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勝負は時の運試し。

 三人の祈りは本殿の素戔嗚尊スサノオノミコトに届いた――


「おーい、おーい、縁結命エニシムスビノミコト! こっちに来いって、おーい、めぐみさーん。めぐみちゅあーんっ」


「あらっ、どうかしましたか?」


「女子高生から祈りが届いておるぞ、どうか力を貸してやってくれ。頼む」


「分かりました。素戔嗚尊スサノオノミコトに直々に頼まれたら、嫌とは言えません。いいえ、むしろ積極的にイメージアップに努めて参りますので、安心して下さい」


「うむ、心強いのぉ。では、頼んだぞ。良い知らせを待っているからな」


 めぐみは社務所に行くとロッカーからカバンを取り出し、その中から『スキルアップのガイド』を取り出して開いた――


「えーっと、ふむふむ。この場合は……時を止めるより優斗君に憑依すれば上手く行きそうね」


 めぐみは昼休みに優斗に憑依して翼と対決する覚悟をした――



――翌日 昼休み 成城学園グランド


「おい優斗、お前、何ビビってんだよっ! ブルブル震えてんじゃねーかっ!」


「ビビってなんかいないよ……む、武者震いだよっ……」


 グランドには体育祭さながらに生徒達が押し寄せたので、優斗が緊張するのも無理は無かった。そこに芽衣と美桜と歩が駆け付けた――


「オッス! キャプテン、ボクに審判をさせて下さいっ! 美桜、良いでしょ?」


「うん、芽衣に任せるよ」


「芽衣ちゃんがそうしたいなら、オレ構わないよ。優斗、お前もそれで良いなっ!」


「あぁ、良いよ……芽衣ちゃんが審判なら安心だよ。よろしくお願いします」


「まっ、審判なんて要らないけどな。オレが圧勝するから。フッフッフ」


「先攻はキャプテン、始めっ!」


 翼がボールをセットしている時、美桜は再び神に祈った「素戔嗚尊スサノオノミコトが優斗君に力を与えます様に、どうか彼を守って下さいっ!」そして、その祈りを聞いためぐみが優斗に憑依した――


「ほい、来たっ、ぴょーん。誰も憑依に気付いていないわね。翼君、絶対に入らないから。結界を張っちゃうんだもんっ。えいっ! うふふふっ」


 優斗の震えが止まり、芽衣がホイッスルを吹き、翼が一本目を蹴った――


「バッツッシュ―――――ンッ! ゴォォ――――――ッ!」


「ウォリャァ――――ッ! 貰ったぁ――っ!」


 翼の蹴ったボールは見事に優斗の飛んだ方の反対側に飛んで、ゴールネットを揺らすと思われたが、急激にカーブしてポストに弾かれた――


「カ――――ンッ」


 グランドは一瞬静まり返ったが、直ぐに騒めき、翼のシュートが猛烈に曲がった事に感嘆の声が上がった――


「今の見たか? 凄ぇ変化だぜっ!」


「嫌われたとは言え、あんな弾道のシュートが蹴れるなんて……神業だぜ!」


「そりゃあそーよ、私が神様だから。うふふふふ。さーてと、翼君。試練の時よ、覚悟なさいっ!」


 ボールをセットしてシュートの準備を整えると、優斗の心は悲鳴を上げた――


「自信無いよ……みんなが見ている……さっきは翼君が外してくれたけど、僕のシュートが決まる訳が無いし……」


 〝 優斗君、心配しないで。ただボールを蹴れば良いの、神様が憑いているから大丈夫よ ″


 芽衣のホイッスルで優斗がボールを蹴ると真っ直ぐ矢の様に翼を目がけて飛んで行った。翼は真正面に来たボールを余裕でキャッチしたが、優斗のボールはドスンッとお腹に突き刺さった—――


「ぐぅえぇぇ――っ! 痛い、息が出来ない……なんて、重たいボールだ……痛っ」


 翼は皆の前で余裕のフリをしていたが、苦悶の表情を芽衣は見逃さなかった――


「キャプテン……大丈夫ですか?」


「何っ? 大丈夫に決まってんだろっ! 余計な心配すんなっ!」


 翼はボールをセットしながら、優斗のシュートに驚いていた――


「あんなボールが蹴れるなんて……優斗の事を舐めていたぜ、でも、勝つのはオレだっ! オレなんだよっ!」


 だが、蹴っても蹴っても、結界の張られたゴールにシュートは決まらなかった。そして、優斗のボールは二本、三本、と重さを増して行き、四本目のシュートはブロックを弾き、顔面パンチ状態で直撃し、翼の鼻からは血がボタボタと流れ落ちていた—――


「ぐあぁ――ぁ、クソッ! 得点を狙わずに……オレを狙っているっ! 許せないっ」


 〝 クソって言いたいのはこっちの方だっ! 役立たずがぁ! キャプテンのクセに一本も決まらないとは、情けない奴だっ! 次こそ決めろよっ、決まらなかったら酷い目に合わせてやるからなっ ″ 


 翼がボールをセットして足踏みをして態勢を整え、芽衣のホイッスルで走り出した次の瞬間、時が止まった。だが、邪神は気が付かずに走り出して翼の身体から出てしまった—―


「おーっとっと、こりゃぁ、どう云う事だ、オフサイドトラップか?」


 邪神が周囲を見渡すと時が止まり、無音状態になっていた—―


「PKでオフサイドトラップな訳ねーしっ!」


「その声はっ! お、お前は何者だっ!」


「お前とは何だ無礼者っ! こっちは、あんたなんかとは格が違うのっ! 素戔嗚尊スサノオノミコトの命を受けているのよっ! 退治してやるから覚悟しなさいっ!」


 邪神はめぐみに襟首を掴まれ投げられると、小手返しにされグランドにうつ伏せになった—―


「ふひっ、ひえぇ—―っ! た、助けてぇ—―っ、許して下さい、お願いですぅ」


「嘘吐けっ! クソがぁ! 命乞いなど信じませんからね—―っ。乙女心を弄び、男の純情を踏みにじる不埒な奴っ! このグランドの土になって永遠に踏まれるが良いっ! えいっ!」


「うぎゃ――――っ! 参りました――ぁぁぁ」


 めぐみは、懐に忍ばせた短刀で邪神の心臓を背中からひと突きにすると、邪神は絶命し、グランドの土になった—―






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