」
「きゃはっ、駿ちゃんに会えるん? やったー!」
七海は姿見の前で髪の毛を直し、化粧直しを始めた――
「はい、時間切れ。サッサと行くよっ!」
「えぇーっ、お直しくらいさせてよぉ……」
「ダメッ! 車の中でおやんなさいっ! さぁ、ピースケ、七海、行くよ」
「はぁ―――――いっ!」
三人でタクシーに乗り、大帝国ホテルへ向かった。その頃、駿と和樹は地下のフロアーの案内図を見ていた――
「海外のセレブや要人が来るだけあって地上出口が直ぐ側に有る訳か。あの関田という学者、抜け目無いな」
「和樹ちゃん。彼奴らの方が一枚上手だよ。ピースケちゃんの情報では大和田はチップが埋め込まれてGPSで監視されているらしいんだ」
「ふーん。連中にしてみれば赤子の手を捻るような物か……駿、神妙な顔をして、まだ何か気になる事が有るのか?」
「あぁ。ピースケちゃんの情報が正しければ、大和田の状態がちょっと……」
暫くすると、めぐみ達が応援にやって来た――
「めぐみちゃん、こっちだよ」
「駿さん、ピースケちゃんと、カモフラージュに七海ちゃんも連れて来たよ」
「駿ちゃん、お久しぶりっ! 今更だけど、明けましておめでとう御座います」
「七海ちゃん、明けましておめでとう」
「ねぇ、今、どんな感じ?」
「めぐみさん、まだ大和田が到着していないんだ」
「駿先輩、和樹兄貴。先に入店していた方が怪しまれないと思われます」
「あぁ。それでは、皆で新年会だ。行こうっ!」
―― 日本料理 赤虎
「いらっしゃいませ。ようこそ赤虎へ。何名様かお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい。五名です」
「畏まりました。五名様ですと、只今、個室がご用意出来ますが、如何致しましょうか?」
「はい。お願いします」
「有難う御座います。それではご用意させて頂きます。只今、お飲み物をお持ちします。案内の者が参りますので、そちらにお掛けになってお待ち下さい」
和樹は不思議に思った――
「おい、駿。個室に入ったら、監視が出来ないぞっ!」
「いや、関田と大和田が個室に入っている以上、奴らの動きを監視したら、却って怪しまれる」
個室に案内され、席に着くと料理長のお任せを注文した――
「和樹兄貴。僕の嗅覚を信じて下さい。関田は隣に居ます。そして、会話も僕の聴覚なら、充分聞き取る事が出来ますから安心して下さい。個室からなら、お手洗いに行くフリをして周囲を偵察する事も怪しまれずに自然に出来ますから」
「ふむ。ピースケ、お前に任せたぞ」
暫くすると、大帝国ホテルの駐車場にW・S・U・Sの車が到着した。大和田が降りると監視役は辺りを見廻した――
「異常は無いな。大和田研究員、余計な事は言わない事、おかしな行動はとらない事だ。下手な真似をしたら、こちらの判断で関田は始末する。分かったな」
「はい。重々、心得ております」
大和田は地下のフロアで解放されると、関田の待つ赤虎へ向かった――
「めぐみお姉ちゃん、お姉ちゃんってばっ!」
「何よ?」
「此処の支払い誰がすんの? 三十万は行くよ?」
「馬鹿ねぇ。そう云う時の為に接待交際費が有んのよ」
「えっ? 巫女にそんなもんが有んの?」
「えぇ、有りますとも。当たり前ですよ。何かと物入りなのよんっ!」
「ふーん。なら、遠慮無く頂きまぁーすっ!」
「あっ。来ましたよ」
「ピースケ、お前、気が早ぇっつーのっ! 料理、まだ来ねぇじゃんよぉ。ねぇ、駿ちゃん」
「そうだね、七海ちゃん。料理はまだだけど、お目当ての者が来たんだよ」
「お目当ての物?」
ピースケは足音を聞き分け、大和田が隣の個室で関田と対面するのを確認した――
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