ほろ苦い恋愛と505Error!
元カレがカリスマ社長だったと云う事実は大きなインパクトを与えた。
何も知らずに「乙女ちゃん」と呼んでいた自分達が恥ずかしくなり、胸が苦しくなった。
生徒のひとりが呟いた。
「乙女ちゃん、彼氏がいたのかぁ~『あえて彼氏は要らない派』だと思っていたのになぁ……ガッカリだよぉ!」
それを口火に一斉に生徒達の意見交換会になった。
「大人しそうに見えて、意外とああ云うタイプが一番やり手ということねッ」
「乙女ちゃんは格好良いじゃん! ひけらかしたりしないのが。らしくない?」
「ちがうわよ、私達は倉持先生の事を何も知らなかったと云う事よ。外見で勝手にそう決め付けて、思い込んでいただけよ」
「あぁー、でも私だったら、今直ぐ恋に一直線!」
「それは無責任ですよーぉ! でも、カリスマ社長と結婚したら教師なんてやってらんないわよねっ」
「でもさ、でもさ、あの社長って、確か何年か前にグラビア・アイドルの藤城玲奈と密会報道があったでしょ?」
「お!」「あっ!」「えっ!」「きゃ――――っ!」と大騒ぎになったが、ひとりの生徒が冷静に言った
「いや、違うって、破局していたら、わざわざ会いに来る訳が無いよ。でしょ?」
「う――――ん」と一同が考え込んだ次の瞬間、スーパー・カーの轟音が響いた。
ロックを解除して門を開けると、陽菜が誘導して車はゆっくりと門を出て停車した。
津村が降りて来ると、その手に持った花束を渡した。嬉しそうな陽菜と、少し寂し気な津村が対照的だった――
「花束を贈るとは……やはり、まだ切れてはいないわね、あのふたり!」
「花束なんて、安上がりな贈り物じゃない? 子供騙しよ、女を軽く見ているのよ、私だったらあの程度では許さない! 絶対に」
「何言っているの! 好きな人から花束を貰った事なんか無いクセにぃー」
「言われてみれば、花束なんて病院を退院する時に看護師さんに貰った事があるだけか。異性から貰った事なんて無かったわ、あはは」
「だって、彼氏が居ないのだから当然でしょ、先ずは『恋せよ乙女』って事よ!」
一同が「よっしゃー!」とファイティング・ポーズをとると、歓喜と爆笑で大団円を迎えるはず……だった。
陽菜が花束を持って校舎に戻ると、花束のリボンと包装を取り、丁寧に水切りをして花瓶に挿した。淡いピンク色のスイートピーが、ほのかに甘い香りを漂わせていた。生徒達はその花を見付けると直ぐに花言葉を調べた。そして、一人の生徒が皆の前で読み上げた「departure 門出」「delicate pleasure ほのかな喜び」「tender memory 優しい思い出」「blissful pleasure 至福の喜び」此処までは嬉しそうに聞いていたが、最後に「good-bye 別れの言葉」と言った途端、生徒達の笑顔が曇り重たい空気が流れた。
暫しの沈黙の後、大人の恋愛の甘美な味わいと、ほろ苦さを一度に味わった様な気持ちになっていた――
津村とめぐみはホテルに着くとフロントで鍵を受け取り各々の部屋に戻った、津村はレストランを予約して時間を陽菜に伝え、めぐみは天の国の神官と連絡を取った――
めぐみは慌てて神官に言った。
「事故の件で地上より報告します。アプリによる測定がホワイト・アウトして計測が不可能になり、エラーコードが出ております。対処方法をお教え下さい」
神官は冷静に聞いた。
「はい、分かりました。それではエラー・コードの詳細を教えてもらえますか?」
めぐみはアプリを確認して答えた。
「505Errorです」
神官は即座に答えた。
「至急! お戻りください」
めぐみが呪文を唱えると軌道エレベーターが現れた。そのままの格好で乗り込むと天の国に向った。
エラー・コードが現場で対応が出来ない事は、ごく稀に有ったが全てがリモートによる操作で解決が出来た。今回は呼び戻されたので、何か特別な理由がある事は明白だった。
天の国に到着すると、既に神官が待っていた。「こちらへ」と言われて付いて行くと、会議室へ通された。レジュメを渡されて席に座るように指示され、サッと目を通した。
すると、室内が暗くなり天井から大型モニターが降りてきて準備が整い、神官が説明を始めた――
「結論から申し上げますと『505Error』は解決方法が有りません。と云うより、解決した実績が無いのです」
めぐみは混乱して聞き返した。
「解決方法も無く、解決した実績も無い中で……私にどうしろと? 何故、呼び戻されたのでしょうか?」
神官はリモコンの操作をして更に説明した。
「モニターをご覧ください、この表に有る様に、殆どのエラー・コードは解決済みなのです。但し、例外として三百番台と四百番台に幾つか解決の出来ていない問題がありますが、五百番台に関しては謎が多く殆どが未解決で、手がかりさえ無いのです」
めぐみは覚悟をして聞いた。
「つまり、その謎の多い、未解決の問題を解決しろと……」
神官は冷静に言った。
「その通りです。天国主大神様はこの問題にお心を痛めております」
めぐみは「了解しました」と言うと、データーのダウンロードとアプリの更新を済ませて神官に「静岡おでん」の感想とお礼をすると軌道エレベーターに向った。
すると「そっそそっそそっそそっそ」と足音が「サシサシサシサシ」と衣擦れの音が聞こえてくると足音が「ザアザア、ザアザア」と迫って来て振り返ると、そこには先に戻っていた双子の巫女がいた。
双子の巫女は声を揃えて言った。
「おかえりなさいませ。地上の任務がまだ終わらないと聞きました。こちらをお持ち下さい」そう言って破魔矢と御守りを二体差し出した。
めぐみは冷めた口調で言った。
「おいおい、お参りに来た訳ではないぞ!」
双子の巫女は言った。
「きっと、何かのお役に立ちますわぁ」そう言って「にっこにっこ」と笑うと、冷たい甘酒をお盆に乗せて差し出した。
めぐみは甘酒を「すっ」と飲み干して言った。
「ふぅーっ、喉が渇いていたので、生き返ったぞ! ありがとう」
双子の巫女は深々と頭を下げた。
めぐみが軌道エレベーターに乗ると、双子の巫女が手を振って見送っていた。めぐみはボタンを押して一気に地上へと向かった―――
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「二人の人間は今後どうなるのっ……!」
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