明るい家族計画!
めぐみは皆と別れて帰路に就いた――
「はぁ。前略、天国主大神様。元日は日本全国、殆どの人が愛する家族と共に家で過ごす訳で……七海ちゃんもお正月はお母さんと一緒な訳で……アパートの階段を上り、明かりの点いていない部屋に帰るのは、久しぶりな訳で……寂しくて涙が零れる……かと思いきや、結構、清々していたりするのだっ! あっはっは」
めぐみは軽い足取りで階段を上り、部屋に入ると、暖房のスイッチを入れお風呂を沸かした――
「ふぅ。しっかし、七海ちゃんが居ないと、する事が無いから掃除ばっかりしちゃうよ。まぁ、生まれ育ちは天の国、清潔が身に沁みついているのよね」
〝 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン ″
「ん? こんな時間にピンポンする怪しい奴が来たよ……いったい誰だろう?」
のぞき窓から確認すると見た事無い男が立っていたが、作業着の胸に見覚えの有るバッジが有ったので、天の国からの使者だと分った――
「今晩はっス。夜分遅くにサーセンッ! 縁結命の部屋で間違い無いっスよね。オレ、神の使いっス。地上で言うならば、おそらく……運送屋って奴ですから、ご安心を。神官から預かっている荷物をお届けに参りました。三個口なので、目録で確認をお願いします」
「あ、はい」
「えっと、読み上げますね。一つ目はブライト・ソードの長いの短いのと……二つ目はレーザー・ガンとクロノ・ウォッチ。それから、三つ目がバトル・スーツのTYPE-1。以上ですね、確認して貰えますか?」
「あぁ、はい」
「数が有っていたら此方に印鑑をお願い致します。無ければサインで結構です」
「分かりました。あのぉ、ひとつ聞いて良いですか?」
「えぇ。どうぞ」
「バトル・スーツのTYPE-1って……どんなん?」
「あー、ほら、よく有るボディにピッタピタの。セクスゥィーでエロいアレですよ。ウッヒッヒ」
「『ウッヒッヒ』じゃねーしっ! 返品、返品っ! サインしねぇ――しっ!」
「冗談っスよっ……そんなに怒らないで下さいよぉ……冗談も通じないんだからなぁ。説明します、TYPE-1は銃弾には役に立ちませんが、ケミカル・バイオ兵器等、劇物、薬品に強いスーツです」
「あぁ、そーなんだ。って、何でそんな物送って来たのよ……春から縁起でも無い」
めぐみは仕方無くサインをした――
「あざぁ――っス! それでは、失礼しまぁ――スっ!」
めぐみは元旦早々、ミッションの事ばかりでウンザリしていた。そして、届いた荷物の確認も取説も読まず、お風呂に入って身を清めると、頭から布団を被って寝た――
―― 一月二日 仏滅 乙卯
喜多見神社は神聖な空気と参拝客の賑やかな声に包まれていた――
「ピースケさんっ! 補充をお願い!」
「はいっ!」
「ピースケ君、こっちもぉ、お願いなんですよぉ」
「はいっ!」
「ピースケちゃん、こっちは……大丈夫だぁ」
「無駄に呼ばないで下さいっ! 忙しいんですよっ!」
「はぁい……」
「あれ? めぐみ姐さん元気ないですね。どうかしましたか?」
「うん、まぁ。後で話すよ」
めぐみは昼休みに昨日の出来事を話した――
「そうですか……神官が武器と新しいバトル・スーツを……いよいよですね」
「いよいよ何よ? 正月早々、W・S・U・Sに潜入するだの、お使いが武器を届けに来たり。ゆっくり雑煮でも食べて熱燗でキュッとやりたいのよ。ストレス溜まるっちゅーのっ!」
「めぐみ姐さん。僕らの業界は二十四時間、年中無休。諦めて下さい」
「ピースケちゃんって、意外に割り切りが良いのねぇ。まったく、歴史学者が出雲の研究さえしなければさぁ、突っつき回したりしなければ何事も起こらなかったのにさぁ……ふぅ」
―― 一年前のある日 関田の家 真夜中
〝 ガタッ、ガタガタンッ! ガチャッ! キイィ――――――ッ ″
「あら、あなた……」
何時もは書斎に閉じ籠り、調べ物をしている関田が寝室のドアを開けた。時計を見ると午前二時を過ぎていた――
「もう……こんな夜中に起こさないで下さいよ……お夜食なら何時もの所に用意してありますよ……もし足りないのなら、冷蔵庫にタコの塩辛とホタルイカの沖付けが有りますから。それで済ませて下さいな……あなた? あなた……どうしたの? ひぃ!」
関田はベッドで上半身を起こしていた妻の首を絞めて押し倒し、パジャマの襟を掴むと力尽くで引き裂き、ボタンが弾けて飛んで床に落ちた――
〝 パチンッ、パチ、パチ、パチ、パチッ! ″
「あっ、あなたっ! どうしたの? いったい……」
「ぐるるるるぅ、がぁるぅうぅう……」
「きゃあぁぁあ――――――あっ! いやぁ―――――んっ!」
八岐大蛇酒を飲んだ関田は精力絶倫になり、獣の様に妻の身体を求めた――
「はぁ。はぁ。あなた……ポッコリお腹がシックスパックになっているわ……ワイルドねぇ……あっぁ――――ん、良いわぁ……逝く逝く、死ぬぅ――――うっ!」
関田は古希を前にしてビンビンになり、妻は漲る精力に圧倒されたまま、合戦は終了した。久し振に腕枕で甘えると、タバコに火を付けて咥えさせた――
「ありがとう」
「ねぇ、あなたぁ……昔は何時もこんなだったわねぇ……」
「フッ。どうだった?」
「良かったぁ。凄ぉ――――く、良かったぁ……」
「そうかい? 君が満足ならそれで良いさ……」
「私、この歳でパンッパンッ突かれるなんて、思ってもみなかったわ……」
「女は灰になるまで女さ……プッ、ハァ―――ッ!」
腕枕で眠りに落ちていく妻を感じながら、寝室に漂うタバコの煙を眺めていた――
「あの日は気を失う様に眠り込んだが、今回は眠るどころか息子が起きっ放しだ……体の中で何か、抗体の様な物でも出来たのだろうか……もし、八岐大蛇酒を妻に飲ませたら……妊娠するのだろうか……? いや、きっとするに違いない。成分の分析を依頼してみるか……」
しかし、当主の厚意で頂いた門外不出の酒を成分の分析に出す事は、口止めをされている以上、約束を反故にする事であり、関田にそれは出来なかった――
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