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第134話 届く思いと断ち切る思い。

 めぐみは一日の仕事を終えて帰宅をすると、予習のため『スキルアップのガイド』を開いた――


「あっ! 新たに読める部分が出来ている。うーん、なーんだ。邪神の時間だけ私とリンクさせて動かせた事かぁ……もう、実践済みだよ。しかし、和樹さんの力を借りなければならない歩さんの夢って何なのだろう? 私には解決出来ない事って何なのかしら……」


 〝 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ″


「鯉乃めぐみは居るか?」


「はい、居ますよっ! 開いているから、どうぞ入って」


 和樹は入って来るなり、めぐみを見つめて手を叩いた――


「おめでとう、めぐみさん。見事に解決したな。高見の見物などと言って、済まなかった。邪神を退治して、ふた組の恋が生まれるとは驚いたよ。しかも、素戔嗚尊スサノオノミコトのイメージ・アップまで同時に達成するとは凄い! 天晴だ!」


「うふふっ。もう済んだ事だから良いの。それより……」


「歩さんの事だろう? 素戔嗚尊スサノオノミコト直々に命を受けた。オレに任せろ」


「いえ……任せるのが怖いの。言いにくい事を言うけど、あなたに任せたらまた誰かを殺す様な気がして……」


「はっはっは。人間が人を殺せば人殺しかも知れないが、オレは神だ。何の問題も無いさ」


 めぐみは不安で無言になってしまった――


「おいおい、そんな目で見るな。誰も殺さないし、死にはしない。心配するな!」


 めぐみは心配するなと言われると尚更、心配になった。そして、何時しか部屋の中が冷え込み、冷たい風がすぅーっと入って来たので玄関の方を見ると、和樹は開いていると言われたドアをそのまま開けっ放しにしていた―― 


「嫌だ、もう、開けっ放しじゃないのっ!」


 ドアを閉めようと立ち上がり、歩き出そうとすると足が痺れて躓いてしまい、倒れそうになった身体を和樹が優しく抱いて支え、ふたりが見つめ合ったタイミングで七海が帰って来た――


「ヒューヒューだお、ヒューヒュー。そのまま合体するなら、ドア開けっパは不味いでしょうよー、おふたりさんっ!」


「あ、ぁっ、お帰り七海ちゃん。ヒューヒュー風が入って来たから、こうなっただけなの。ヒューヒューの意味が違うの、勘違いしないでよっ!」


「やぁ、七海ちゃん。合体とは何の事だ?」


「それを、乙女に言わせんのかよぉーっ!」


「あはははっ。言ったのは自分でしょう、馬鹿ねぇ。あははははは」


「まぁ、良いだろう。オレは帰る。七海ちゃん、確りとドアは閉めておくから安心しろ。ゆっくりと、めぐみさんと合体しな。じゃあな、さらばだっ!」


「めぐみ姉ちゃん、彼奴はヤバいって、マジで。女同士で合体は出来ねぇっつーのっ! ねぇ……えっ?」


 和樹を見送り振り向くと、めぐみは七海の買って来た茄子と大根を手に取ってニンマリと笑い、舌舐めずりをした――


「めっ、めぐみ姉ちゃん……まさか、それで? めぐみ姉ちゃん百合だったん? めぐみ姉ちゃんが、そうなら……あっシは……」


「何言っているのよ、百合根なんて買って来ていないでしょう? 茄子の素揚げに、お出汁は熱々で、大根おろしをたっぷりで、お願いねっ!」


「色気より、食い気かっ! おぉーし、今夜は茄子と大根の合体だっ!」



 その日の夜、和樹は眠りについた歩の枕元に立ち、夢の世界に誘った――


「うーん……ん? 此処は何処? 何故……私はこんな所で寝ているの? 神社? 喜多美神社の職場体験の授業は終わったけど……」


「おぅ、目が覚めたか」


「はっ、あなたは誰っ! どうしてこんな所に……」


「こんな所とは御挨拶だな。オレの名は武御雷神タケミカズチ


「鹿島様っ! あっ、でも、ここは鹿島神宮じゃないみたいですけどぉ……」


「はっはっは。オレは鹿島様では無く、その息子だ。此処は地上には存在しない夢の世界。お社の様に見えても神を奉ってなどいない。君の願いを聞き届ける為に此処に招待したのだが……」


「私の願い?」


「『令和の今、刀を持つ本当の意味を教えて欲しい』と素戔嗚尊スサノオノミコトに祈ったのは君だろう?」


「はい、でも、まさか本当に祈りが届くなんて思ってもいなかったし、神様が居るとも思っていなかったので……正直、驚いています」


「ふんっ、まったく人間と言う奴はコレだからな。驚いているのも結構だが、本当の意味が知りたくないのなら帰る」


「あぁぁ、待って下さいっ! どうか教えて下さいっ!」


「良し、良いだろう。意味を教えてやる。刀を持つ意味は……戦うと云う事だ。只、それだけだ、分かったな」


「そんな、それだけだなんて……刀を持って戦う事なんて有り得ないから聞いているのに、そんなの分かるわけないっ! からかうのは止めて下さい!」


「からかってなどいない。君は武に頼らずとも生きていられる法治国家の日本で刀を持つ必要は無い。ましてや、銃火器の前では何の役にも立たない刀など、稽古をした所で何の意味も無い。そう思っている。そうだな?」


「ぁぅっ……はい」


「ならば、此れを」


 武御雷神タケミカズチは手に持っていた刀を歩に渡した――


「どうした? さぁっ、抜けっ!」


「えぇっ、抜くって、まさかっ!」


 武御雷神タケミカズチは腰に差した刀を抜いて、構えた――


「抜かねば、斬るっ!」


 武御雷神タケミカズチの左足がザッと云う音と共に前に出て、今にも一刀両断にされそうな恐怖の中、歩は日頃の鍛錬のお陰で、直ぐにサッと刀を引き抜いて後ろに下がると、左手の鞘を構え態勢を整えた――





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