アイザックとレオナルド
一時的に、カインと別行動を取っている、アイザックとレオナルド。
カインと一旦別行動を取ったアイザックとレオナルドは、『ウルプス』の冒険者ギルドに到着した。依頼達成の報告をするためである。
「レオナルド様ですね。アナゴンダの大群討伐の依頼達成ですか。申し訳ありませんが、依頼の内容からして、達成するまでの期間が早すぎると思うのですが。」
冒険者ギルドの職員が疑問に思うのも、無理はない。この依頼は、大河川フルーメンの流域が、あまりにも広大なため、期限を1ヶ月に設定されていたのだ。しかし、アイザックとレオナルドは、依頼を受けてから数日で達成の報告をしたのである。誰が聞いても、おかしいと思うのは当然のことなのだ。
「まあ、そうだと思う。だから、ギルドの職員に、大河川フルーメンの調査をして欲しいんだ。そうすれば、大河川フルーメンでアナゴンダの大群が討伐出来たことを、証明できると思うんだ。」
レオナルドは、ギルドの職員に、依頼達成を証明するために、そう提案した。
「それより、ギルド長を呼んでくれないか?重要な話がある。」
レオナルドの突然のギルド長の呼び出しに、ギルドの職員は、急いでギルド長を呼びに行った。『最強のレオナルド』からの突然の呼び出しに、異常事態が発生したと判断したからだ。
職員の案内を受けて、アイザックとレオナルドは、ギルド長が待っている応接室に入った。
「レオナルドにアイザック、いきなりの呼び出しということは、何か異常事態が発生したということでいいんだな?」
「ああ、そうだ。アイザックから、詳しい説明をする。」
レオナルドに言われ、アイザックは説明を始めた。
「今回の大河川フルーメンでのアナゴンダの大群だが、あのアナゴンダは、全て生まれたばかりの赤ん坊だった。フルーメンの湖に、アナゴンダの親がいたんだが、直径2メートル以上はある、信じられないようなでかさだった。
何とか討伐することはできたんだが、そんな大きなモンスターが、何故今まで見付からずに生きてきたのかと、不思議に思ってな。
今回、ギルドの職員に大河川フルーメンの依頼を頼めるか?巨大なアナゴンダの親の死体は、フルーメンの湖の中央付近に沈んでいるはずだ。」
レオナルドの説明を聞いて、ギルド長は驚愕していた。
「そんな馬鹿な。そんな巨大なモンスターがいたなんて、信じられない。確かに異常事態だ。これは、国を挙げて調査する必要があるな。報告感謝する。」
アイザックとレオナルドは、ギルド長へ報告を終えた後、近くの酒場で食事をとることにした。
「申し訳ありません、アイザック大師匠。」
酒場の席に座るなり、レオナルドはいきなりアイザックに誤り始めた。
「なんなんだ、急に?」
「いえ、先程、ギルド長への報告の時です。大師匠のことを、呼び捨てにしてしまったので。会話をスムーズに進めるためにとった、仕方がない方法だったので、ご勘弁を。」
レオナルドの詫びを聞いて、アイザックは、明らかに面倒そうな表情をした。
「そんなことで、俺が怒ると思っていたのか?気にする必要なんてない。むしろ、これから呼び捨てで構わないんだぞ。」
「いいえ、それは恐れ多くて、出来るはずがありません。これからも、大師匠と、呼ばさせていただきます。」
レオナルドの徹底した下手に出る態度に呆れていたアイザックだったが、料理が席に届いた後、真剣な表情でレオナルドに質問を始めた。
「なあ、レオナルド。お前は、カインの強さを、どう思ってる?」
「カイン殿の強さでございますか?」
「ああ、今回の巨大なアナゴンダとの戦闘の時、さすがに実感しただろう?あんな巨大なモンスターを、たった一撃で真っ二つにしたんだ。どう考えても異常だ。俺達とは、強さの次元が違いすぎる。」
「まあ、カイン殿の裏スキルが、あの強さの理由なのですよね。」
「馬鹿かお前は。俺は、そういう単純なことを聞いてるんじゃない。カインが裏スキルを4つも持っていたことには確かに驚いたが、特に『レベル上限なし』という裏スキルだけは、明らかに異常だ。もう、あいつの今のレベルは25000にまで上がってしまっている。腕力にいたっては、10万だぞ。そんなのは、もう人間とは言えない。」
「はあ。」
馬鹿なレオナルドは、アイザックの話に、ついてこれてないようであった。
「いいか、レオナルド。順番を変えて説明するから、しっかりと聞くんだ。
あの巨大なアナゴンダと戦った時の、お前の攻撃力は630,カインの『腕力アップ』で、1260。『魔法剣』で、2520。そこに、『ショット』で、お前が巨大なアナゴンダに攻撃した時の攻撃力は、10080だったんだ。普通に考えれば、10000を超える攻撃なら、どんなモンスターだって瞬殺てきるんだ。
だが、実際はどうだ。あのアナゴンダには、何もダメージを与えられなかったんだ。今までに、防御力が10000を超えるモンスターなんて、見たことないだろ?
もし、そんなモンスターがいたなら、それこそ国家レベルの軍隊の総攻撃が必要になる。だがカインは、たったの一撃で真っ二つにしたんだ。
つまり、カインは、一人で国家レベルの軍隊以上の戦力を持っているということだ。ここまでは理解できてるか?」
「はい。聡明なアイザック大師匠が、分かりやすく数字を出して説明してくださったお陰で、理解できました。確かに、カイン殿の力は異常です。カイン殿がその気になれば、一人で国を落とせるということですよね。アイザック大師匠が心配しているのは、そういうことでしょうか?」
「いいや、国を落とすとか、その発想は、あくまで、俺達のレベルで考えられる範囲での話にすぎない。
いいか、今、俺が言ったカインの強さは、巨大なアナゴンダと戦った時点での話だ。戦闘を終えてから、あいつはさらにレベルを上げ、さっきも言ったが、今の腕力は10万にまで上がってしまったんだ。それだけではない。腕力が10万のカインがスキルを利用すれば、100万を超える攻撃が可能だ。
考えてみろ。防御力が10000を超えるモンスターを倒すだけで、国家レベルの軍隊が必要なんだ。
その100倍の攻撃を、カインは可能だということ。それが、どういう意味か分かるか?」
アイザックの説明を理解したレオナルドは、恐怖で体が震えていた。
「カ、カイン殿の攻撃で、世界が滅亡する?」
「レオナルド。甘いよ。それでは、まだまだ俺達の次元での考え方だ。世界が滅亡するだけなら、まだマシだ。」
「えっ?世界が滅亡すること以上に、悪いことなんてあるんですか?」
「ああ、あくまでも、レオナルドが言った世界が滅亡するというのは、今のカインの場合での話だろ?
カインは、レベルの上限がないんだ。これからも、モンスターを倒す度に、大幅に強くなっていくんだ。際限無くな。
世界の滅亡とは、あくまでも世界中の国家が崩壊するだけのことであって、いくらでも再建することはできる。
だが、際限無く強くなってしまったカインが暴走してしまうと、この星ごとなくなってしまうかもしれないんだ。
いいか、レオナルド。星ごとなくなってしまうんだ。この事こそが、俺が考えている最悪のシナリオだ。」
レオナルドは、カインの可能性の事実を知って、あまりのしよっキングな現実に、言葉が出なかった。それは仕方がないことだ。
頭の悪いレオナルドは、闘技大会で初めてカインの強さに触れた時、その強さに憧れを持つと共に、カインを指導したというアイザックのことは、神に等しい存在と崇めていたのだ。
そんな二人と行動を共にすることができて、今回のアナゴンダ討伐の依頼は、とても楽しかったとおもっていたのだ。
それが、この星自体の存続をかけた話にまで飛躍してしまったのだ。
レオナルドは、頭が悪いなりに、とにかく考えた。考えた結果、大きな疑問が1つ、レオナルドの頭の中に浮かんだのだ。
それは、何故、アイザックは、星ごと消滅してしまうかもしれないカインと行動を共に出来るのかということ。
普通の人間であれば、強大すぎる力は、驚異の対象でしかない。しかし、アイザックは、カインのことを恐れるどころか、守ろうとしているのだ。レオナルドには、アイザックの行動が、どうしても理解できなかった。
「アイザック大師匠は、怖くないんですか?カイン殿のことを、怖いと思ったことはないんですか?」
レオナルドの質問に、アイザックは、優しい笑顔で答えた。
「うーん。俺は、カインのことを、怖いと思ったことは一度もないよ。それどころか、可哀想と思っているんだ。
あいつは、成長素質がオール1だ。つまり、レベル1の時は、HPもたったの1しかなかった。そんなカインを、全ての人間が馬鹿にしていたんだ。
あいつは、15歳になるまで、地元の村を出たことがなかった。それで最近、ようやく憧れの冒険者になることが出来たんだが、依頼義務規約のせいで、無茶をするしかなかった。その時、ブルーウルフに襲われているところを、俺が偶然見かけて助けてしまった。
俺が助けたせいで、あいつは、ブルーウルフ100万頭の経験値を取得してしまい、レベルが400まで上がってしまったんだ。あいつの意思とは関係なしに、その時に、勝手に最強にさせられてしまったんだ。
あいつは、好きで最強になったんじゃない。でも、あいつは裏スキルのせいで、嫌でもレベルがどんどん上がってしまう。俺は、あいつがこれ以上強くならないように、あいつが攻撃する前に、俺がモンスターを全て倒すように動いていたつもりだ。
だが、最近のモンスターは少しおかしい。なぜ、ワイルドボアは、急に集団で行動するようになった?
なぜ、あんなにも巨大なアナゴンダが出現した?これでは、否が応にも、カインがモンスターを倒すことになってしまう。その結果、今のカインのレベルが25000になってしまったんだ。
だから、俺は決心したんだ。あいつが間違った行動をしないように、常に一緒にいてやろうと。
それに、俺には策があるんだ。この世界には、『スキル封印』と『スキル奪取』というスキルがあると聞いたことがある。
この2つのスキルを取得することができれば、あいつが、これ以上強くならないようにしてあげられる。
まあ、俺が、あいつと行動を共にしているとは、そういうことさ。」
アイザックが説明を終えると、レオナルドは号泣していた。
「感動しました。アイザック大師匠。これから、一生ついていきます。」
そう言ってレオナルドは、アイザックに向けて土下座した。『大丈夫か?レオナルド』と思いながらも、滑稽なレオナルドの行動を見て、緊張の糸がほぐれたアイザックは、大笑いしていた。
レオナルドは、知らないうちに、アイザックの重圧を軽くしていたのである。




