塔
掲載日:2017/12/09
塔があった。
何もない場所に、塔が佇んでいた。
他には全て何もなく、誰もいなかった。
かつて、その塔は力の証だっだ。
塔は、そこにあるだけで全てに匹敵する力を持っていた。破壊の象徴であり、その塔を使えば、全てを破壊できた。
その塔は、一人の女によって作られた。
その女は、塔によって、無数の栄誉と全てを支配する力を手に入れた。
やがて、数十、数百という人の集まりが、その塔を欲した。
多くの人が「大丈夫、あの塔があれば問題ない」と思うようになっていた。
女はありとあらゆる場所に行き、そのすべてをもって塔を作り続けた。所有する力と栄誉の全てには、見向きもしなかった。
しかし、ヒトの欲は女を蝕んだ。彼らは女に全知全能、全てを求めた。人々は破壊を創造する女の姿に、神の姿を重ね合わせた。
そして、女の奪い合いが始まった。
多くの人が「大丈夫、あの女がいれば問題ない」と思うようになっていた。
女は絶望した。
そして、女は全てを破壊した。
塔は哀しい。最後の破壊に使われなかったから。女が、自分の作り上げたものに、ヒトではないものに、慈悲をかけてしまったから。象徴として、その塔はあり続ける。
塔がある。




