時を戻そう。
めぐみは気を取り直して、三つのエラー・コードについて神官に問合わせをした――
「もしもし、めぐみです。あの、エラー・コードが三つも出ていまして、詳細が分からないので教えて頂けますか?」
「めぐみ様。大変申し訳御座いませんが、スキルアップした以上、詳細は御自身で御調べ下さい。問題を明確にして頂き、解決方法の選択についてなら、お答え出来ると思いますので、では、ご検討をお祈りしております」
「あぁ、切れちゃった……スキルアップしたと言っても、ちょっと時間が止められる位でしょ? 結局、今迄と変わらないじゃない、何よっ、意地悪っ!」
めぐみは帰宅して調べてみたが、何も手掛かりは無かったので、明日の休憩時間に聞き取り調査をするしかないと、諦めた所に七海がやって来た――
「お帰り……」
「ただいまっ! ん? めぐみ姉ちゃん元気無いね、何か有ったの?」
「心配してくれるのは七海ちゃんだけだよ、ありがとう。でも、気にしないで。仕事の事だから。ふぅ――っ、いっそ時を戻そうか……」
「めぐみ姉ちゃん、そのギャグ古いから。笑われっから、違う意味でね」
「そうね……笑われちゃうよね、時を戻しても同じ事の繰り返しだもの……同じ事の……それだっ! 時を戻そう!」
めぐみは昼休みの談笑中の現場に時を戻した――
〝 でもぉ、女の子ならぁ、可愛くなりたいとかぁ、モテモテになりたいとかぁ、そう言う事ならぁ、分かるんだけどぉ、強くなりたいだなんてぇ、今時の女子高生は違いますねぇ ″
〝 紗耶香さん、もう既に可愛いから良いんですよ。それに三人共、とってもモテそうだし、男子からの激しいアプローチが鬱陶しいのですよ。ねぇ、皆さんっ! ”
「つまり、私が『とってもモテそうだし、男子からの激しいアプローチが鬱陶しい』と言った辺りで、美桜さんと芽衣さんの顔色が変わって、最後に歩さんの表情がふたりを気遣っているような感じに見えるけど……」
めぐみは過ぎた時の書き換えを行う事にした——
「あれっ? 皆さん、どうしたの? 何か悪い事を言ったかしら? じゃあ、一番モテる人を当ててみようか? 三人の中ではモデル体型の歩さんでしょ?」
「あーっ、無い無い、ハズレ! 歩は絶対、無いっ。ボクの方がまだモテますからねっ!」
「何よっ! 芽衣がモテるのは女子でしょ。まぁ、私は男子より背が高いし、この美貌だから皆、引いちゃうのよねっ」
「そうなんだ。納得」
「うふふふっ。めぐみさん、納得しないで下さいよ。違うでしょ、歩っ! あのぉ、歩の家は古くから武道の家系で、歩も武道の達人なんです。男子なんか敵わないんですよ。だから、怖くて誰も寄って来ないんですよ」
「えぇっ! そんな秘密があったとは……」
「秘密じゃないですけどぉ、私、部活も禁止されていて、毎日、自宅の道場で厳しい稽古をしているんです。だから、モテたところでデートなんて出来ないし……別にモテなくても不自由じゃありませんから」
「ふーん。じゃあ、ナイス・バディの美桜さんが一番人気って事なのね。男子はおっぱいとケツに夢中なのかぁ」
「それなんですけどぉ……実は悩みって言うか、困っているんです……巫女の皆さんっ! 相談に乗って貰っても良いですか?」
めぐみは女子高生達の真剣な眼差しと新たな展開に驚き、一瞬、たじろいでしまったが、典子と紗耶香が身を乗り出した——
「勿論っ! 乗って乗って乗りまくるわよっ!」
「ふたりからは言いにくいと思うから、私が言うね。あのぉ……芽衣の憧れのサッカー部のキャプテンが、美桜に一目惚れして夢中なんです。でも美桜には好きな人がいるんです。どうしたら良いですか?」
「どうしたら良いって聞かれても、一方通行、退路無し、さぁて、出口は何処かしら。思春期に有りがちな、甘酸っぱい感じがキュンとするわねぇ」
「だからぁ、典子さんの感想じゃなくてぇ、出口戦略としてはぁ、ハッキリと伝える事なんですよぉ、青春は残酷なんですよぉ」
「芽衣さんはキャプテンが好き、キャプテンは美桜さんが好き、美桜さんは他の人が好き。美桜さんの好きな人は美桜さんの事をどう思っているの? その人が歩さんが好きとかだと、救い様が無いと思うけど……」
「あっ、それなんですけど……好きな人はいないと思います。彼は大人しいので、恋愛とか女子に全く興味を持ってない感じなのです……」
「あら? 美桜さんはチアリーディングをやるのに、大人しい子がタイプだなんて。上手く行かないものねぇ」
「だからぁ、典子さんの感想は要らないんですよぉ、その大人しい子にぃ、告白するしかないんですよぉ」
「その通りっ! 告白しなけりゃ先には進めないよ。勇気を出して一歩前に踏み出さないとねっ!」
めぐみの言葉に女子高生達は、またもや無言になってしまった――
「ん? 皆さん、どうしたの? もしかすると……何か事情でも有るのかな?」
「それなんですけどぉ……詳しく説明すると、キャプテンの森山翼君が応援に来た美桜に一目惚れをして、猛アタックをして来て。だけど、美桜が好きなのは美術部の前田悠斗君なので断ったのです。勿論、名前は出しませんでしたよ。でも、他に好きな人がいるに違いないと美桜を目で追う様になって……美桜が近づいたり話し掛けたりする男子に嫌がらせをしたり、八つ当たりと云うか、イジメと云うか、露骨に妨害する様になって……とにかく、日に日にエスカレートして困っているんですよ」
「あら、可愛いっ! そんな年頃でも嫉妬するのねぇ」
「違いますよぉ、典子さん。流れ弾と貰い事故連発でぇ、男の嫉妬は最悪って言ってるんですよぉ、始末に悪いんですよぉ、執着する男は子供だろうがダメ、ゼッタイ! って事なんですよぉ」
「悩ましい問題ねぇ『人の恋路を邪魔する者は地獄の業火に焼かれるが良い』なんて言うけど……私は神様だからなぁ……」
美桜と芽衣は下を向いて考え込み、歩は腕を組んで天井を眺めていた――
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