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Mstr シローちゃんを探して。

――翌日


 めぐみは朝から鏡の前で変装しながら「シローちゃん」を探し出す方法や、その後どうやって初めてのチュウに結び付けるか思案していた。すると誰かがドアをノックした――


 〝 コンッ、コンッ、コンッ ″


「ん? ピンポンしない怪しい奴が来たよ……いったい誰だろう?」


 のぞき窓から確認すると見た事無い男が立っていたが、ジャケットのラペルに見覚えの有るバッジが有ったので、天の国からの使者だと分った――


「お早う御座います。縁結命(エニシムスビノミコト)。私は神の使いです。地上で言うならば、おそらく……郵便局とか区役所の職員みたいなものですから、ご安心を。今朝は神官よりスキルアップのガイドをお届けに参りましたので、此方に印鑑をお願い致します。なければサインで結構です」


「あ、はい。それでは此れでお願いします。あのぉ……紙は止めると聞いていましたが?」


「これは、秘匿性の高い物ですので書留になっております。私は神の使いなので、苦情は神官にメールでお願いします。それでは、確かにお渡し致しましたので。これで失礼します」


 言うべき事を伝えると神の使いはフッと消えていた――


「名前も名乗らず、言いたい事だけ言って消えてしまうなんて……しかも苦情はメールでって何なのよ、そんなに大切な物なのかしら?」


 開封しスキルアップのガイドに眼を通していると、神憑り、憑依して人間をコントロールできる事が分かった――


「うわぁ、凄い! 分身や口寄せからスキルアップして、人間の中に入ってコントロール出来る様になったのかぁ……これなら変装する必要が無くなったよ。良かったぁ、心配事が減ってスムースに解決出来そうね。うふふっ」


 しかし、ガイドを読み進めると、使用方法の注意書きに愕然とした――


 〝 術を使用する時には神への祈りの舞いを必ず行って下さい。祈りが天に届いていない場合、術は正常に使えません。使えなかった場合のトラブル、損害は天の国は一切保証致しません。自己責任でお願い致します ″


「無理ゲ――――! いきなり私服で『祈りの舞い』なんて舞ったら、変な人確定じゃないのーっ、地上の事を何も分かっていないんだから、もうっ! 恥ずかしさを克服しなければ人間は救えないのかぁ……やれやれ」


 神官から、住所は世田谷区成城、藤島直人と綾香のひとり娘、結菜五歳。多摩川幼稚園に通園していると情報を得ていたので、早速、幼稚園に向った。そして、到着すると、幼稚園教諭の中から誰に憑依するのか見定める事にした――


「うわっ、もう子供達が来ているよ、ちょっと遅かったのか……どうしよう、門の両脇には園の責任者と教員が立っているし、のぞいたら通報されそう。困ったなぁ……」


 めぐみの予想は当たり、発見されると直ぐに声を掛けられた――


「あの? 何か御用でしょうか? 保護者の方ですか?」


「あ……えっと、私は……藤島結菜の……」


「あぁ、年長クラスの結菜さんですね。私は新人なので保護者の方、全てを覚えていないもので……失礼しました。それでは此方へどうぞ」


 めぐみは心の中で、園内に入ったら引くに引けなくなるので、却って不味い事になったと思い、隙を見て姿を消そうと思ったその時だった、パンツの太腿辺りを小さな手が掴んだ――


「おねえちゃん、おともだちは、まだ、こないの……あそんで」


「えっ、あはは、そうね……何して遊ぼっかなぁ」


「おうた、うたって」


「歌? そうだっ! 歌のついでに舞えば一石二鳥ね! だけど、何を歌えば良いのか分からないなぁ……どうしよう」


「おねえちゃん、きらきらぼしやって」


「リクエスト、あざーすっ! それでは歌いまーす。きらきらひかるぅー、おそらのほしよぉー、まばたきしてはぁー、みんなをみてるぅー」


 小さな男の子はめぐみの歌に合わせて手の平をクルクル回していたが、めぐみの祈りの舞いを見ると大喜びではしゃいだ――


「えいっ!」


 めぐみは緊急避難的に新人教諭に憑依をして、男の子の前から姿を消した。すると、驚いた男の子はベテラン教諭に向って走って行った――


「せんせい、おねえちゃんが、せんせいのなかに、はいっちゃった」


「慶矩さん。中に入っただなんて、先生を困らせないで下さい。高橋さん、可愛いからと言って遊んで甘えてさせているだけでは駄目ですよ。早く準備をして下さいね」


「はい。分かりました」


 めぐみは上手く憑依する事が出来たが、ベテラン教諭に指示をされても何の事か分からなかった。そして職員室に行き、名簿の中から「シローちゃん」を探し出していた――


「年長で、シロー、史郎、四郎、志郎……ん? 何処にも無いよ、年中にも無いし……年少? 年下かよっ! って、無いよ、何処にも、シローちゃんは何処? 誰?」


「高橋さん、名簿の確認なんて今はやらなくて良いから。早く出迎える準備をして下さい」


「あっ、あのぉ、シローちゃんを探しているのですが……」


「シローちゃん? さっき一緒に居たでしょう? それから、下の名前をさん付けで呼ぶのが基本ですよ。覚えていないのですか? 士郎慶矩さんは慶矩さんと呼ばないといけませんよ」


「はい。すみませんでした。これからは気を付けます」


 めぐみはシローちゃんは下の名前だと思い込んでいたが、名字だと分ると安堵した――






お読み頂き有難う御座いました。


次回もお楽しみに。

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