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第139話 ミクロで真っ黒。

 イッケイが連れて来たその友達は、生気が無く、人の喜びや幸せを吸い込むブラック・ホール・ウーマンの山岸沙織だった――


「はじめまして……今晩は。山岸沙織と申します……」


「あの……イッケイさんとは、どう云うご関係で……」


「聞いてよ、めぐみさん。今日、病院に検査の結果を聞きに行ったの。それで、健康には全く問題が無いって分かったのよ。感激でしょ? でね、気分良く病院を出ようとしたら七海さんから電話が掛かって来て、つい余所見をして、この人とぶつかってしまって、怪我をさせてしまったの。それでね、せっかくだから御一緒しませんかって誘ったのよ――――っ!」


「えぇっ! 何か、あっシのせいみたいで、責任感じるっつーの。妊娠事故が人身事故になるなんて。さーせんっ!」


「いいえ……良いんです。謝らないで下さい、私なんて……どうなっても良いんですから……」


「沙織さんはねぇ、友達や相談相手が全く居ないそうなのよ。だから、誘ったの。めぐみさんと七海さんに会えば、きっと心が晴れると思ったの。さぁ、皆で乾杯しましょう!」


 〝 カンパァ――――ィッ! ″


 めぐみはイッケイの音頭で乾杯をして楽しい酒席が始まっても、微笑む事も無く黙っている沙織の態度に、友達や相談相手が居ないのも当然だと思った。そして、沙織の瞳の動きを観察すると、自分と喜多美神社で会った事さえ覚えていない事に気付いた―――


「ねぇ、沙織姉ちゃん、飲んでるっ?! なんか、嫌な事が有ったのかもしんねぇーけどさぁ、人生は一度きりなんだからっ、楽しまなきゃ。もっと飲みなよぉ、全部忘れちまったら、スッキリするぜっ!」


「ありがとう……でも、無理しなくて良いのよ。私はもう、子供も産めない、おばさんだから……お姉ちゃんなんて言わなくて良いのよ……」


「あんだぉ、皮肉を言っている訳じゃねぇっつーの……」


「七海さんが撃沈されるなんて。どんだけぇ――――っ!」


「沙織さん、せっかくこうして出会ったのも何かの縁ですから、胸の奥に仕舞った思いを吐き出してみたらどうですか?」


「そうですか……そうですよね……私、もう生きていても無意味なんです。死にたいんです」


 沙織の発言は、活気ある店内の楽しい空気を一気に吸い込み一変させると、真っ暗な不幸のオーラを吐き出して自らのテーブル席のみならず、周囲の者さえも闇の世界に葬り去りそうとしていた―― 


「あわわわ、皆さん、気にしないで下さい、こっちの話ですから……ふ――ぅっ」


 めぐみは慌てて時を止めると、沙織の感情のブレーキを解くために潜在意識に潜入する事にした――


「沙織さんの小さな心の中に部屋が有るけど、あの一番奥の部屋が潜在意識なのかなぁ……」


 その部屋のドアを開けると、辛くても言えない沙織、苦しくても我慢している沙織、自分を責める沙織、苦しみの数だけ沙織の分身が居て、部屋の中は乗車率二百パーセントの満員電車状態だった――


「『スキルアップのガイド』に極稀に調査対象者と戦う事が有りますと有ったけど。もしかすると、この、感情のゾンビと化した沙織さん達を退治しなければならないのかしら?」


 ゾンビ達は己の苦しみを互いに耳元で囁き合いながら、更に苦しみを増幅して蠢いていた――


「もう良いわよ……どうせ私なんか……生きている価値が無いの……私が我慢すれば良いの……私が口を噤めば皆が救われる……私が居なくなれば皆幸せになれるのよ……もう良いわよ……どうせ私なんか……生きている価値が無いの……私はハズレ……私はポンコツ……私は役立たず……私は皆の嫌われ者……私は皆の笑い者……もう良いわよ……どうせ私なんか……生きている意味が無いの……私なんか死ねば良いのよ…………」


 めぐみの気配に気付いたゾンビが声を上げた――

  

「そこに居るお前っ! お前は、誰だっ!」


「フッフッフ。私の名は縁結命エニシムスビノミコト。人呼んで鯉乃めぐみ! お前達を退治してあげるっ! さぁ、覚悟しなさいっ!」


「何ですって! フッフッフ。あなたが私達を退治する事なんて出来るのかしら? はははは。出来る物ならやって見なさいよっ!」


「ふんっ、良い度胸だ事。お前らの望み通り殺してア・ゲ・ル!」


 めぐみは小烏丸を抜くと、ゾンビ達の首を次から次へと一気に刎ねて行った――


 〝シャキ――ン、スパッ! スパッ! スパッ! ザクッ! スパッ! スパッ! スパッ! ザクッ! スパッ! ザッツ! シュパッ! ″


 しかし、死滅したゾンビの後方から続々とゾンビ達が現れて、遅々として退治が出来なかった――


「ほほう。生きている価値が無いだの、私なんか死ねば良いなどと言いながら、繁殖能力は最強なのね。それなら、こっちにも考えがあるよっ!」


 めぐみは小烏丸を鞘に納めると、AA12Full Auto Shotgunを出してゾンビ達を射撃した――


 〝 ドッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダン――――ッ! ″


 マガジンに収めた12㎜の散弾32発を6秒で空にすると、ほぼ全てのゾンビが死滅した。めぐみはこれで終わりだと思い安堵した――






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