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W.S.U.Sの秘密。

 その名刺にはWorld Scientific Unification Society(世界科学統一学会)第一研究所 研究室室長、金田哲也と書いて有った――


「ピースケちゃん、この名刺の人がその研究者なのね?」


「いや、違うね。まぁ、一応、その団体の関係者であることは間違いないけどねぇ」


「何よ、ハッキリしないわねぇ」


「だからぁ。その名刺を良ーく見てくれよぅ。名刺をよぅ……」


 めぐみと和樹は改めて名刺を見て息を飲んだ。その名刺には七芒星に絡みつく蛇のエンボスのマークが有った――


「ピースケ! アジトとはつまり、この団体、この組織の事なのか?」


「そう云う事だぁ。奴らはそう簡単に尻尾は出さねぇよ、イッヒッヒ。世間からは超エリートが揃った権威ある団体で名が通っているんだからよぅ。下手な真似をすりゃあ、手が後ろに回るぜぇ。突っつき廻した奴は皆、東京湾に浮かんだり、自宅で首を吊ったり、電車に飛び込んで自殺したりするらしいからよぅ。ウッヒッヒッヒッヒ」


「あわわわぁ……こっ、怖いよぅ……どうしよう……」


「めぐみ姐さん、地上で一番恐ろしいのは人間だって事に、今頃気付いたのかよぅ」


「ふんっ! 調子に乗りやがって。人間如き、纏めて粉砕してやるから心配するなっ! 人間を始末すると、めぐみさんは怒るが、レプティリアン・ヒューマノイドならば心置きなく成敗出来ると云う物だっ、首を洗って待っていろっ! はっはっは」


「おーっと、兄貴ぃ。そいつはマズイねぇ。下手な真似をするとマズイのは、おれ達も一緒だぁ。悪人共が何処の実験施設で八岐大蛇ヤマタノオロチの繁殖をしているのか突き止めて退治をしないと、永遠に繁殖し続けるぜぇ。それでも良いのかよぅ」


「何をっ……」


「ケッケッケ、心配すんなって。このピースケ様に任せなよ。おれは八百万の神の中で最弱の神だぜ。おふたりさんの様なメンタルは持ち合わせていないが、それ故、人間の欲望に対する嗅覚は敏感なんだぜぇ。イッヒッヒ」


「ピースケちゃん、人間の欲望って……どう云う事?」


「ん? そうだなぁ……例えば、ほら、あそこにハイ・ブランドで固めたセレブ気取りのスカした女が居るだろう? 腹の中が腐っているよ。香水なんかじゃあ、誤魔化されないぜぇ。腐臭が漂っているのが、おれには分かるんだぁ」


「うむ。確かに嫌な気配がするな……」


「でも、女性が着飾っているくらい、普通でしょう?」


「あぁー、嫌だ嫌だ。めぐみ姐さん、あの女は此処にコーヒーを飲みに来ているんじゃぁ無いんだぜぇ。周囲の同性を見下し、異性からの眼差しを独り占めして承認欲求を満たして優越感に浸りに来てんだぁ」


「うーん、誰でもそういう所は有るんじゃ無いの? ピースケちゃんは、ひねくれているよ」


「ふーん、じゃあ、あそこのカウンター席の男。ノートパソコンを開いているだけで、何もしてはいない。だろ? チラチラあの女を見て気を惹こうとしている。そして、あの女も男がカウンターに、これ見よがしに置いたスマート・キーのスリーポンテッド・スターをチェックして意識しているぜぇ。社会的地位や経歴と資産に物を言わせて女を食いまくって来た男だぁ。腐臭がキツ過ぎて反吐が出そうだぜぇ」


「そんな風には見えないけど……」


「だからぁ、上昇志向の強い承認欲求の塊のクソ女と、支配欲の塊のゲス野郎の出会いは、めぐみ姐さんには見えないんだよぅ。女神様だからな。でも、人間って言うのはよぅ、本当に大切な物は目には見えないんだぜぇ。欲で目が霞んでいるからよぅ。ウッシッシ」


 ピースケの予言通り、女が席を立ち、男の後ろを通り過ぎようとした時、男がわざとらしくコーヒーをこぼして女のスカートを汚すと『送って行き来ます。ありがとう』となり、ふたりは夕暮れの街に消えて行った――


「ほーらねっ。姐さんにも兄貴にも見えない物が、おれには見えるんだぁ。仲良くしようぜぇ。ケッケッケッケッケ」


「ピースケっ! お前の態度は一々不愉快で気分が悪い。だが、同行させられた意味が良く分かったぞ。W.S.U.Sの内部調査は、お前の力を借りるしかあるまい。頼りにしているぞ」


「えぇっ? 兄貴ぃ……本当に?」


「勿論よ。ピースケちゃん、あなたの力を借りなければ、先へは進めないの。お願いねっ!」


「兄貴ぃ、姐さんっ! おれは嬉しいよぅ……」



 ピースケは生まれて初めて、神から頼られ、願われる存在になった事に感激していた――


 

―― 武蔵小杉 駿のマンション


 〝 ピピピッ、ピピピッ、ピピッ、ピピピッ、ピピピッ、ピピッ、ピピピッ、ピピピッ、ピピッ ″


 駿はダイニング・テーブルの上に置きっ放しにしたケータイの音で目を覚ました。ベッドから起き上がると、寝ぼけたままキッチンに行き電話に出た――


「あっ、もしもし。駿さん? めぐみです。具合はどうですか?」


「う、あぁ……良く寝たぁ。ちょっと、寝過ぎたかなぁ……頭が痛いけど、調子は悪く無いよ」


「そうですか? 良かったぁ」


「めぐみちゃんは、あの後……変わった事は無かったかい?」


「その事なんだけど、和樹さんとピースケちゃんに話したら、意外な組織の存在が浮かび上がったの……」


「組織……?」


 駿はめぐみからW.S.U.Sの存在とピースケの能力について話を聞いた――


「ははーん、なるほど。それで天国主大神アメクニヌシノオオカミが同行させた理由が分かったよ。和樹ちゃんは悪神の宿主である人間もろとも始末して仕舞うからね。ピースケ君の様な嗅覚の持ち主が必要って事だね」


「でも、何だか大事になって来ましたね。W.S.U.Sの秘密を暴いてレプティリアン・ヒューマノイドを退治しなくてはならないわ」


「あぁ。でも、大丈夫。何とかなるさ」


 駿はめぐみを励ましつつ、あの日の流星と新人類ニュータイプの誕生が気になっていた――






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