表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/469

年神様は音信不通。

 麗華の隣人に対する配慮は無駄だった――


「最初は音楽で誤魔化せていましたが、人間は本能には抗えないのです。って、僕も同様でありますっ!」


 受験生は熱くイキリ立つ自分の息子を握りしめていると、突然、押入れの扉を開けられて驚いた――


「うわぁぁあっ! あっ、奥さん……」


「こんな所に入って盗み聞きするなんて……悪い人」


「すみません、つい、興奮してしまいました」


「見せて御覧なさい。あら? 元気ね。うふふっ」


「あっ、いやぁ、そのお……僕、童貞なんですっ! 威張る事では有りませんが」


「あなたは正直で素直なのね。じゃあ、私が筆下ろしをしてあげるわ」


 〝 ぱくっ ″


「あぁっ!」


 〝 じゅっぱ、じゅっぱ、じゅるっ、じゅるっ ″


「あぁっ…………うっ! はぁあ……」


「あら? もう、逝ってしまったの? 可愛いわね。じゃあ、またね」


「待って下さいっ! これだけでは物足りないのです。僕の息子は合体したいのです」


「試験に合格したら……ご褒美に私の下のお口で、たぁ――っぷり、可愛がってあげるわ……うふふふっ、あははははぁ――――――」


「あぁ、奥さん……奥……はっ! 夢かぁ……」


 徹夜続きの受験生は押入れの中で居眠りしてしまい、スケベな妄想の夢を見てしまった――


「あぁ、情けない。こんな事で若いエネルギーを浪費して時間を無駄にするなんて。僕には時間が無いのであります。一に勉強、二に勉強なのですっ!」


 気を取り直して机に向かい、猛勉強を始めると麗華の声が聞こえた――


 〝 試験に合格したら…… ご褒美に私の下のお口で…… たっぷり ″


「はっ! たとえ儚い夢でも、お父さん、お母さん、受験に勝つために利用するのが正解なのです。早漏で候などと洒落ていてはいけないのですっ! よーしっ、頑張るぞっ! 絶対、合格! 絶対、合格! 合体、合格! 合体、合格! あ」



 麗華と康平は沈黙のSEXが「特別なプレイ」の様になって却って興奮してしまい、受験生は性欲を推進力に換える事が出来てウイン・ウインの関係になった――




―― 十二月二十九日 赤口 辛亥


 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――


「ピースケさん、伝票纏めておくから、これを社務所に運んでね」


「はい。直ぐやります」


「ピースケ君のお陰でぇ、年末年始がぁ、大助かりなんですよぉ。余裕すら有るんですよぉ」


「大祓も初詣も怖い物無しですねっ! うふふふっ」


「めぐみ姐さん。僕ぁ、皆さんのお役に立てて、嬉しいなぁ」


 めぐみは怖い物無しと言ってはみたものの、実は怖い物が二つ有った。それは、レプティリアン・ヒューマノイドと昨日神社にやって来た鵜飼野珠美だった――


「あっ、そうだピースケちゃん、私も手伝うから一緒に社務所に行こう。ねっ」


「えぇ? このくらい、僕一人で持てますよ……」


 めぐみはウインクをして合図をした――


「はい。分かりました。では、よろしくお願いします」


 荷物を持って授与所を出ると、めぐみはピースケに言った――


「ピースケちゃん、素戔嗚尊スサノオノミコトとナシ付けて来るから。後はよろしくね」


「あぁっ、ちょっと、めぐみ姐さん…………もう、勝手なんだからなぁ」


 拝殿に昇殿して本殿に直行すると、素戔嗚尊スサノオノミコトの姿が見えなかった――


「あれ? 居ないよ。帰っちゃったとか? おーい、神様。お留守ですかぁ? 鯉乃めぐみが来ましたよんっ!」


「留守じゃないぞよ」


「なーんだ、居るならサッサと出て来てよ」


「すまんのう。又、珠美が来たのかと思ってのう。トホホ」


「実の娘に居留守使うって……どんだけ、病んでるのよっ!」


「ほぇー、すまんのう……」


「ん? ずいぶん元気が無いじゃないの。何時ものエロおやじ風な感じもしないんですけど……大丈夫? 具合悪いの?」


「はぁ……」


「まぁ、そんな事より鵜飼野珠美うかのたまみよ、ウカノミタマノカミが来たでしょ? ねぇ、なんであんなに切れキャラなの? 『何時でも勝負してやっからっ!』とか、啖呵切られて良い迷惑よっ! もう、あの二重神格をどうにかして下さいよぉ」


「すまんのう……娘が迷惑を掛けて、申し訳ないのぅ……」


「謝ってばかりいないで。もう、確りして下さいよぉ。何か事情でもあるんですか? 有るなら言って下さいよ」


「言えぬ!」


「はぁ? 聞いてやってんだろっ! 言えっつーのっ!」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは背中を向けてその場を去ろうとした――


「あっ。逃げんなっ! チンとして祀られていようとすんなっ!」


 めぐみに襟首を掴まれて、引き戻されると正座をさせられた――


「ぐぶぅ……」


「ちっ、まっ、色々と事情があんだろ? あーぁ、分かるよぉ。人には言えない苦しみ悲しみが有る。口には出来ない、したくない事が有る事位は分かってますよぉ」


「実は、斯々然々《かくかくしかじか》と、云う訳なんじゃ……」


「省略すんなっ! そこを言わなきゃ分からないでしょう? あーもう、娘が切れキャラになるのも、分かるよぉ」


「うむ。では話そうかのぅ。櫛名田比売クシナダヒメの後妻に神大市比売カミオオイチヒメノミコトを迎えて、儲けた子供が宇迦之御魂神ウカノミタマノカミなんじゃぁ……」


「えっ! そこから? 話し長そうねぇ……でっ?」


「昨今のグルメ嗜好・コスパ主義・農業政策・食料自給率など、難しい事ばかり言うのじゃよ。最初は聞いてあげていたんじゃがのぅ、此処へ来ては文句ばかり言うので、嫌になってしまって聞き流しておったんじゃが……」


「あぁ……それって、マッチポンプでしょう?」


「ある日突然『聞いてんのかクソ親父っ! 聞いてんなら、やれやっ! おぁ? テメーがやんねぇなら、コッチにも覚悟があっぞっ! どうなっても知らねぇーぞっ! 知ってっけど!』とヤンキーみたいな口振りで、このわしを恫喝したんじゃよ」


「うん。まぁ、気持ちは分かるわ。っで?」


「あの娘を怒らせると、大変なのじゃっ! 弟の大年神オオトシノカミが居れば何とかなると思ったのじゃが、連絡が取れないんじゃ……」


「そりゃ、年神様は正月まで来ないよぉ……つーか、どうして男って奴は流離さすらってしまうのかしらねぇ。女にはそんな暇無いのよっ! 分かってる? 洗濯は? 掃除は? ご飯どうすんの? おぁ? 生活に追われているコッチの気も知らないで、ロマンに浸って居る場合かっつーのっ!」


 珠美に恫喝され、めぐみに説教された素戔嗚尊スサノオノミコトはチンとしていた――








お読み頂き有難う御座います。


気に入って頂けたなら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援と


ブックマークも頂けると嬉しいです。


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ