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負けヒロイン

負けヒロイン無常

 僕には好きな人がいる。ちょっとお淑やかにいうとお慕い申し上げたい人がいる。お嬢様アピールは気になるあの子を落とす最大の武器だと、書いてあったからね、即時実践、大切だろう。そういう道理はある。僕の辞典には書いてある。本当に書いてあるんだ。

 さて、道理とは最強の矛であり、最強の盾である、とは力こそパワーでお馴染みの、ニュートン氏の言葉ではあるが僕はそれをモットーに生きている。同氏は、僕の良き先生だ。


 彼女を愛しているのは道理だ。それでいて彼女が別の人を好きになるのも道理だ。そんな摂理だ。

 摂理を蹴って道理を壊す、そんな存在になりたいとかつての若く感性が豊かな僕は考えていた。懐かしい。今も若いけれども。


 ムリだと気付いて泣きじゃくる日々もあったね。


 道理に守られ道理で守り道理を守り続ける。


 道理の守護者としてその恩恵を近くで浴び続ける。


 賢人の生き方だ。生活の知恵とも言える。


 何が間違っているのか考えるとどうしようもない。


 彼女は僕には振り向かないそれが道理だ。しょうがない。


 愛でならそこら辺のやつに負けてやるつもりはない。

 というか、負けることなど不可能だろう。

 幼少から愛していたんだ。年月でも勝てる。重さでも勝てる。愛の大きさなんて意味が無いのは理解しているけど。


 切ないな。

 こんな要らない致命的なバグが発生するなんて、カスタマーセンターに怒りのお手紙をしたためなきゃいけない。存在するのであればだけどね。


 この世は無常とはかつての葛飾北斎の作品の一部だったと記憶しているのだが、実際はどうなんだろう。


 無常は無が常という意味だが、よく分からない。


 さて、低酸素系というレッテルを貼られている僕だが、クールビューティで金玉蹴られたいと呼ばれていた時期がありました。女の子だからってそういうのわかんない訳じゃないんだ。

本当にオトコたちのレベルの低さに吐きました。僕は当然、有言実行、質実剛健?単純爽快をモットーに生きているからね。その通りに蹴り砕いてやりました。

罪の告白?。罰がないから、おそらくあれは罪ではないだろう。明快な僕の方程式だ。

 罪と罰とはいうけれど僕と彼女の関係も前世でやらかした罪の罰かもしれないなと、スピリチュアルに浸ってみる。火星人だ。


 そんな風にいつも通り適当なことを考えていると、トタタと、階段を降りてくる可愛らしい足音がする。可愛い。

 寝坊した彼女を待つのに、毎日リビングまで上がらせてもらっているのだ。幼馴染特権で合法だ。目をウルウルさせた僕のプリンセスに決め台詞をいつも通りに言おう。


「あっ!今日も来てたんだねぇおはよう」


 前言撤回、プリンセスのパパだった。僕の義父になる人だ。


「おはようございます。毎日お邪魔して申し訳ありません」


 僕ほよく出来る人間だからね!しっかり挨拶ができるのだ!

 良き妻良き夫、どちらでも出来るように才色兼備兼ね備えるのが昨今の常道であるのだ。まあポイント稼ぎは忘れないってだけなんだけどね。本当は。


「全然邪魔じゃないよ〜娘もそろそろ起きると思うけど?

  起こしてこようか?部屋の鍵閉められてるけど」


 刹那的にこれが無常だと理解した。空笑いしかできない。

 無常の匂いがかなり強い。


「んじゃあ私は行くからね。娘を頼んだよ」


「いってらっしゃいませ。お気をつけてください」


 出来る令嬢然な感じを醸し出す。洗練されたボルドーな雰囲気を味わっていただけただろうか。朝からこんなお嬢様ムーブは思わず酔ってしまって今日一日は仕事がまともに出来なくなってしまうのが本当に申し訳ない。


 さて、プリンセスは何処?そろそろ遅刻するギリギリラインを走り高跳びよろしく軽く上回るのではないだろうか。仏の顔も三度とはいうが我らが担任はまず仏ではなく鬼だし、今回で四度目になってしまう。絶体絶命とはこのことだろうか。毎度怒られているとは言えど、僕は繊細だから真っ正面に受け止めてしまう。王子様然とした行動を狙っているのだけれど、動揺してしまってアタフタと情けなくなってしまう。恥ずかしい。


 起こしに行くのは刺激が強い。恥ずかしいことだらけだが、実は僕は中学男子並みの性欲がある。寂しいバニーちゃんだ。だから、眠りこけている彼女を起こすのは語彙が貧相だがヤバイ

 蜜であり毒だ。関係を壊すことは望んでいないのだ。ブロークンフレンドシップ、ブロークンハートになるのだ。つまりはすなわち死だ。起こしに行けない。彼女が勝手に起きるのを待つのみ。座して死を待つより、出て活路を見出すなんてチャレンジ精神は持ち合わせていない。臆病なバニーちゃんなのだ。


 この気持ち、パパさんと一緒なのだろうか。


 この感情、パパさんも分かるのだろうか。


 無常だ。




 そうして彼女は結局10時ぐらいに起きた。流石に怒られることになったが、遅すぎて逆にそこまででもなかった。結果オーライといえばそうかもしれないが、怒られている間、僕は足がガクガク震えてしまっていた。弱虫バニーちゃんだから致し方無し。


 無常。

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