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歴史における通説と私見  作者: 鹿島三塁手
第一章 越後上杉、長尾家の暗闘
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三条長尾家と上田長尾家

古志、三条、上田の長尾家は謙信が家督を相続する以前より、古志三条派と、上条上杉上田長尾派で争っています。

 今回は上田長尾家について話していきたいと思います。


 景虎の父為景が下克上を行ったため、越後国内では下克上の空気が晴景、景虎の時代になっても強く残っていました。古志長尾家は為景の妻の実家で、この2家の関係はあまり悪いものではありませんでしたが、逆に上田長尾家はその2家に比べて格下とみられる風潮がありました。長尾晴景が守護代の地位を下りる時に、弟の景虎以外にもう一人、候補がいました「長尾政景(ながおまさかげ)(1526-1564)」です。


 彼は景虎が兄と争った時に晴景について戦っています。ということは、晴景は彼を後継者としたかったと考えられます。なぜなら長尾為景の正室は上条上杉氏の娘であり、晴景、仙桃院は嫡室子であり、景虎の母は古志長尾家の娘で、景虎は後妻の子という立場になります。年も親子ほど離れていた晴景と景虎、そこに兄弟としての親しい関係を求めるのは無理があります。


 また為景が起こした「永正(えいしょう)の乱」の時、その当時の上田長尾家の当主は、政景の父である長尾房長(ながおふさなが)でした。つまり晴景と景虎の背後には上田長尾家と古志長尾家の争いが大きく影響していたのでしょう。


 そうみると、晴景が1551年に同母妹である仙桃院との婚約をを進めたのも、別の意味が見えてきます。この当時の2人の年齢を考えると、政景25歳で仙桃院が1528年生まれとあるので、23歳となります。仙桃院はこの時代ではかなり晩婚と考えられますし、仙桃院は正室とされていますが、上田長尾家の長である政景が25歳まで未婚というのも不自然です。晴景と上田長尾家が上条上杉家との血縁の薄くなることを案じて婚姻を結んだと考えるのもあり得ない話ではありません。実際晴景の母の実家である上条上杉家は父為景の時代に徹底的に叩かれ没落しています。

 

 そして、関東管領上杉憲政(1523-1579)保護し、1561年の関東遠征後に憲政の正式な養子となり、政の字を偏諱として与えられ、上杉政虎となった時も、政虎以外に上杉の姓を名乗ったのは養子の景勝、景虎以外では古志長尾家の景信(?-1578)それとその息子の景満(かげみつ)(生没年不詳)の3人だけで上田長尾家は上杉を名乗ることが許されなかったことからも対立関係が見て取れます。

 

 仙桃院は政景と2男2女をもうけたとありその一人が「長尾顕景(ながおあきかげ)、後の上杉景勝(1556-1624)」です。長尾政景の長子は義景といい、10歳になるまでに早逝されたといわれていますが、この子が仙桃院との子供であれば顕景の1556年生まれという事実と矛盾します。理由はその当時の書簡に残っている義景の名前と日付これが顕景の年齢と合わないのです。ということは仙桃院の前に別の正妻がいたとなります。

 

 なぜなら義景という名前は足利将軍家からそれも通字をもらっているのです。朝倉義景や今川義元、武田義信や最上義光のような、大名やその嫡子に与えられるような偏諱です。守護代のそのまた家臣である上田長尾家が勝手に使っていい文字ではありません。

 朝倉氏との関係を調べると越後上杉氏(長尾氏)とは何代にもわたって協力関係あったとされ、謙信の養子山浦景国の妻は朝倉義景の娘とされています。長尾義景と朝倉義景どちらも景の文字を通字に持つ一族としても、同じ名前を同時期に別家で付けるものでしょうか、それも片方は当主であり、片方は重臣の子供にです。

 

 次に2男2女をもうけたとありますが、様々調べていくと長尾政景の子供に義景、顕景の他にもう一人いたのではないかと思われる人物が現れます。長尾時宗(丸)という人物です。

 




どうも上田長尾家には、現在は残っていないブラックボックスになっている歴史があるようです。

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