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喜多美神社に丑三つ参り。

 ―― 草木も眠る丑三つ時


 喜多美神社の駐車場にベスパのエクゾースト・ノートが響き渡った――


〝 ベ―――――ン、ベーーン、ベ―――ン、ベ――ン、ベン、ベン、べべべべッ ″



 駿がイグニッションをオフにすると、エンジン音とヘッドライトの灯りが消え、辺りは一瞬にして静寂と漆黒の闇に包まれた。そして、暗闇の向こう側に拝殿が浮かんで見えて、まるで異世界への入り口の様に感じた。しかし、駿が一の鳥居をくぐり、歩き進めて二の鳥居をくぐると、参道の石燈籠がぼんやりと灯り、風も無いのに竹林が音を立てて揺れ始めた――


「眠っていた草木が目を覚ました様だな……どうやら、予感は的中した様だ」



 駿が拝殿の前に立つと扉は音も無く開き、昇殿して本殿へと向かった。そして、本殿の中には素戔嗚尊スサノオノミコトが寛いでいた――


「おぉ、駿ちゃん、良く来たな。おや? もう、こんな時間ではないか」


「丑三つ時に失礼します。しかし、どうしても気になる事が有って、報告に参りました」


「うむ。報告とはなんじゃ? 言ってみぃ」


「はい。昨日の二十二時五十分頃、若洲海浜公園にて流れ星を見ました……」


「ロマンティックで素敵じゃのう。だが、流れ星など珍しくも無いのぉ」


「はい。しかし、十二月二十二日から二十三日にかけて、こぐま座流星群がピークを迎えましたので、二十四日にあれ程の流れ星を目視出来る事は有り得ません。しかも、天空で消えるのではなく、地上に降り注ぐ様な不審な流れ星です」


「ほう。不審な流れ星とな……それは、尋常では無い数だったと?」


「はい」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは立ち上がると、腕を組み考え事をしながら本殿の中を右往左往した。そして、暫くすると立ち止まり、深いため息を吐いた――


「遂に、その時が来たか……恐れていた事が現実なったと云うことじゃなぁ……」


 サイド・ボードの上に置いてあったリモコンを手にして、モニターの電源を入れた――


火之夜藝速男神ヒノヤギハヤヲノカミよ、これを見よっ!」



 〝 怪奇FILE No1 八岐大蛇ヤマタノオロチ追跡情報! ″



八岐大蛇ヤマタノオロチ!?」


「うむ。悪神がとある科学者に入り込み、八岐大蛇ヤマタノオロチの血液を入手したのじゃ」


「そんな大昔の血液を入手するなんて有り得ません……何より、そんな物を手に入れて何をしようと言うのですか?」


八岐大蛇ヤマタノオロチの復活じゃ。全人類の支配が始まったのじゃ……」



 モニターには縁結命エニシムスビノミコトが死者と生者の縁を結び、地上に降り立ち、人間に入り込んだ邪神・悪神を退治し始め、人間同士の縁を結び新しい生命(ニュータイプ)の誕生に寄与した事で、悪神が警戒をして戒厳令を発令したさ中に武御雷神タケミカズチを降臨させた為、迎撃態勢に入った事が時系列で表示されていた――


「そんな馬鹿なっ! こんなの嘘です……」


「嘘ではない。既に奴らは武御雷神タケミカズチの攻撃を躱す術を身に付け、逃走したのじゃ。天国主大神アメクニヌシノオオカミからの伝令じゃ。間違いは無い」


「しかし、それでは……人間に入り込まなければ、悪神は活動が出来ないはずでは有りませんかっ!」


「人間の心の隙に邪神が入り込み悪事に手を染めさせ、入れ替わりに悪神が入り込む……その心の中の邪神を縁結命エニシムスビノミコトが小烏丸と弓で退治し、武御雷神タケミカズチが宿主もろとも落雷で始末をした事で、悪神達は焦り、事を急いだのであろう……まさか、八岐大蛇ヤマタノオロチを復活させるとはのぉ……恐れていた事が現実になってしまったのじゃ」


「恐れていた事? もしや……」


「ヒト型爬虫類、レプティリアン・ヒューマノイドの誕生じゃ。もはや人間を媒介とするフェーズを超えたのじゃ」


八岐大蛇ヤマタノオロチがレプティリアン・ヒューマノイドに生まれ変わったと云う事ですね……しかし、一体何を企んでいるのでしょうか?」


「まだ実態は見えない……じゃが、レプティリアンは八岐大蛇ヤマタノオロチの比では無いのじゃ。人間の生き血を啜るだけでは飽き足らず、支配とコントロールをして人間の善悪を逆転させて、人類の滅亡を企んでいるに違い有るまい。レプティリアンを始末出来なければ人類滅亡は確定してしまうのじゃ。火之夜藝速男神ヒノヤギハヤヲノカミよ、何としても退治するのじゃっ! 良いな」


「はいっ!」



 駿は素戔嗚尊スサノオノミコトに一礼をして本殿を後にした。拝殿を出て参道を抜けようと歩き出すと、暗闇の中に浮かび上がる人の姿が見えた――


 白装束を身にまとい、髪を振り乱し、顔に白粉を塗り、頭に五徳を被って、そこに三本のロウソクを立て、一本歯の下駄を履き、胸には鏡を吊るし、御神木に藁人形を五寸釘で打ち込んでいる女の姿に、駿は目を疑った――


「丑の刻参り……!?」


 気配を感じた女が振り返ると、振り乱した髪の間から覗く目がギラリと光った――


「見ぃたぁなぁ……」


「おっ、お前は何者だっ!」


「死ねぇ――――っ!」


 落葉した木々が風も無いのに大きく揺れると、折れた小枝が棒手裏剣となって駿に襲い掛かった――


「うわぁっ! クソッ、目が見えないっ! うぅっ……」


 駿は手裏剣を躱しながら這い蹲って、手探りで参道を抜けようとしたが地中から木の根が飛び出して全身に絡みついた。そして、二の鳥居まで来た時に、五寸釘が雨の様に降って来た――

 

 〝 ぎゃあぁぁ――――――――――っつ!!!! ″



 駿の悲鳴は喜多美神社に響き渡り、全身に五寸釘が突き刺さったまま、意識を失った――




 そして、日が昇り始めた――





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