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封印の階層

封印の階層まで到達したカイン達。

 封印の階層に下りた俺達は、その光景を見て驚いた。床一面に描かれた魔方陣のようなもの。中央には、大きなクリスタルのようなものもある。これこそが、封印魔法の仕掛けなのだろう。しかし、クリスタルのようなものは、破壊されている。床も、所々破壊されているのだ。

 これは、俺達以外の誰かが、封印魔法の仕掛けを壊したということだ。いったい、何のためなのだろうか?


「とにかく、手掛かりがないか、調べてみよう。」


 俺達は、まずは破壊されたクリスタルのようなものを調べてみることにした。俺達がクリスタルのようなものに近付くと、周囲の空気がクリスタルの前に集まってくる。

 これは、石板の遺跡の石碑の階層と同じような現象だ。すると、またもや、俺達と同じぐらいの大きさのミノタウロスが現れた。


 現れたミノタウロスは、俺達の姿を見ると、何かを確信したのだろうか。一人で納得しているようだった。そして、今にも消え入りそうな声で語りだした。


「お前達、よくぞ来てくれた。何とか間に合ってくれた。我は、この封印の術式に組み込まれた一部にすぎないのだが、封印の術式が壊されたことで、もうすぐ消滅してしまう。その前に、お前達が来てくれたことは、非常にありがたい。お陰で、用件を伝えることができそうだ。」


 用件?用件とは、どういうことなのだろうか?ひょっとして、封印の術式を破壊した人間を教えてくれるのだろうか?


「少し前になるか。貴族のような衣装を着た男が、軍隊のような者達を引き連れて、この階層にやって来たのだ。そして、貴族のような男は、軍隊に指図して、この術式を破壊していった。

 我は止めようとしたのだが、我は映像だけで、実体がない。だから、軍隊が封印の術式を破壊するところを、見ていることしかできなかったのだ。

 何のために破壊しているのか、貴族のような男に聞いたのだが、何も教えてはくれなかった。

 そんなことをしても、怪物の封印は解かれないと言うと、貴族のような男は、無駄足だった、と言い残して、この場を去っていったんだ。」


 ミノタウロスが言うには、この封印の術式を破壊しにした貴族の目的は、怪物の封印を解くことにあるのだ。怪物の封印が解かれては、世界は大混乱になる。なぜ、怪物の封印を解こうとしたのだろうか?


「とにかく、怪物の封印が解かれては、世界は大混乱になってしまう。いずれ、怪物の封印は自然に解かれてしまうものだが、今封印が解かれると、非常にまずいことになる。現時点では、別次元の魔人達に、怪物を封印するだけの魔力が足りていないのだ。

 千年前の怪物の封印には、相当な量の魔力を使ったのだ。別次元には、魔力を溜める装置がある。長年溜めてきた魔力を全て使うことで、ようやく魔人を封印することができたのだ。今は、怪物を封印するだけの魔力が溜まっていないのだ。」


 ミノタウロスの説明を聞いたが、いまいち理解できないでいた。この封印の遺跡の封印は、あくまでも石板の遺跡の封印をしているだけなのだ。

 この事実は、石板の遺跡の石碑に触れたものだけが知ることなので、ここに来た貴族が知らないのは当然だ。

 しかし、ミノタウロスが言うことから、怪物を人為的に復活させることができる、と受け止めることができる。その事が、俺には納得できないでいたのだ。おれは、たまらずミノタウロスに質問をした。


「なあ、あんたの言うことは分かったよ。だが、怪物の封印は、今は、まだ解かれることはないんだろ?何を心配しているんだ?」


「お前の言う通り、怪物の封印が解けるには、まだ時間はある。正確な時間は分からないが、少なくとも、まだ百年は大丈夫なはず。

 だが、怪物の封印が弱まっているのは確かなのだ。もし、怪物にかかっている『弱体の呪い』までもが弱まっていたなら、直ぐにでも怪物は自力で封印を解いてしまうだろう。だが、『弱体の呪い』は、そう簡単に弱まるものではない。その点は、問題ないのだが。

 実は、7大怪物には、それぞれ、ある感情に呼応するようなのだ。」


「ある感情?」


「そうだ。この世には、人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情があると言う。

 それで、この世界で、その感情が一番強く持っていものに、怪物は呼応するのだという。

 まあ、その事こそが、怪物がこの世界に現れた手段だと言われているんだ。我ら魔人がいる別次元とは他にも、違う次元が存在するのだ。怪物は、そこから来たらしいのだ。この世界で、一番強い、ある感情を持った者に乗り移り、しまいには、身体を乗っ取り真の姿になる。

 千年前の怪物は、こうやってこの世界に現れたと言われているのだ。」


「その感情とは、いったい、なんなんだ?」


「それは、強欲、傲慢、嫉妬、色欲、暴食、怠惰、憤怒の7つだ。

 この国には、強欲の『ヒドラ』が封印されている。もし、この封印の術式を破壊した貴族が、強い強欲の感情を持っているのであれば、危険だ。

 現段階で、怪物の封印が弱まっている。そんな状態で、強欲の感情が強い者がいるのなら、怪物とその者が呼応している可能性は否定できないのだ。

 つまりは、『ヒドラ』が、いつ復活しても、おかしくはない、ということになるのだ。」


 怪物がいつ復活してもおかしくはない、という事実を突きつけられた俺達は、呆然としていた。かつて、世界を大混乱されたと言われている伝説の怪物の復活が迫っているということ。

 なんとしても、阻止しなければならないのだ。


「それで、俺達は、何をすればいいんだ?」


「怪物が復活する前に、この封印の術式を破壊した者を突き止め、排除しなければならない。それしか、怪物の封印を阻止する方法はないのだ。」


 排除ということは、殺せ、ということなのだろう。だが、ここの封印の術式を破壊した貴族が、本当にこの世界で一番大きな強欲の感情を持っているかなど、確認のしょうがない。さらに、貴族と言うだけでは、誰か特定のしようもない。仮に、その人物を特定できたとしても、人間を殺すことになるのだ。その事実は、俺達には、かなり重い。


「お前達、躊躇している時間はないぞ。たった1人の人間を殺すことなど、怪物が復活した後と比べられるものではないんだ。

 ああ、もう、時間がない。とにかく、頼んだぞ。お前達は、石板の遺跡にて、『次元斬』を取得している。

 本来、怪物に対抗出来るのは、『次元斬』を持つ者だけなのだ。

 ただ、カインと言ったな。お前の強さには、底知れない何かを感じる。お前の強さには、少しばかりは期待できる。だが、『ヒドラ』を倒せる保証はない。

 だから、何としても、『ヒドラ』の復活を阻止してくれ。頼んだぞ。」


 ミノタウロスは、俺達に頼み込むように言いながら、姿を消した。ここに来たことで、色々と知ることはできた。


 7大怪物の一体、『ヒドラ』。今の俺の強さを持ってしても、倒せる保証はないらしい。『弱体の呪い』がかかっている状態で、その強さなのだ。

 この事は、俺達5人は、相当な危機感を与えた。一刻も早く、ここの封印の術式を破壊した者を探さなければ、と全員が思った。

 殺すか殺さないかは、その者を見つけた時にでも考えるとしよう。


 もう、ここには用はない。封印の遺跡を出ようとした時、俺とアイザックとレオナルドの頭の中に、古代遺跡の情報が流れ込んできた。


 怪物の遺跡の位置が、急に移動したのだ。どういうことだ?しかも、移動した先は、王都『レジース』なのだ。

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