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タンデブ―じゃ、ダメですか?

 ベスパの残した2ストのオイルの臭いが初恋の香りに変わって行った。胸がキュンとなったのは、ただ好きと言う感情だけではなく、去り際に一瞬、垣間見た駿の淋しそうな横顔に、自分と同じ様な境遇だと知り心の距離が一気に縮まり、母性本能を刺激されていたからだった――




「さぁてと、一人ぼっちの夜はつまらないから、たまには天の国にでも帰ってみよっかなぁ……やじりの補充も必要だし」


 めぐみは軌道エレベーターに乗って天の国に向った――


「到着っ! いやぁ、久しぶりに戻ってみれば……やっぱり本殿のスケールが違うわぁ、霧が立ち込めて幻想的ですこと。うふふっ」


 すると、何処からともなく「そっそそっそそっそそっそ」と足の音と「サシサシサシサシ」と衣擦れの音が聞こえた――


「めぐみ様っ! お久しぶりですわぁ。スキルアップしてレポートの提出が無くなって、お見えにならないものですからぁ、淋しかったですわぁ」


「あらあら、お口がお上手ですこと。まぁ、私も淋しかったけどね」


「本当ですかぁ? 地上では両手に花ですから、淋しさなんて感じさえしないのではありませんかぁ? 羨ましいですわぁ。うふふふっ」


「はぁ? 両手に花? 全然、恋愛に発展していませんけど? むしろ、七海ちゃんが激熱な感じなのよねぇ」 


「神様と人間の禁断の恋っ! あるあるあるある。うんうんうんっ! 火の神であらせられる駿様は恋心に火を着けますからねぇ。和樹様もその内……きゃははっ」


「そうか……そう言う事かっ! あぁ、鈍感女ナンバーワン見事に的中。そう言えば駿さんは、この御守りを渡せば良い事が有るって言っていたけど……」


「それで沙織様に奇跡が起こりますわぁ。うふふふっ」


「奇跡!? 奇跡って……まさか、御懐妊っ!?」


「そのまさかです。きゃははは」



 めぐみは急いで鏃の補充を済ませ、軌道エレベーターに乗って地上に戻ると、イッケイに電話をして桜井経由で沙織に喜多見神社に来るように伝えた――


「ふぅ、めんどくさっ。でも、私は曲霊まがひ直霊なおひにする事しか出来ない。駿さんは恋心に火を着け、和樹さんは肉体もろとも始末する……ふーむ、時の移動の使い方がイマイチ分からないのよねぇ……」



―― 翌日


 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――


「めぐみさん、こんにちは。私に何か、渡したい物が有るって聞いて来たんですけど」


「沙織さん、お呼び立てして申し訳ありません。この御守りを持っていて下さい」


「あら、可愛い。面白い形の御守りですね、有難く頂戴致します。何だか、不思議ですね。昨日、桜井さんから電話が来て、その後すぐに元旦那から電話が有って……『すまなかった』って謝ってくれたんですよ。うふっ。めぐみさんと出会ってから驚く様な事ばかり」


「いやいや、まだまだ。もっと、驚く事が待ってますよ。うふふっ」


「もっと、驚く事? ワクワクしちゃうなぁ。期待してますよ、めぐみさんっ! うふふっ」


 沙織は本来の明るさを取り戻していた。過去を振り返り落ち込む事も無く、明るい未来に一歩、踏み出している事を笑顔が証明していた――


「これで、任務完了ね。ふぅ」



 一日の仕事を終え、帰宅をするとテンション爆上げの七海がやって来た――


「めぐみお姉たま、たらいまぁ、ご機嫌如何ぁ? きゃはははっ!」


「まあ、甘ったるい声で、ご機嫌ですこと。ニケツ出来て良かったですねぇ、七海様」


「めぐみお姉たま、ニケツだなんて下品な言い方はお止めになてっ! タンデムって言って下さいね。タンデムでランデブーなのよんっ! きゃはっ」


「あっそ。はいはい」


「ちょっと! めぐみ姉ちゃん、もっと聞いてよー、もっと、こう……『どうした? どうなった? なんて言ったの、おせーて』みたいに、食い付いて来いよーっ!」


「いや別に。タンデブー出来て良かったわね。その手に持っているヘルメットとゴーグルは貰ったの?」


「よくぞ聞いてくれましたっ! 返すの忘れたって云うかぁ、きっと、わざと忘れて行ったんよ。あっシの為にさぁ……もう一度逢う、その日の為に………」


「あっ、あぁ。そうなんだぁ……七海ちゃん、恋をしているのね」


「えっ、やぁだぁ、めぐみ姉ちゃん。どうして分かったの?」


「分かるわぁ、ボケぇ! 鈍感女ナンバーワンだからって、舐めんなよっ!」


「恋する乙女心はぁ、おそろが良いんよー。モッズ・コート買おっかな。うふふふふっ」


「アベックのペアルックほどダサい物は有りませんよぉ―――だっ」


「めぐみ姉ちゃん、教えてやかっら、良く聞けよ。アベックとかペアルックとか、死語だから。使うとハズイよ、笑われっからっ」


「ふっわぁぁ――っ、自分が先にランデブーとか言ったくせに、人をババア扱いしやがって」


 七海はめぐみを押しのけてテレビの前に座ると、電源を入れた――







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