表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/470

三人の女子高生。

ガックリと肩を落とし、頭を抱え込み、黙り込む素戔嗚尊スサノオノミコトを見て、めぐみはお前呼ばわりされるとヒステリックになる自分を反省し、気の毒に思い声を掛けた――


「ちょっと、言い過ぎました……まぁ、短気はお互い様ですから、これで仲直りと云う事で……どうでしょう? 」


「うむ、良いだろう。縁結命エニシムスビノミコト、わしの頼みを聞いてくれ。どうか、イメージ・アップをして欲しいのだ、頼むっ!」


「イ、イメージ・アップ? 今更ですか? 私には何も出来ないと思いますけど……」


「何でも良いのだ、とにかく昔の様に出雲に行った時にハーレム状態が希望なのだ。それでは頼んだぞ、縁結命エニシムスビノミコト!」


「あっ……」


 素戔嗚尊スサノオノミコトは言いたい事を言うと消えてしまった――


「結局、パリピかよっ! ったく、プライドだけは高いのねぇ、出雲大社はキャバクラじゃねぇっつーの! 櫛名田比売クシナダヒメにチクってやるっ! でも……また、暴れらても困るかぁ……家庭不和になっても不味いしなぁ。やんちゃと言うより子供っぽいのが難点なのよねぇ」



 めぐみは本殿を出て社務所に行くと、典子に作業の完了の報告をした――


「お疲れ様。ねぇ、本殿の方から何か話声が聞こえたけど……誰か居たのかしら? 怖く無い?」


「何で小声? 誰も居ませんよー。嫌だなぁ、典子さん。まぁ、ある意味……怖いのは間違い無いんですけど」


「本殿はぁ、時々ぃ、気配を感じるんですよぉ。お尻触られた様なぁ、おっぱい揉まれた様なぁ、きゃぁっ! ってなるんですよぉ」


「ぐぬぅ……あのエロおやじっ! 人間の巫女にちょっかいを出すとは不届き千万! しかし『英雄、エロを好む』とか言い放って、居直りそうだからなぁ……」


「あっ! 話は変わるけど、ふたりとも聞いて。今朝、職場体験の話をしたでしょう? さっき連絡が有って、明日の朝から三日間の日程で女子高生が三人来るから、よろしくねっ!」



――翌日


 喜多美神社は神聖な空気と静寂に包まれていた――


 暦は霜月となり、早朝の冷え込みが厳しくなり、冷たい風が冬の入り口に立っている事を伝えていた。そして、職場体験の授業の為に女子高生が喜多美神社の忠魂碑の前で待ち合わせをしていた――


「オッス! 美桜」


「おはっ! あれ? 芽衣、歩は?」


「ボクが一番乗りだよ。歩はちょっと遅れるってさ。直ぐ来るよ、さっき連絡有ったから」


 五分ほど待っていると、歩が猛ダッシュで駆けて来た――


「モーニンッ! 芽衣、美桜、遅くなってゴメン、待たせた?」


「大丈夫、全然待ってないよ。ねぇ歩、朝稽古やって猛ダッシュして大丈夫なの?」


「美桜、心配は要らないよ。歩はボクが追いつけない程、足が速いし、スタミナが有るんだから。ボク達とは鍛え方が違うもん。ねぇ歩っ!」


「はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ、私だって労わって欲しいのにぃ、芽衣の意地悪っ! ふうぅっ。稽古で爺ちゃんに怒られるし、なんかもう朝から最悪っ! はぁ、疲れたぁ」


「じゃ、歩殿が呼吸を整えてから参ろうか?」


「サンキュ!」



 喜多美神社には朝早くから担任の教師が来て、神職の者と打ち合わせを済ませていた。そして、歩の呼吸が整うと三人揃って鳥居をくぐった――


「お早う御座います。皆さん揃いましたね。今日から三日間、この由緒ある神社で職業体験をして頂きますので、くれぐれも失礼の無いように、そして、確りと社会勉強をして下さいね」


「はいっ!」


 三人が元気よく声を揃えて返事をすると、神職の者と巫女の挨拶の後、自己紹介になった――


 ひとり目はスポーツ刈りで、身長百六十二センチ、男の子が女子高生のコスプレをしているのかと見間違えるほど浅黒くガッチリとした体躯で、大きく盛り上がったお尻から発達したハムストリングと脹脛が女子高生とは思えないほどだった――


「オッス! 初めまして、今野芽依です。サッカー部で、ルーキーでエースです。力仕事は得意です、三日間、よろしくおなしゃぁ――すっ!」


 ふたり目はポニーテールで身長百六十五センチ、大きな瞳に肉付きの良い魅惑的な唇で、大きく張りの有るバストに強烈なクビレが印象的なとても可愛らしい少女だった――


「お早う御座います。初めまして、高山美桜と申します。チアリーディング部で全国大会を目指して日夜練習に励んでいます。三日間、よろしくお願いしますっ!」


 三人目は長い髪を後ろに束ね、身長百七十五センチ、九頭身でモデル体型、女子高生とは思えない大人の雰囲気でその美貌に溜息が出る程だった――


「お早う御座います。塚原歩です。家庭の都合で部活はやっていません。三日間お世話になります、よろしくお願いします」


 自己紹介が済むと、担任の教師は学校へ戻って行き、生徒達はお祓いを済ませて仕事の手伝いをする事になった――


「御札や御守り、絵馬は納品される物と内製する物が有ります。そして、これらのお神札やお守りは授与所に並ぶ前に、神職が神前にてお祓いと祈願を済ませたものを授与しておりますので、神霊の御分霊が宿ったものなのです。ですから大切に、一つ一つ丁寧に扱って下さいね」


「オッス!」「はい」「はいっ!」


「皆さんとても良い返事で嬉しいですよ、教え甲斐が有りますねぇ。それから、授与所では御朱印帳に記帳をします。昔は遠路を越えて叶った神社参拝。敬神の思いの結晶ともいえる御朱印帳は、昔も今も、まるで参拝した時の感動を永久保存してくれるかのような掛替えのない、大切な存在と言えますね。此処までで何か質問は有りますか?」


「ウッス! 神様って、本当にいるんですか?」


「芽衣っ!」


「馬鹿な事聞かないでよっ! 失礼でしょっ!」


「あははは。良いんですよ、素直な質問ですね。神様はいます、心の中に神がいれば怖いもの無しです」


「心の中だと『信じるか信じないかはあなた次第です』って、都市伝説みたいだよねっ」


「ちょっと、芽衣っ! 調子に乗り過ぎっ、黙っていてよっ!」


「あの、芽衣はスピ系が駄目なんで、失礼な事を言ってすみません」


 典子は女子高生の質問にも動じる事無く堂々としていたが、紗耶香は典子の「教え甲斐が有りますねぇ」が皮肉に聞こえて少しイラついていた。そして、めぐみは三人の女子高生を微笑ましく見守っていた――




お読み頂き有難う御座います。


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援と


ブックマークも頂けると嬉しいです。


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ