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第138話 産めない女と産めないおカマ。

 喜多美神社に恋愛成就の神頼みに来た須藤玲子に笑顔で挨拶をした時に「何よっ! 馬鹿にしないでよっ! ふんっ!」と逆ギレされた事を思い出していた――


「湯上りにタフ・ウーマンを飲んで、須藤さんの事を思い出していたからだろうか? しかし、あんな生々しい夢を私が見る訳が無い……」


 めぐみは照明を点けると、明かりの眩しさに目が眩んだ。そして、眠い眼を擦りながら『スキルアップのガイド』を取り出した――


 一、無意識の中で調査対象者と会話、及び尋問をする事が出来ます。

 

 *注意* 無意識の状態で調査対象者が一方的に話し掛ける状態の時は決して返事はしないで下さい。


 二、調査対象者の潜在意識に潜入する時は、時間を止めて下さい。


 *注意* 潜在意識の中の感情を除去する場合、極稀に調査対象者と戦う事が有ります。


 三、時間を動かしたら、意識が無意識と繋がっている事を確認して下さい。確認が出来たら完了です。


 *注意* 潜在意識が顕在化しない場合は再度潜入するか、他の方法をお試し下さい。


 以上のタスクを全て実行し、成功を確認次第、次のタスクへ進む事が出来ます。状況や場面に応じて適切に使って下さい。


「ヤヴァい、うっかり話し掛ける所だった、ギリでセーフだ……ふぅ。やはり、あれは夢では無かったのね。山岸沙織……彼女からのメッセージは受け取ったけど、これからどうすれば良いのか分からないよ。エラー・コードが出ている調査対象者なら潜在意識に潜入する意味も分かるけど、この縁の先にある何かを掴まなければ……」



――翌日 七日 日曜 赤口


 喜多美神社は七五三を祝う温かい空気と、健やかに成長した子供達の明るい声に包まれていた――


「今日も忙しいけど、楽しいわねぇ。七五三は一年で一番心が弾むのよねぇ。でも、部外者が無断で撮影してトラブルにならない様に、気を引き締めて、確りお願いね」


「典子さん、日本人はぁ、着物着たらぁ、最強なんですよぉ、外国の人が撮影しているのも理解出来ますよぉ。日本人は皆、着物を着て過ごせばぁ、人生変わりますよぉ」


「そういう意見も有りですね。洋服を着るからスタイルが気になったり、コンプレックスを持ったりするのかも」


「そうなんですよぉ、めぐみさん。着物を着て髪を結えばぁ、皆、美人だしぃ、めっちゃ可愛いんですよぉ。整形する必要なんて無いんですよぉ」


「整形って……紗耶香さん、大袈裟ですよ。あはは」


 めぐみは整形と聞いて、再び須藤玲子の事が頭を過ぎった――


「忘れようとすると、必ず引き戻されてしまう……山岸沙織さんと繋がっているのだろうか……だとすれば、又、何処かで出会うのだろうか……」



――恵慈医大病院


「三宅様。三宅一慶様、診察室にお入り下さい」


「失礼します。先生、早速ですが検査の結果は……」


「あぁ、イッケイさんねぇ、検査の結果ですが……全て良好です。異常は有りません。強いて言えば中性脂肪の値がこの先ちょっと気になりますかねぇ。気を付けて下さい。良かったですねぇ」


「本当ですか? どうも有難う御座いました。先生、本当にお世話になりました」


 イッケイは深々と頭を下げ、御礼を言うと診察室を後にした。あの日の胎児はエコーとMRIの異常であると結論付けたが、腹部が異常に張った状態だった事は事実であり、念の為、毎月、必ず検査を受けていた――


「あぁ、良かった。きっと、これで……良かったのよ。そう思わなくちゃ」


 イッケイがマネージャーにメールを送り、病院を出ようとした時に、突然ケータイが鳴った――

 

 〝 ピピピピピッ、ピピピピピッ、ピピピピピッ、ピピ ”


「はい。三宅一慶のケータイです。あっ、七海さん。うん、えぇ、そうなの。今夜ならオッケイよっ! じゃあ、後で。楽しみにしていてねぇ――っ!」


 通話を終えケータイをハンドバッグに仕舞おうとした時だった――


 〝 ドスンッ ″


「キャァ――――ッ!」


 出口の階段の手前で人とぶつかり、相手が階段を転がり落ちてしまった――


「大変! 大丈夫ですか? あの、お怪我は有りませんか?」


「はい。大丈夫です……すみませんでした……」


「すみませんだなんて、とんでも有りませんよっ、私がつい、よそ見をしたばっかりに、御免なさい」


「良いんですよ……私なんて……どうなったって、構わないのですから……」


「あっ! 血が出ているじゃないですか、病院に来て怪我をするなんて……もう、なんてお詫びしたら良いか分かりません、とにかくお手当をしましょう。ねっ」



――都内某所 炭火串焼き店


「いらっしゃいませ――っ!」


「めぐみ姉ちゃん! こっち、こっち!」


「よっ! 七海ちゃん待った。あれ? イッケイさんは?」


「それが、まだなんよー、五時って約束したのに、まだ来てないんよ」


「ふーん、イッケイさんが約束の時間に遅れるなんて、珍しいね。何か有ったのかしら?」


「ここは焼き鳥専門だからカシラは無ぇっつーの! うんっと、とりあえずビールとせせりとフリソデとハツを塩で二人前ヨロっ!」


「かしこまりましたぁー!」


「ほほう。お通しは鳥皮の湯引きと生落花生の塩ゆで、クリームチーズと酒盗を乗せた茶豆腐かぁ……まずまずだなぁ」


「めぐみ姉ちゃん、来たよっ!」


「うっほーい、油を背負うせせりと、抱き身のフリソデとは対照的に褐色のハツは脂がアクセントになっている。塩は岩塩にひと仕事加えている……やるなぁ、なかなかだぁ」


「めぐみ姉ちゃん、面倒臭ぇヤツみたいな事、言わなくて良いからっ! イッケイさん、まだだけど、何時来っか分かんねぇーし、お店の人に悪いからさぁ、イッケイ、オッケイって事で先に乾杯しても良いんじゃね?」


「そうね、仕方ないよね。それじゃぁ……乾杯、あっ!」


「お待たせぇ――――っ! めぐみさん、お久っ! 七海さんラブリィーっ! お久しラブリィ――――っ!」


「イェ――イッ! イッケイさん、遅ぇーよっ! 乾杯しそうになったじゃんよー、間に合って良かったお」


「御免なさいねぇ、ちょっとアクシデントが有って遅くなってしまったの。今夜はお友達を連れて来たの、紹介するわね。こっちよ、来てっ!」


 振り向いて連れて来た友人と対面をすると、めぐみは冷たいビールを飲む前に固唾を飲んでゴクリっと喉を鳴らした――





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