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祈りよ届け、神様お願い。

 邪神の姿を見付けても捕まえる事が出来ず、まんまと翼の身体の中に入り込まれると、建御雷神タケミカヅチの指摘通り、時を戻しただけで同じ結果に辿り着いた様に思えた。だが、めぐみは軍神、建御雷神タケミカヅチと触れ合う事で、知らず知らずの内に武の精神とパワーを受け取っていた――――


「フッフッフ。同じ事の繰り返しにはさせないわよ。姿が見えた以上、退治しやるから首を洗って待っていなさいっ!」



 美桜と芽衣が泣き止んだ地点に戻ると時が動き出した――


「ねぇ、皆さん。クヨクヨしないで、思いを貫いて。素戔嗚尊スサノオノミコトが付いているから大丈夫よっ!」


「めぐみさん、思いを貫くって言われても……優斗君と一緒にいたら翼君が何をするか分からない、翼君のイジメや意地悪は執拗なんです」


「それで良いの。美桜さん、嫉妬に狂った翼君は必ず勝負を仕掛けてくる。その時に心の中で祈って。素戔嗚尊スサノオノミコトが優斗君に力を与えます様にってね。神様を信じてっ!」


「はいっ!」


 成城学園では、蘇った翼に入り込んだ邪神が既に悪さを働いていた――


「おいっ! 優斗、美桜ちゃんがお前を選んだからって、諦めないからなっ! 第一、お前なんかに美桜ちゃんが守れるもんかっ! 幸せに出来るもんかっ! お前なんかに美桜ちゃんは渡さないっ!」


「先輩。美桜ちゃんは、こんな僕を選んでくれた……だから、諦めて下さい。僕も美桜ちゃんが大好きなんです……」


「だったら、オレと勝負しろよっ! 勝負してお前が勝ったら諦めてやるよっ!」


「ボク達の勝負なんて……何の意味も無いですよ。先輩は、どうして美桜ちゃんの気持ちを分かってあげないの? どうして尊重する事が出来ないのですか? そんな風に自分勝手だから嫌われるんですよ……」


「何だとっ! 勝負から逃げているクセに、生意気だぞっ!」 


「人の心を変える事なんて出来ない、先輩が美桜ちゃんを幸せに出来る訳が無いっ! だから邪魔をしないで下さい……」


「出来ない? オレは諦めない、変えて見せるっ! そこまで言うなら勝負しろよっ!」


「先輩、どうしても勝負がしたいなら……僕も男だから勝負を受けるよ。でも、先輩が勝っても……僕がどんな酷い負け方をしても、美桜ちゃんの心は絶対に変わらない。美桜ちゃんの心が変わらない時は、諦めるって約束して下さいっ!」


「ぐ、ぬぅっ……あぁ、約束してやるよっ! 明日の昼休みにグランドに来いっ! PKで勝負だっ! 分かったなっ!」


「分かった。約束するよ」


 翼は心の中で自分の得意なサッカー以外で勝負が出来ない事に嫌気が差していた。そして、それを察知した邪神が悪さをしていた——


「クソッ! 何で美桜ちゃんが優斗なんだっ! あんなヘタレ! 皆の前で笑い者にしてズタズタにして、美桜ちゃんが呆れて逃げ出すようにしてやるからなっ! 見てろよっ!」


 邪神に心を支配された翼は、感情だけが増幅して理性が働かなくなり、反射的に心にも無い事を口にしたり、身体が勝手に動いてしまい自分が自分ではない様な錯覚に囚われていた——


「クソッ! クソッ! クソッ! 優斗の言う通りなのに……美桜ちゃんを奪っても、美桜ちゃんが喜んでくれない事くらい分かっているのに……クソッ!」


 〝 クソッ! って言いたいのはこっちの方だ、蘇ったとたんに日和りやがって。お前は明日の昼休みに全校生徒の前で優斗をフルボッコにして公開処刑にするのだっ! 得意のサッカーで虐め殺せっ! お前を恐れ、お前から逃げ出す者を苦しめ続けろ、そして、お前に憧れ、お前の力を利用しようとする者を炙り出すのだっ! こっちはその人間達の身体が目当てなんだよ。ぺッ! ″



 喜多美神社は静寂と神聖な空気に包まれていた――


「若いって良いわねぇ、でも、苦しみも多いのよねぇ」


「典子さん、木枯らしが吹いてもぉ、青春は熱いんですよぉ、大人になったらぁ、もう経験出来ないんですよぉ」


「そうね……でも、めぐみさん。あんな事言って大丈夫なの?」


「えっ? あんな事って、私、何か言いましたっけ?」


素戔嗚尊スサノオノミコトが付いてるなんて、悪戯に弄ぶような事を言ったでしょう」


「悪戯に弄ぶ……ははーん、さては典子さんの心の中に神は居ない様ですね」


「わ、私の中には居るわよっ。でも、あの三人の中には……あっ、何よ、ふたり共その疑いの目は。何なのよ、居ますから、居るのよ、信じてよ、そんな目で見ないでよ」


「典子さん、紗耶香さん、この問題は明日の昼には蹴りが付きますよ。サッカーだけにね。なんつってー」



——翌日 成城学園


「みんな聞いてくれっ! 昼休みにグランドで優斗と勝負する。勝負に勝ったら美桜ちゃんはオレの物だっ! 絶対に負けないから応援よろしくなっ!」


 ひとりの女性を巡って、ふたりの男が勝負する事は一瞬にして学園中に広まり、野次馬がごった返す事は誰にでも予想が出来た。小耳に挟んだ歩は猛ダッシュで美桜の元へ走った——


「美桜、大変だよっ! 翼君が昼休みにグランドで優斗君と勝負して、美桜は勝った方の物だって、皆に言い触らしているよ、はぁ、はぁ、」


「自分が得意なサッカーで勝負するなんて、酷いっ! 結果は分かっているじゃないっ! 勝負から逃げる者を卑怯者呼ばわりするけど、勝てる相手にしか勝負を挑まない翼君こそ卑怯者よ、大っ嫌いっ!」


「ウッス、ボクもキャプテンが優斗君とサッカーで勝負なんて有り得ないと思うけど、卑怯者呼ばわりはしないで……それだけ美桜の事が好きなんだと思う。でも美桜、そんな事より優斗君がその勝負を受けたんだよ。美桜……見届けないといけないよ。勝負は神聖なんだよ」


「芽衣の言う通りだよ。美桜、昨日めぐみさんが『その時に心の中で祈って。素戔嗚尊スサノオノミコトが優斗君に力を与えます様に、神様を信じてっ!』そう言っていたでしょう? だから信じて祈るの、勝機は必ず有るよっ!」


「うんっ! 私は頑張る人を応援したいからチアに入ったのよ、優斗君を応援するっ!」


 芽衣、歩、美桜の三人はそれぞれの思いで素戔嗚尊スサノオノミコトに祈った――







お読み頂き有難う御座います。


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次回もお楽しみに。

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