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恋の終わりと始まり。

 心が軽くなり、笑う事に喜びを感じている沙織と、自分の話を聞いて楽しそうに笑ってくれる人を前に話が止まらくなっている桜井。ふたりは互いにテーブルに身を乗り出して夢中になって話をしていた――


「めぐみさん、七海さん、ちょっと変な流れになってしまって……御免なさいね」


「いや、イッケイさん。ある意味、逆に、オッケーですよ!」


「なんか、ふたりの世界に入ってっからさぁ、あっシらドロンした方が良くね?」


「そうね、そうしましょう。めぐみさん、七海さん、今度は……そうねぇ、年末か年始のどちらかで。また逢えるのを楽しみにしているわ。じゃあね。おやすみなさぁーい」


 イッケイはタクシーを二台呼ぶと、ふたりにタクシー代を渡して去って行った――



「あんだか、カッケーなぁ。去り行く姿が華麗だお……あっシらも帰ろうぜっ!」


「うん。そうしよっ!」


 タクシーに乗り込み、暫く走っていると、車中で七海が呟いた――


「でもさぁ、あのふたり、あの後どーなると思う?」


「どうなるって、後は仲良くふたりで帰るだけでしょう?」


「ちげーよっ! テルホでズッコンバッコンか、ちゅーことよ」


「やあねぇ、品が無いわぁ……七海ちゃん、もう朝がそこまで、迫っているのよ」


「そっか。桜井のオッサン面白過ぎっからさぁ、きっと、どこのホテル行っても満室で朝っ! とか、二時間休憩なのに宿泊料金で()()()()料金とか、おモロげ。最後は『結局、ヤリたいんか――――ぃ!』がオチだし。女にはモテないタイプよなぁ」


「あははは。もう、笑わさないでよ。でも、あの沙織さんが別人の様になっていたでしょう? 焼き鳥にお寿司にカラオケ、お風呂に居酒屋。タクシー代まで貰って。楽しい夜だったなぁ」



―― 数日後


 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――


「めぐみさん、紗耶香さん、新嘗祭にいなめさいに備えて心構えは出来てるっ!」


「はいっ!」「はいっ!」


「その後は分かってるっ!」


「はいっ!大祓おおはらえですっ!」


「違うでしょ――うっ! そこは、ク・リ・ス・マ・スでしょっ!」


「えぇ――っ! 七五三もぉ、まだ終わっていないのにぃ、何なんですかぁ。真面目に付き合ってぇ、損しましたよぉ」


「典子さん、クリぼっち確定組で飲み会でもする気なんでしょう?」


「何を言っているのっ! それまでにゲットするのよ! 諦めちゃダメ、ゼッタイ」


「めぐみさん、もう、付き合ってらんないですよぉ、仕事に戻りましょうよぉ」


 紗耶香の一言でめぐみは昇殿し拝殿の清掃を終えると、本殿の清掃に向った――


「ふん、ふん、ふーん、るぅ、るぅるっるぅー」


「あれ? 鼻歌が聞こえる。素戔嗚尊スサノオノミコト、何だかご機嫌ねぇ。失礼しまぁーすっ!」


「おおっ! めぐみちゃん、会いたかったぞ。この間のお礼に、何かご馳走でもしてあげよう」


「あっ、いえ、結構です。とりビーからーの、乾杯済ませーの、気を使うトークは苦痛以外の何物でも有りませんので。ではっ!」


「つれないなぁー。なら、何か困った事が有ったら、わしに言うのじゃぞ。願いのひとつやふた叶えてやるやるからのう。むっはっは」



 めぐみは清掃を終えると、社務所の整理整頓をしていた――


「何が『むっはっはー』だよ。人の気も知らずに……」


「めぐみさん、面会の人が授与所でお待ちですよ」


「面会? 私に? 誰だろう……」


 授与所に行くと、そこには山岸沙織が居た――


「こんにちは! この間は、楽しかったです、うふっ。でもぉ、世間は狭いですね。イッケイさんに聞いたんです。あっ、正確には桜井さん経由なんですけど、うふっ。めぐみさんがこの神社の巫女さんだなんて、気が付きませんでしたよー。私、たまに此処へ来るんですよ。知ってました? うふっ」


「あはは、知ってた様な、知らない様な……ところで、何か御用でしょうか?」


「私、離婚届を出して、正式に離婚したんですよ。それで……あの日に出会った桜井さんと……彼と、結婚を前提に交際する事になってぇ……この間、この神社で授けて頂いた開運の御守りのお陰だと思ったので……」


「神恩感謝に来たと云う事ですね。ご苦労様です。そうですか、それは良かったですねぇ。末永くお幸せに……」


「有難う御座いますっ! また今度飲みに行きましょうねっ! うふふっ!」


 生まれ変わって別人の様になった沙織は、明るく朗らかで饒舌だった。めぐみは喜びに笑みが零れてしまう沙織の後ろ姿見送り、幸せを感じていた。そして、振り返ると、典子と紗耶香が開運のお守りを奪い合っていた―――


「どっ、どうしたんですかっ!?」


「めぐみさんっ、あの、メンヘラ地雷女にぃ、彼氏が出来たんですよぉ? 結婚前提ですよぉ、真剣交際ですよぉ? この開運御守りの力なんですよぉ、だからっ、私の物なんですよ――ぉ!」


「紗耶香さんはクリぼっちでも良いって言っていたじゃないのっ! 年上の私からっ! 順番でしょう? 放しなさいっ! こっちに渡しなさいよ――っ!」


「何をやっているんですか、ふたりとも止めて下さいよ。開運の御守りなら、ほれ。此処に売るほど有りますから」


 典子と紗耶香が顔を真っ赤にしていると、ケータイのアラートが鳴り、画面を開くと、そこにエラー・コードが出ていた――


「何のエラーだろう? 解読不能だよ……」


めぐみは竹林に身を隠し神官に連絡をした――


「あの、もしもし。めぐみです。解読不能のエラー・コードが出ています。どうすれば良いのか分かりませんので、指示をお願いします」


「これはこれは、めぐみ様。わざわざ報告して頂き有難う御座います。このエラーはつまり……沙織様の御主人、もとい、元旦那の物で御座います。どうやらこの元旦那がブラックホール製造の真犯人の様で……」


「はぁ? それをどうしろと? まさか始末しろと? それなら、和樹さんに頼んで下さい。適任でしょっ!」


「どうやら、和樹様でも無い様な、有る様な……兎に角、後は御自分で御調べ下さい。健闘を祈ります。私はこれで、失礼します」


 〝 ツゥ――、ツゥ――、ツゥ――、ツゥ――、ツゥ――、 ″


「あっ! ちょっと、切れちゃったよ……」


 めぐみは得体の知れない恐怖を感じていた――








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