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ロイヤルブルーに溺れる

作者: 高崎 理果


 エインの深い青の瞳が大好きだ。伏せられていると、深海のように思慮深く、光を見上げた時には青の中に金の虹彩が煌めく。こんなに美しいものは宝石の中にも存在していない。彼の瞳を宝石にして纏えたら、私も海になれるのかしら。銀色の睫毛に縁取られたそれは、私を認識すると甘くとろけて心地のいいロイヤルブルーになる。戦っている時の彼は、対象的で苛烈。鮮烈な重さを宿したその瞳は、彼の力を行使するたびに青く燃え上がった。だからこそ、甘くとろけた彼は貴重なのだ。そう思いながらも飽きもせずに、熱心に本を読むエインの瞳を眺めた。


 「マリ。何をそんなに見つめてくるんだい。」


 本を読んでいた彼が視線を上げて私を捉える。その瞬間、青が甘いロイヤルブルーに溶けた。嬉しい。甘い。その変化に堪えきれなくて微笑を漏らした。あなたの瞳が綺麗なんだもの。私の宝石にして飾りたいな。そしたらあなたの海になれると思う。そんなことを彼に伝えると、きょとんとした顔をして「マリの瞳の方が何百倍も美しいよ。いつまでも見ていられる。」と言った。


 うそ。貴方の瞳の方が綺麗。私の瞳が美しいと言われるのは、この世界でこの色を持つものが存在しないからだ。私の瞳と髪色は、まるで新月の夜の様に真っ黒だ。貴重なものを美しいと感じるのはどこでも同じなのかしら。日本にいた頃は、個人差はあれどみんな黒髪黒目だった。


 不意に手を取られ、ぐっと持ち上げられる。エインの手から下されたそこは、彼の膝の上だった。体を預けて、少し下にある彼の瞳を覗き込むと、上目遣いになった彼の瞳に光が入って金色が煌めく。美しい。綺麗。好き。


 「ふふ、マリが私の瞳を見てそんな表情をくれるならいつまでも見つめていてほしいな。」


 エインは機嫌よく微笑んで、ちゅと鼻の頭に口づけを落とした。


 「マリ、私はね、最初は貴女の髪色も瞳も珍しく思った。だんだんと貴女と過ごしていくにつれて、黒曜の様な美しい瞳が何を写しているのか気になってしょうがなかった。知ってる?貴女の瞳は感情が高ぶると、銀の虹彩が弾けるんだ。」


 エインはしっかりと私と目を合わせながら、愛おしそうに語った。


 「エインの瞳は金色が煌めくよ。知ってた?」


 同じ様に返すと、金と銀なんて対みたいだと彼は機嫌よく笑った。


 「エインがこの瞳の色が好きなら私も好き。」


 大好きだよ、と彼は言って、今度は軽く触れるだげのキスをする。何度かキスをして、それから唇が触れるか触れないかの距離で、彼が落ち着いた声で告げた。


 「マリの瞳は何種類もの表情をもってる。とくに僕のお気に入りは、黒曜が潤んで僕の青色を飲み込む時なんだ。」


 彼はじっと私を見つめて、目を細めた。あ、と吐息が漏れる。その吐息ごとエインに食われた。至近距離で深い青を見つめて、私はもう一つの彼の瞳の色を思い出す。捕食するときの、彼の本質を表す青い深淵。私のみに注がれる欲望の色。ペロリと唇を舐められて、たまらなくなる。食べられたい。食べたい。熱い吐息をエインに注ぐ。きっと私はエインの大好きな瞳になってる。黒曜が潤んでる。貴方の青を食べたくて。


 「悪い子だね。」


 私は、彼の深い青の瞳が大好きだ。ロイヤルブルーの海の中で、私は今日も貴方と泳ぐ。

読んでくださってありがとうございます。

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