助っ人は火の神。
めぐみは帰宅すると『スキルアップのガイド』を開きエラー・コードの解決方法を探っていた。
一、自分の能力を超えた問題や、敵と対峙した場合には必ず最適神のサポートを受けて下さい。
*注意* 最適神の選択を誤ると、問題解決が困難になるばかりか、命を落とす危険が有りますので、選択を間違わない様にして下さい。
「うーん、神官は『御自分でお調べ下さい』と言っていたから、きっと、誰か適任の人がいるのだろうけど……和樹さん以外、適任者なんて思い浮かばないなぁ……」
〝 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ″
「鯉乃めぐみは居るか?」
「おっ! 噂をすれば何とやら。はーい! ドアは開いてますよ。入ったらドアを閉めて下さいね」
「分かっている。同じ事は言わなくて良い。めぐみさん、この間『助けてっ!』って叫けび声が聞こえたから、心配になって来てみたのだが……何も問題はなさそうだな。ならば帰る、さらばだっ!」
「あぁ――っ、ちょっと、ちょっと待ってよ。言いたい事と、聞きたい事が有るの。入って」
めぐみはあの日の感謝と礼を言い、助けを読んだ状況を説明をした。そして、元旦那のエラーコードの解決方法について心当たりが無いか尋ねた――
「なるほど、それで助けを呼んだって訳だな。めぐみさん、赤目のゾンビの正体は悪神に他ならない。だが、オレには退治出来ない相手なんだ」
「えぇっ! 和樹さんに退治できない相手なんて居るんだ? でも『スキルアップのガイド』には最適神のサポートを受けて下さいって書いて有るのよ……どうしたら良いの?」
「あぁ、分かっている。つまり、オレの血筋だよ……親戚に心当たりがあるから頼んでみるよ。心配するな、大丈夫、オレに任せろ……あっ、それから、君のケータイに直接連絡するように言っておくから、連絡が来たらちゃんと出てくれよ。では帰る、さらばだっ!」
和樹はめぐみの部屋を後にして、歩きながら親戚に連絡をしていた――
「あー、もしもし。オレオレ、実は困った事になってしまって、えっ? 今直ぐ借して欲しいんだ。えっ? もう『心配するな、大丈夫だ』と言ってしまったんだよ、大切な人に迷惑を掛ける訳にはいかないだろ? だから、今日中に頼むよ。よろしく」
めぐみの部屋に向っていた七海は、和樹を発見して声を掛けようとしたが、和樹は七海に気付かず、ケータイで会話をしながら通り過ぎて行ってしまった。そして、会話の内容を聞いてしまった七海は一目散にめぐみの元へ走った――
「めぐみ姉ちゃん、大変だよっ! ヤベぇよ、和樹の奴、オラオラ詐欺やってるよっ! 現場押さえたからっ、現行犯だから……はぁ、はぁ、ふぅ」
「七海ちゃんお帰り。何を馬鹿な事言ってるの、和樹さんに頼んだのはこの私だから。どうしても力を借りなきゃならないの。分かった?」
「えぇっ! めぐみ姉ちゃんが黒幕かよっ! ガサ入れされっぞ!」
「もうっ、黒幕じゃねぇ――しっ! されねぇ――しっ!」
めぐみは事情を話し、七海は落ち着きを取り戻していた――
「ふーん、沙織姉ちゃんの元旦那が曲者って事なん。だけど、巫女の仕事も大変よなぁ、そんな事までやらなきゃならないなんて。離婚したんだからもう関係無いじゃんよー」
「そうなんだよね、私も良く分からないの。力を借りた後どうなるのか全く想像もつかないのよ」
七海と話をしていると、突然、ケータイが鳴った――
〝 リリリリーンッ! リリリリーンッ! リリッ ″
「もしもし、鯉乃めぐみちゃんのケータイで良いのかな?」
「もしもし、そうです。鯉乃めぐみですっ! えっと、あなたは、もしかすると……」
「あぁ。武御雷神が実家に電話したみたいで、それで、連絡する様に言われたんだ」
「あのっ、あなたは一体……誰なのですか?」
「あ、僕? 申し遅れたけど、僕の名前は火之夜藝速男神。地上では火野柳駿と名乗っているけどね」
「地上では? 地上に居るんですか?」
「勿論。めぐみちゃんは四月からなんだって? まぁ、一年先輩ってところかな。あははは」
「あの、単刀直入に申し上げます。貴方様のお力を借りたいのですが……」
「うん、聞いてるよ。めぐみちゃんの住所も聞いているから後で行くよ。その時に、ゆっくり話をしようよ。では、後ほど」
ケータイを切ると、めぐみは助っ人の登場にホッと一息吐いて安堵した――
「火之夜藝速男神と言えば、神産みにおいてイザナギとイザナミとの間に生まれたが、火の神であったために、出産時にイザナミの陰部に火傷が出来、それが元でイザナミは死に、怒ったイザナギに十拳剣『天之尾羽張』で首を落とされ殺された神……しかし、火野柳駿……どこかで聞いた事が有る様な…無い様な……」
「めぐみ姉ちゃん、巫女のくせに知んねぇーの? 火野柳駿と言えば、ほれ、ラノベ作家の」
「ラノベ作家?」
「まだ分かんねぇーの? 日本最大級の小説投稿サイト『小説家の野郎』で『イザナギの怒りを買って高天原を追放されたオレが、出雲へ降りると無双してざまぁ!』を書いてる売れっ子作家じゃんよー!」
「あー、アレ書いている人かぁ……」
〝 ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン! ″
「めぐみちゃんは居るかい?」
「早っ!」
めぐみがドアを開けると、そこにはクロムウェルのハーフキャップとゴーグルを手に持ち、モッズ・コートを羽織り、スクールマフラーを顔まで巻いた火野柳駿が立っていた――
お読み頂き有難う御座います。
気に入って頂けたなら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援と
ブックマークも頂けると嬉しいです。
次回もお楽しみに