元冒険者
カインの裏スキルを知った神官は、驚愕していた。
「カイン、今、モンスター撃破時取得経験値100万倍と言ったな?なら、お主の今のレベルはいくつなんだ?」
しまった。思わず裏スキルのことを喋ってしまった。ここには、ギルド長もいる。今まで、俺の裏スキルのことは、アイザックとレオナルドしか知らなかったんだ。元々、俺の強さは、周りには秘密にしていたのだった。際限なく強くなってしまう俺は、周りから見れば、驚異でしかないのだから。アイザックにも、散々注意されてきたというのに。俺自身から口に出してしまうとは。
ああ、やはり、ギルド長も、目が点になっている。さあ、この状況、どうしようか。
「神官様、ちょっといいですか?ギルド長も、ここだけの話にしてほしい。」
俺がどう誤魔化そうか考えていと、アイザックが話に割って入ってくれた。ここは、解説教諭のアイザックに、任せた方がいいと思う。俺では、どう説明していいか分からないから。
「今、カインが口を滑らせてしまったが、カインの裏スキル、これは、とにかく異常です。ここから俺が説明することは、絶対に口外しないで頂きたい。
カインは、裏スキルの影響もあり、最近のモンスター討伐が続いたことによって、レベルが25000にまで上がってしまっている。しかも、『スキルラーニング』で裏スキルを取得したことで、腕力は10万を越えてしまった。
その結果、レオナルドが『魔法剣』と『ショット』の同時発動でも、ビクともしなかったモンスターまでも、楽々一撃で倒してしまってるんだ。」
「レ、レオナルドでも、倒せないモンスターって、まさか?」
「そうだ、ギルド長。俺達が先程報告したアナゴンダだ。実際にそのアナゴンダを倒したのは、カインなんだ。」
「ちょっと待て。アナゴンダって、どういうことだ?」
神官は、話が見えないのか、アイザックの話を遮り質問をしてきた。確かに、神官は、巨大なアナゴンダのことを知らないのだ。
俺達がこの王都にきた理由の一つに、最近のモンスターの同行がおかしいこと、この事の報告をしなければならない。
神官に詳細を伝えることによって、王城の職員にも、伝わりやすくなるのではないだろうか。どうせ、明日また、王城に行ったとしても、まともに話を聞いて貰えるか分からないのだから。
アイザックは、この前あった2つの依頼について、普段単独で行動するはずのモンスターが、大群で行動していること、通常ではあり得ない大きさのモンスターが急に現れたことを、一から丁寧に神官に説明した。
「アイザックと言ったか。お主の言うことを聞くと、確かに異常事態だ。直ぐにでも調査を始めたいのだが、とても信じられる内容ではないな。」
やはり。神官でも、そう簡単には信じられないようだ。ギルドの職員もそうだった。だから、今、ギルドの調査員が、大河川フルーメンに行って調べているところなんだ。湖に沈んでいる巨大なアナゴンダの死体を見れば、嫌でも信じることになるだろう。
「しかし、防御力10000以上のモンスターか。そんなものがいると分かれば、国中がパニックになってしまう。軍隊が総動員すれば、何とか討伐できるかもしれないが、そんなモンスターがもし、大量に発生してしまったのなら、今の我々では、対抗する手段がない。」
神官は、もし、アイザックの話が真実なら、と考えているだけで絶望しているようだった。だが、それよりも、俺を見る目の方が気になった。その目は、俺を恐れている訳ではなさそうだった。
「それで、アイザックとやら。そんな軍隊を総動員しなければならないモースターを、カインは一撃でたおしてしまったのだな?」
「はい。そうです。それも、楽々と。」
「むう、それなら、お主の言うことが現実だとしても、対抗手段はあるということになるな。だが、カインの強さを公表するべきではないと、お主は考えているのだな?」
「はい。カインの強さは異常です。その強さが公表されたら、人々はどう思うでしょうか?驚異に感じるでしょう。でも、それだけならまだいい。もし、貴族の耳に入ってしまったのなら、カインは、隣国との戦争の道具にされてしまうかも知れないんだ。そんなことは、絶対にさせたくない。」
アイザックが、俺に関する説明を終えると、神官は、じっと俺を見ながらに何か考えているようだった。
ギルド長も、俺のことを初めて知って、大きく動揺しているようだった。
「カイン。どうやら、お主の強さは事実らしいな。今、お主の裏スキル診断をしたが、確かに、今言った裏スキルを所持している。腕力10万というのも、信じるとする。
とにかく、ワシの方からも、王城にかけよってみる。お主達は、今日ここに泊まるといい。明日の朝、まずワシが王城へ行ってみる。先に話をしてから、お主達を呼びに来るよ。」
神官が話の通じる人物で本当に良かった。やはり、元冒険者なだけあって、他の貴族とは大きく違うようだ。これなら、王城に話が届くだろう。そうなれば、俺の当初の目的である、魔草の栽培のための工事の許可も下りるだろう。
一安心してると、何故かアイザックが慌てていた。
「どうした、アイザック?何を慌てている?」
「レ、レオナルドがいないんだ。」
「えっ?」
俺は、慌てて周囲を見渡したが、確かにレオナルドの姿がない。一体、何処へ行ったのだろうか?何故、姿を消したのか?分からない。俺達は、教会の中を探したが、レオナルドは見付からない。
「教会にいないのなら、王都中を探す必要があるな。」
しかし、手分けして王都を探すことはできないのだ。俺達は、王都内を自由に歩き回ることは、制限されている。だから、ギルド長とアイザックと俺の3人で固まってレオナルドを探さなければならない。非常に非効率だ。
「とにかく、急ぐぞ。」
そう言って、アイザックが先頭を切って、教会の正門の扉を開けたのだが、外の様子を見て、アイザックはガックリと両膝から崩れ落ちた。アイザックの様子からすると、何かとんでもないことが起こっている。俺はアイザックの元に駆け寄り、外の様子を見た。
この教会の前には、王都の中央広場が広がっている。つまり、教会の正門を開けると、中央広場の様子が良く見えるのだ。
そこで見えたのは、先程ランクSに昇格した『神速のノーラン』とレオナルドに、二人を囲むようにして、二人の様子を見ている貴族達だった。
様子からして、明らかにレオナルドがノーランに絡んでいるようにしか見えない。
「アイザック、あれって?」
「ああ、カイン。お前の予想通りだと思う。レオナルドは、ノーランに先を越されたことが悔しくて、対決を申し込んでるんだと思う。」
レオナルドは、剣を抜き、剣先をノーランに向けて、何かを言っているよに見える。この様子は、以前にも見たことがある。
あれは、闘技大会の時、俺に絡んできたレオナルドそのものだ。アイザックの言う通り、レオナルドは間違いなく、ノーランに勝負を挑んでいるのだ。
「馬鹿野郎、レオナルド。場所と時を考えろ!」
アイザックは嘆いていた。やっぱりレオナルド馬鹿だった。ある意味良かったと思っている自分がいた。急にいなくなったレオナルド。何か良からぬことが起こったと心配していたのだが、いつも通りのレオナルドだった。




