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恋は素直で正直に。

 駿は台所でお茶を淹れている七海の背中越しに声を掛けた――


「七海ちゃん、コレを。後、コレもね」


 そう言って、ニッコリ笑うと肩をポンポンと叩いた――


「いやぁ――んっ、みたらし団子に塩大福だなんて、それにお花まで……ほぉわぁ……何時もすみません、うふふふふ」


 七海の声が普段より1オクターブ高い事に和樹は驚いた――


「めぐみさん、七海ちゃんの様子が変だぞっ! へけっ、とか、ほぉわぁ……うふふふふなんて、何時もは言わないじゃあないか。それに……うふふの『ふ』がどんどん増えて行っているぞっ!」


「しっ! そっとしてあげてよ、七海ちゃんも乙女の端くれなのよ」


 テーブルにみたらし団子と塩大福が並び、めぐみは和樹と、七海は駿と差し向かいになった――


「あれ? 塩大福は三個だけなんだ……」


「あぁ、何時も買っているからオマケでくれるんだよ。固くなってしまうからね。僕の分は良いから、皆で食べて」


「七海は良いですからぁ、駿さん召し上がって下さい。うふふふふふ」


「いやいや、良いんだよ。何時も食べているから。さぁ、七海ちゃん、どうぞ」


「やだやだ、やぁだぁ。駿さんだって楽しみにしてたんでしょぉ? 七海ひとりじゃ食べられないもんっ!」


「そっか。あぁ、そうだっ! 七海ちゃん、ひとりじゃ食べられないなら、半分こしようか? そうしようよ、ねっ」


「うわぁ、流石、駿さん。名案ですよぉ。そうしましょう。七海もぉ、それが良いと思いまぁ――――すっ! うふふふふふふっ」


 駿は塩大福を手で千切ると、片方を七海に渡した――


「駿さん、七海は小さい方で良いですぅ――っ。それでは、カンパ――――ィ! うふふふふふふふっ」


 めぐみと和樹は言葉を失っていた。そして、明らかにイチャつき絡みの七海に驚きを禁じ得なかった――


「お、おい、七海ちゃん。今日はどうしたんだ? 言葉使いも変だし、塩大福で乾杯なんて聞いた事が無いぞ。熱でも有るんじゃあないか?」


「和樹さん、余計な事、言わないで……」


「塩大福ぅ、とっても美味しかったぁ。この、みたらし団子もぉ、お茶にとっても会いますねっ。へけっ」


「そうなんだよ。いやぁ、七海ちゃんに喜んで貰えて僕も嬉しいよ」


「お互いにぃ、味覚のセンスが会うってぇ……大切ですよねっ、きゃはっ!」


「あぁ、僕も大切だと思うよ。舌が会うって言うのかなぁ……夫婦で味覚が合わないと、どちらかが我慢を強いられる事になるからね」


「そっ、そぉでっすよねぇ――――っ! 夫婦だったらぁ、マジで家庭不和の原因になりまっす、よねぇ。夫婦だって。きゃっははっ!」


 熱視線を送る七海と優しく見つめる駿をよそに、めぐみと和樹は全く違う意味で見つめ合っていた――


「めぐみさん、七海ちゃん、今『マジ』って言っただろ? 尻尾出したぞ」


「和樹さん、余計な事は言わないで、女には色々有るのよ」 



 駿は暫く七海と楽しそうに話をしていたが、ふっと、表情が変わった――


「そうだ、めぐみちゃん。この間の件だけど、もう御守りは渡したのかい?」


「あっ、それは、まだなんですけど……」


「そう。急ぐ事は無いけど、御守りを渡したら、きっと沙織ちゃんに良い事が有るよ。フフフ」


「はい。分りました……本当に、お力をお貸し頂き、有難う御座いました」


 和樹はめぐみまで照れ臭そうにしている事が気になった――


「ん? どうしたんだ、めぐみさんまで頬を赤くして……まぁ、良い。オレはもう用は済んだからな。駿、ゆっくりしていけよ。さらばだっ!」


 めぐみはすかさず立ち上がり、和樹と一緒に玄関に向うと靴を履いた――


「七海ちゃん、和樹さんを送って来るから、留守番、宜しくねっ!」


 めぐみの絶対的なアイコンタクトに七海は確信して「ラジャー!」と目で伝えた――


「何時もデリカシーの無い、あの和樹アニキが、そして、めぐみ姉ちゃん迄、ナイスアシストだお、イッツ、ラブリィ――――タイム!」


「七海ちゃん何か言った?」


「いえ、独り言ですぅ。エヘッ」


「さて、僕も帰ろうかな」


「あぁっ、まだ良いじゃないですか、めぐみ御姉様が帰って来るまで、ひとりじゃ怖いんですぅ。この辺物騒なんですよぉ」


「ふむ。そうなんだ……分かった。それじゃあ、七海ちゃんの話を聞かせて」


「えぇっ! 私の話って……あのぉ、そのぉ……」


「何でも良いんだよ。年齢とか趣味とか将来の夢とか、何時も何をしている時が楽しいとか、そんな事で良いんだよ。話してごらんよ」


 七海は駿なら、きっと受け止めてくれると信じて、勇気を出して身の上話をした。早くに父を亡くし、それが原因で学校で虐められたり、仲間外れにされた事。自棄を起こし喧嘩に明け暮れ、身体を張って自分を守ってくれた相田美織が総長を務める暴走族レディースに入った事。進学はせず、中学を卒業すると病弱の母の生活を支える為に働いたが、職場で良い様に利用されている事に気付いて訴えたが誰も守ってはくれず、喧嘩をして辞めてしまった事。そして、解散する時に総長の紹介でパン屋で働く様になった事を正直に話した――



 〝 コンッ、コンッ、コンッ ″


「う、うん、おっほん、 七海ちゃん、ただいまぁ……」


 めぐみは気を使い、七海がドアを開けるのを待った――


「めぐみ姉ちゃん、お帰り――ぃ! 外はクッソ寒かったでしょ。あっシが直ぐに温かいお茶淹れっから、早く入って」


 めぐみは、何時もの七海に戻っている事に違和感を感じていた――





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