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アズキ

第63章

 「アリエル、寝るな!頑張れ!」


 お産婆さんが言う、

 「妊婦さんはたまに寝るものですよ。起こさなであげて下さい」


 「それにしても寝すぎですよ、眠って、食べて、騒いでの繰り返しで大丈夫でしょうか?」


 「大丈夫です。もうすぐ、本格的に陣痛が始まってきます。そしたら、また、お腹が空いたと言うかもしれませんよ。ふふふ・・・・」


 「アリエル、今度は何が食べたいと言うのかしら??早めに言ってくれると準備できるのに・・」


 「お産は本当に大変だ。もう10時間経つ、くたくただよ・・・」

 「何、言っているのこれから本番だよ」


 「痛い!!いったたったったた・・・痛い!アッ!ミートス!アイス!痛い・・・・」


 「アイスね。わかった!!」


 その言葉は伝言ゲームのように屋敷の厨房に伝えられそれから大急ぎでここに運ばれる。


 ここは家族風呂の近くに特別に作られた分娩室、ここなら、お湯もたっぷりあるし、1階なので安全で何よりも良かったと思ったのは厨房が近かった。


 ルシアが駆け足でアイスを運んでくる。


 「アリエルさん、頑張って!!アイスです」


 「今は堪えているからもう少し経ったら口に運んであげてね」


 「はい、今、2分です」


 「はい、もうすぐですよ。ゆっくり、息をしてください・さあ、アイスです。さあ、いきんで!さあ、アイスです。さあ、いきんで!!いきんで!!」


 「オギャー!!オギャー!!オギャー!!!」


 「はい、お父さん、お母さん、女のお子さんですよ。生まれました。可愛い女の子です」


 「ヤッター!!生まれた・・・女の子!!」ミートスとルシアは抱き合い喜び、マルクは小さいわが子を抱き涙する。


 「アリエル、ありがとう。ありがとう・・・すっごい可愛いよ」


 アリエルはうん、うんと頷いてまた眠った。それを見て、ミートスが試しにアリエルの口にアイルを運んでみたら、口を開けて食べた。


 そこに居た人全員はうれし涙と笑いがまじりあいお互い口に手を当てながら笑いを堪えていた。


 10時間以上の死闘の上、産まれた女の子はマルクとアリエルによって、アズキと名付けられた。


 アルイム領のご先祖様たちは良く、アルイム領で生まれた女の子にアが付く名前を付ける風習があった。アリエルの家はその風習を受け継いで、産まれた女の子はアリエルと名付けたそうだ。


 ミートスはアイスを食べながら生まれたのでマルクがアズキと付けたと思っている。


 アズキアイス・・・・


 アズキの誕生は王都にも伝えられて、サリー家、ロケッサ家、カフェ、商店の皆さん、王宮、すべての人が喜びに沸いた。


 3教の一人が国王に尋ねる。


 「国王、何か素晴らしく良い事があったのですか?今日は皆さん大変うれしそうですが・・」


 「ええ、アルイム領の知り合いに女の子が生まれました。聞いた事があると思いますが、グルガシ国の国王に薬の処方箋を渡した青年でマルクと言います」


 「ほう、それはめでたい事ですな・・・国王、私たちも、お祝いの式典を開催いたしませんか?貴族たちも、最初は不満を訴えましたが、国の経済が上手く動けば自分たちにも利益が持て成されるとわかってきました」


 「2皇子の残党たちもほとんど捕まりました。諸外国とは今の所、とても良い関係を築かれていらっしゃる。予想外ですが、あなたは国王の素質があったと認めます」


 「本来なら、もっと早くに行うべきです。王都大学の改革の為に遅れましたが、貴族たちも華やかな催しが欲しくてなりません。明るい未来があると国民に教えるべきです」


 そう、シン国王はグズグスしてなかなか自分が国王になった祝賀会を開いていない、勇気がないのだ。たまに大学でソフィを見かける。出会った時と同じように美しく上品さが全体から溢れている美しいソフィを、自分がまた不幸にするかも知れないと思い躊躇っている。


 アルイム領の二人は何も言ってこない、何も言わないのは自分で決心しなくてはならなと言う圧力でもある。


 (もう一度、テラスで会って、ワルツを踊って、自分を、好きになってくれるのだろうか?)


 「そうですね。季節のいい、秋の始まりに、行いましょうか?夏前に招待状を送りましょう。その為の出席者のリストをお願いします。



 一方、アルイム領の屋敷では、マルクとアリエルが育児に追われていた。


 「ミートス、お願い、2時間だけアズキをお願い・・・マルクが自分の家で診療を始めて・・今日は居ないの・・・グス・・・・」


 「いいわよ、さあ、おいで、アズキちゃん・・・ママはお疲れですね」


 「胸が痛くて・・岩のよう・・・アズキは意外に小食で困る、ちょびちょびおっぱいを飲む・・」


 「アッ、それならルシアにお願いしてマッサージしてもらえばいいわよ、私の時もルシアがしてくれて、眠った状態でも双子にお乳まで飲ませてくれて、げっぷもおむつも全部ルシアとボルンがしてくれたから今となっては本当にお世話になったと思っている・・・」


 「いや、そのマッサージ、朝マルクがしてくれたのだけどね。それは、それは痛い・・痛くて、我慢できなくてマルクをけり倒した・・・・だから、ルシアにケガをさせるのも申し訳ないと、思う・・」


 「だから、今日から診療を開始したの?あんなにアズキ・アズキって言っていたのに・・・」


 「ミートス様、アリエルさんのご両親がお見えになりました」


 「はい、どうぞ」


 「こんにちは、いつもお世話になりましてありがとうございます。これはほんの少しですけど、皆さんでお召し上がりください」


 「いつも、ありがとうございます。気を使わないでください、アリエルはもう家族同然ですので・・」


 「はい、ありがとうございます。孫までもお世話になりまして、本当に申し訳ありません」


 「今、アリエルが少し休みたいと言っていましたが、アズキちゃんをお二人にお任せしますね。ごゆっくりしてくださいね」


 アズキをアリエルの両親に渡して、そのままロケッサの書斎に向かったミートスは、


 「トントン、ロケッサ居る?」


 「どうそ、今、私も、お母様の所に伺う所でした。王都の大工の事です。前回の学生寮のリフォームが、思わぬ評判になり、大工の頭の所に沢山の仕事の依頼が来ているようですが、大工たちも、お母様やマルクさんの指示がないと、上手く動けないようで、少し、助けて欲しいとのことですが・・・」


 「そうなの?ミートス商会は、建築部門も立ち上げるつもり?」


 「はい、これからは王都での工事が多くなりそうです。実際には国王がからも依頼が入っています。沢山雇っても仕事はあると思われますが・・・、かしらの信頼を得た者と雇用契約を結びたいと思っています。どうでしょうか?」


 「それはロケッサに任せるけど・・・毎回、王都に向かうのは少し大変ではないからしら・・・いくら車があると言え・・・」


 「はい、最初はスライム携帯をこっそり現場に持ち込み、それでお母様のイメージが湧いて来たら現地に一度、赴くのはどうでしょうか?」


 「それなら、大丈夫です。その形で一度やってみましょう」


 「今ね、アリエルのご両親が、また、いらしてお菓子を頂いたの、このお菓子ロケッサが、好きだと言っていたから、ルシアに、お茶を入れて貰って頂きましょう」


 「アリエルのご両親って、本当に素敵なお二人で、なんて言うか人望があるというか上品な方でいらして、少し意外なの・・・」


 ルシアが、

 「アリエルさんのご両親は商売も薬屋で信頼があり、少し前まではこの街一番の人格者でしたよ」


 「そうなの?」


 「でも、お母様の腰と足が痛くなって、お父様が大事を取って、アルイム領の中で、比較的暖かい所に、別荘を建てて静養しているみたいです」


 「そうなの?この街一番の人格者の娘がアリエルなの?」


 「はい、この前いらした、お兄様ご一家も、ご立派なご一家でした」


 「沢山のプレゼントを持って来て、お嫁さんも、女の子がいないのでアズキちゃんをとても可愛がり、親切な人でした。お兄さんがたまたま、甥っ子さんを王都大学に入学させる為に、アリエルさんに色々、聞いていましたが、アリエルさんは、私に聞いてもわかるはずがないと怒っていました。どうも、勉強と聞くと・・・無理と反応するタイプらしく・・・産後に悪いと言ってました」


 「------」


 ロケッサが、

 「それでも、ご両親、お兄様夫婦に愛されてるアリエルさんだから、我が家でも好かれるのではないでしょうか?それも、人望ですね」


 「ロケッサ・・・アリエルを受け入れてくれて本当にありがとう。だから・・一緒に、アズキの事も、お願いね」


 そうなのです。アズキはロケッサが大好きらしく、ロケッサに手を伸ばし、微笑む、しかし、ロケッサはチラッと見るだけで素通りする。


 「彼女はまだ赤ん坊です。受け入れるも何もありません」


 「でも・・・普通、赤ちゃんが笑いかけたら笑い返すのが正しい反応だよ、おまけにあんなに可愛いアズキなのに・・・」


 「ええ、物が食べらるようになったら、何か与えます」

 (それは・・・ペットと同じでは・・・?アリエルが聞いたら滅茶苦茶に怒る!)


 「とにかく、赤ちゃんには優しく接してくださいね」


 街一番の人格者の訪問か・・・・と思って廊下を歩いていると、アリエルの叫び声が、


 「いやーーーお母さん、止めて、痛い、おっぱいが痛い、ギャー!!!」


 「こうしないと病気になるって、マルクさんが朝、訪ねて来たのよ。本当に迷惑ばかりかけて、マルクさんに申し訳ない・・・もう少し我慢して、アズキちゃんとあなたの為です」


 そうだった、この二人、薬屋で医療が少しわかるのだ、だから、マルクは人格者のご両親に助けを求めてマッサージをお願いしたのだ。抜かりがない、さすがです。マルク!!


 アリエルの育児が屋敷を騒がしている頃、祝賀会の招待状が届いた。



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