表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/470

明るい家族計画!

 めぐみは皆と別れて帰路に就いた――


「はぁ。前略、天国主大神アメクニヌシノオオカミ様。元日は日本全国、殆どの人が愛する家族と共に家で過ごす訳で……七海ちゃんもお正月はお母さんと一緒な訳で……アパートの階段を上り、明かりの点いていない部屋に帰るのは、久しぶりな訳で……寂しくて涙が零れる……かと思いきや、結構、清々していたりするのだっ! あっはっは」


 めぐみは軽い足取りで階段を上り、部屋に入ると、暖房のスイッチを入れお風呂を沸かした――


「ふぅ。しっかし、七海ちゃんが居ないと、する事が無いから掃除ばっかりしちゃうよ。まぁ、生まれ育ちは天の国、清潔が身に沁みついているのよね」



 〝 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン ″



「ん? こんな時間にピンポンする怪しい奴が来たよ……いったい誰だろう?」


 のぞき窓から確認すると見た事無い男が立っていたが、作業着の胸に見覚えの有るバッジが有ったので、天の国からの使者だと分った――


「今晩はっス。夜分遅くにサーセンッ! 縁結命エニシムスビノミコトの部屋で間違い無いっスよね。オレ、神の使いっス。地上で言うならば、おそらく……運送屋って奴ですから、ご安心を。神官から預かっている荷物をお届けに参りました。三個口なので、目録で確認をお願いします」


「あ、はい」


「えっと、読み上げますね。一つ目はブライト・ソードの長いの短いのと……二つ目はレーザー・ガンとクロノ・ウォッチ。それから、三つ目がバトル・スーツのTYPE-1。以上ですね、確認して貰えますか?」


「あぁ、はい」


「数が有っていたら此方に印鑑をお願い致します。無ければサインで結構です」


「分かりました。あのぉ、ひとつ聞いて良いですか?」


「えぇ。どうぞ」


「バトル・スーツのTYPE-1って……どんなん?」


「あー、ほら、よく有るボディにピッタピタの。セクスゥィーでエロいアレですよ。ウッヒッヒ」


「『ウッヒッヒ』じゃねーしっ! 返品、返品っ! サインしねぇ――しっ!」


「冗談っスよっ……そんなに怒らないで下さいよぉ……冗談も通じないんだからなぁ。説明します、TYPE-1は銃弾には役に立ちませんが、ケミカル・バイオ兵器等、劇物、薬品に強いスーツです」


「あぁ、そーなんだ。って、何でそんな物送って来たのよ……春から縁起でも無い」


 めぐみは仕方無くサインをした――


「あざぁ――っス! それでは、失礼しまぁ――スっ!」


 めぐみは元旦早々、ミッションの事ばかりでウンザリしていた。そして、届いた荷物の確認も取説も読まず、お風呂に入って身を清めると、頭から布団を被って寝た――



―― 一月二日 仏滅 乙卯


 喜多見神社は神聖な空気と参拝客の賑やかな声に包まれていた――


「ピースケさんっ! 補充をお願い!」


「はいっ!」


「ピースケ君、こっちもぉ、お願いなんですよぉ」


「はいっ!」


「ピースケちゃん、こっちは……大丈夫だぁ」


「無駄に呼ばないで下さいっ! 忙しいんですよっ!」


「はぁい……」


「あれ? めぐみ姐さん元気ないですね。どうかしましたか?」


「うん、まぁ。後で話すよ」



 めぐみは昼休みに昨日の出来事を話した――


「そうですか……神官が武器と新しいバトル・スーツを……いよいよですね」


「いよいよ何よ? 正月早々、W・S・U・Sに潜入するだの、お使いが武器を届けに来たり。ゆっくり雑煮でも食べて熱燗でキュッとやりたいのよ。ストレス溜まるっちゅーのっ!」


「めぐみ姐さん。僕らの業界は二十四時間、年中無休。諦めて下さい」


「ピースケちゃんって、意外に割り切りが良いのねぇ。まったく、歴史学者が出雲の研究さえしなければさぁ、突っつき回したりしなければ何事も起こらなかったのにさぁ……ふぅ」




―― 一年前のある日 関田の家 真夜中


 〝 ガタッ、ガタガタンッ! ガチャッ! キイィ――――――ッ ″


「あら、あなた……」


 何時もは書斎に閉じ籠り、調べ物をしている関田が寝室のドアを開けた。時計を見ると午前二時を過ぎていた――


「もう……こんな夜中に起こさないで下さいよ……お夜食なら何時もの所に用意してありますよ……もし足りないのなら、冷蔵庫にタコの塩辛とホタルイカの沖付けが有りますから。それで済ませて下さいな……あなた? あなた……どうしたの? ひぃ!」


 関田はベッドで上半身を起こしていた妻の首を絞めて押し倒し、パジャマの襟を掴むと力尽くで引き裂き、ボタンが弾けて飛んで床に落ちた――


 〝 パチンッ、パチ、パチ、パチ、パチッ! ″


「あっ、あなたっ! どうしたの? いったい……」


「ぐるるるるぅ、がぁるぅうぅう……」


「きゃあぁぁあ――――――あっ! いやぁ―――――んっ!」


 八岐大蛇ヤマタノオロチ酒を飲んだ関田は精力絶倫になり、獣の様に妻の身体を求めた――


「はぁ。はぁ。あなた……ポッコリお腹がシックスパックになっているわ……ワイルドねぇ……あっぁ――――ん、良いわぁ……逝く逝く、死ぬぅ――――うっ!」


 関田は古希を前にしてビンビンになり、妻は漲る精力に圧倒されたまま、合戦は終了した。久し振に腕枕で甘えると、タバコに火を付けて咥えさせた――


「ありがとう」


「ねぇ、あなたぁ……昔は何時もこんなだったわねぇ……」


「フッ。どうだった?」


「良かったぁ。凄ぉ――――く、良かったぁ……」


「そうかい? 君が満足ならそれで良いさ……」


「私、この歳でパンッパンッ突かれるなんて、思ってもみなかったわ……」


「女は灰になるまで女さ……プッ、ハァ―――ッ!」


 腕枕で眠りに落ちていく妻を感じながら、寝室に漂うタバコの煙を眺めていた――


「あの日は気を失う様に眠り込んだが、今回は眠るどころか息子が起きっ放しだ……体の中で何か、抗体の様な物でも出来たのだろうか……もし、八岐大蛇ヤマタノオロチ酒を妻に飲ませたら……妊娠するのだろうか……? いや、きっとするに違いない。成分の分析を依頼してみるか……」



しかし、当主の厚意で頂いた門外不出の酒を成分の分析に出す事は、口止めをされている以上、約束を反故にする事であり、関田にそれは出来なかった――





お読み頂き有難う御座います。


気に入って頂けたなら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援と


ブックマークも頂けると嬉しいです。


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ