星に震えた夜。
駿はその光景に絶句して戦慄に震えた――
「駿ちゃん、どうしたの? 寒いの? あっシのマフラーを巻いてあげるおっ!」
「ありがとう、七海ちゃん。でも、あれは流れ星なんかじゃ無いよ……」
「そうなん?」
「あぁ、身震いが止まらくなったんだ……ふぅ」
暫くして震えも収まり、役に立たなかった天体望遠鏡を片付け、駐車場に戻ろうとした――
「駿ちゃん、もう少し付き合って。ツーショットはあっちで撮ろうよっ!」
「あぁ、良いよ」
七海は駿の手を引っ張って橋の下を通り、海釣り施設まで歩いていった――
「ここだお。やっぱり、ここが良いと思ったんだお」
「ふーん。七海ちゃん、こんな所で良いの?」
七海はケータイを取り出してナイトモードで撮影の準備をした――
「じゃあ、並んで……せーの、いちたすいちは?」
「にぃ」
〝 カシャッ! ″
「駿ちゃん、もう一回。あっ! 流れ星だっ!」
駿がケータイのレンズから目を離し振り返ろうとした瞬間、七海が顔を寄せてキスをした――
〝 カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ、カシャッ! ″
当然、連写だった――
「あぁ、やったなぁ――っ!」
「うんっ! やりましたよぉー、きゃはっ!」
駿は笑い、七海は抱き付いた。暫くすると、ふたりは見つめ合い、互いに何かを言ったが、波の音に消されてしまった――
そして、若洲海浜公園を後にすると、夜の街を駆け抜けて、めぐみの部屋に向った――
〝 ベ―――――ン、ベーーン、ベン、ベン、ベン、ベン、べべべべッ ″
「めぐみ姉ちゃん、ただいまっ!」
「おかえり。遅かったね。お風呂、入れるよ」
「めぐみちゃん、今晩は。きちんと送り届けたよ。七海ちゃん、またねっ!」
「うんっ! 気を付けて帰ってねっ!」
「駿さん。少し温まって行ったら?」
「いや、ちょっと気になる事が有ってね、先を急ぐんだ、じゃあ。おやすみなさい」
めぐみは駿のよそよそしい態度と、こんな時間に先を急ぐ用が有る事を不審に思った――
「ふっわあ、いい湯だったお。心もポカポカ、身体もポカポカ。ぐふっ!」
「あら? 何よ、その含み笑い。キモいぃ――っ! ちょっと、ふたりで何処に行ったの? まさか……女の感は鋭いのよ」
「えぇ? 知りたい? 聞きたいの? 教えてあげよっかなぁ。ぐふぅ、羽田空港で海外旅行気分を味わってぇ、若洲海浜公園の展望台で花火を見てぇ、天体観測をしてぇ、流れ星を見てぇ……ツー・ショット写真を撮ったんだお。ぐふふふふっ、いやぁ――ん」
「ん? まぁ、普通じゃないの。何が『ぐふふふふっ、いやぁ――ん』なのよっ! 白状しなさいっ!」
「じゃぁ、ヒント。ツー・ショットはぁ、チュウ・ショットだったりなんかしちゃったりなんかしてぇ、きゃははっ! いやぁ――ん」
「はぁ? あんだってっ! ちょ、おまぁ、私より先にファースト・キスを……そんな、馬鹿な……」
七海がケータイで撮った写真は、向かい合う恐竜がキスをしている様に見える場所で、駿とキスをしている写真だった。緋色にライト・アップされた恐竜が照れている様に見えた――
「何この、可愛いのーぉ! チュウ・ショットのダブルかよぉー、ムカつくっ! んで、何枚撮ってんだよぉっ! 腹立つわぁ……」
「まぁ、軽く三十枚? ぐふふふっ。恐竜が最も繁栄していたのは二億三千万年前頃(中生代三畳紀)~6600万年前頃(中生代白亜紀)の期間、あっシと駿ちゃんの愛はぁ、恐竜にあやかって、永遠に続くっチュー事なんよっ!」
「えぇえぇ、ロマンティックでよござんすねぇ。あぁ、高級中華が霞んでしまうよ……あっ、そうだ、月餅と肉まん食べる?」
「マカロンも食べる? 残り物ですけどぉー。きゃはっ!」
仲良く、お土産を持ち寄って夜食会になった――
「あーぁ、ショックだなぁ……」
「まっ、アニキは女の扱い方知らねぇーかんなっ! めぐみ姉ちゃんの方から仕掛けてリードしねぇと永遠に春は来ねぇっつーのっ!」
「はぁ……そうなんだよねぇ……どうしたら良いのだろう……」
「やっぱ、部屋に呼んで『パサぁ――っ、抱いてっ!』だな。それっきゃないよ」
「ちょっと『パサぁ――っ』って何よ?」
「着衣が床に落ちる音に決まってるお」
「いやっ、スカート脱いで、ブラウスだけはハズイなぁ……」
「アホかっ! スカートもブラウスもダメ、パンツとシャツなんて、以ての外だおっ!」
「えっ! じゃぁ、どうすれば良いのよ?」
「ちっ、ダッフル・コートが有んだろーがっ!」
「コートを着たら益々、厚着になっちゃうじゃないの……」
「だからぁ、コートの下は全裸、マッパ。んで、アニキの胸に飛び込むと。そうすりゃ、手を出さない訳に行かなくなんだろ?『めぐみさん、ガバッ!』に決まってんじゃんよぉ――っ!」
「パサぁ――っ! マッパ! からのーぉ、ガバッ! かぁ……」
「あっシと駿ちゃんはさぁ、イチャイチャ、キュンキュンラインだけどぉ、めぐみ姉ちゃんとアニキはパサっ、ガバッ、パンパンラインだお」
「パンパン?」
「『和樹さん、大っきい、いやっ、凄いぃ―――――っ! パンパンッパンパンッパンパンッ、うっ、ガクッ』だお」
「そっかぁ……」
「納得すんのかぁ――いっ!」
「七海ちゃんはロマンティックで良いなぁ‥…私はエロティックなのか……ちょっと悲しい。ぐっすん」
「この月餅、旨す。肉まん最高だおっ!」
「でしょ? マカロン旨す」
「そうなんよー。でも、せっかく歯を磨いたのに、何やってんだか。きゃははっ」
ふたりで仲良く洗面台に並び、歯を磨いて床に就いた――
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