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異世界でだって変われない!  作者: ダメダメ人間
3/3

2

「まだめまいがする」


 この一言に誰も心配はしてくれなかった。それどころか女子2人はそのまま目覚めなくてもよかったのにと言わんばかりの目でこちらを見てきた。何が問題だったんだろう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー



 二度目の気絶から起きた僕の口の中は土の味がした。僕は土葬される寸前だった。みんな素手で掘りまくっている。熱心だね。あれほど手荒れを気にしていたイオも素手で掘っている。


 一応惜しんでくれてるのかな?と変な関心をしたのもつかの間、時折指先を見て「手のひらが、、、爪が、、、」と泣きそうなのを見て、僕も泣きたくなった。


 今度はみんなを驚かせないように、特にトーカを刺激しないように、起きる事にした。トーカがめちゃくちゃお化け苦手なのを完全にわすれていたから殴られてしまったのだ。死んだと思った人が目の前で生き返ったらそりゃホラーだよね。死んでないけど。気をつけなければ。


「喉が乾いたわ。少し川に行ってくる」


 トーカがその場を離れた隙に行動をおこす。普通に話しかけてもまたお化けだ何だと驚かれ騒ぎを聞きつけたトーカにのされてしまうので、他の二人には好物で攻略する。


 まずクラトに話しかける。また生き返ったと思われ、声をあげそうになった口を手で塞ぐ。そして後ろに回りこみ耳元で僕が最近食べた学食のジューシーなとんかつ定食の食レポを囁いた。


「とんかつの切り口から肉汁がしたたる。黄金の雨垂れ。できたての証」

「はうあ」


 ぎゅるるーーと予想通りクラトの腹が鳴った。食に関してのクラトはもの凄い。


「その上からドロドロの黒いソースをどばーー」

「むほ」


 少しクラトが痩せたような。クラトは昔から腹が鳴る瞬間から痩せ始めるように感じる。


「サクッ。サクッ。サクッ。口に入れるとソースと肉汁が衣の音をバックに溶け合う」

「ごちそうだーーーーー!」


 よだれだらだらのクラトはそのまま食欲の世界に旅立った。気絶のようなものだが、僕の激痛での気絶より全然いいだろ。幸せ者め!

 一連の行動はほんの数秒。次はそれを見ていてあっけにとられているイオへの対処。彼女の手をつかむ。


「え!ちょっ!何!」


 声をあげるイオを引っ張り走り出す。。目指すはある場所。探索で見つけていた場所だ。トーカに報告した時はあまり関心をもたれなくて意味はなかったなと思ったけど、今この僕の危機的状況ではイオを誤魔化す強力なカードになりうる。トーカの悪霊退散パンチはもうくらいたくない!そして気絶でもしたらまた土葬される!


「いいからついてきて!」


 手が離れそうになったので、ギュッと、強く、握り直す。


「告白もまだなのに、こんなに強く手を握るなんて、、、」


 イオがなんかいった。顔は上気している。バカたれ!僕の絶体絶命の時に乙女モードになるな!


 僕は無視して走り続け、しばらくすると目的地についた。


「すごい。綺麗」


 イオはそう呟いた。

 一面に広がるのは黄色い花だ。まるで絨毯だと言いたくなる。様々な蝶々や蜂が花の蜜を吸い、そして奥では大きな角を持つシカが草をはんでいた。僕もこの景色を見た時少し驚いた。そして特にイオが好きそうだなと思った。


「凄いフォトジェニックでしょ!」

「うん!」


 予想通り僕の生き返り(勘違い)なんて忘れて、スマホで写真を撮りまくっている。これで叫ばれてトーカを呼ばれる最悪の事態は避けられた。後は2人に頼んでトーカを説得してもらうだけだ。安心安心。


「凄い凄い!」


 しかし、小さな子供のようにはしゃぐ姿を見ていると、喜ばせる事が目的ではなかったけど、こちらも嬉しくなってしまう。安全が確保され気も緩んできた。


「ねぇタク!写真撮って!」


 無邪気に差し出されたスマホ。僕は快諾し一枚写真を撮る。続けて、2人で撮ることになった。僕は最初恥ずかしくて抵抗したんだけど、乙女のパワーには勝てなかった。


「女の子を素敵な場所につれてきたんだから、最後まで責任とれ!」と強引にツーショット写真を撮らされた。自撮り棒もなく、狭い撮影範囲に収まるように肩を寄せ合って撮る写真。うわ!いい匂いがする!


 ここまで女の子に急接近したのは初めてですごく体が熱くなってきた。


「うん!よく撮れてる!流石あたし!」

 

 イオは写真を確認し、保存したようだ。そして嬉しそうに見せてきた記念すべき初の女子との2ショット写真には女子用制服を着た変態の僕が写っていた。


 自分の服を確認。

 胸元にリボン。ひらひらしてる。

 スカートも履いてる。下から入りこむ風の初体験。


「なんで僕女子の制服着てる!?」


 叫んですぐに気付いた。

 制服の腹部の穴から見えるかわいいおへそ

 イオの学ラン姿。


「勝手に服交換したな!」

「今気付いたの?」


 悪びれた様子がないイオに問いただす。


「なんで交換したの!」

「制服とけちゃったしいいかなって」

「イオ、僕の事死んでたと思ってたよね!だとしたら死体あさりしたって事だよ!」

「羅生門で生きるためなら仕方ないって学んだ」


 イオにこんな狂った倫理を植えつけたのは誰だ!それは芥川龍之介だ!そして転移前の2時限目の現国だ!


「僕の制服返せ!」


 こんな恰好じゃ恥ずかしくて仕方ない。誰かに見られでもしたら僕は女装趣味の変態だ。

 イオに詰め寄る。


「脱げ!」

「淑女に服を脱げだなんて!タクは変態に成り下がったのね!」

「このままでも充分変態なんだよ!下がってない!変態の種類が横にずれただけ!」


 僕の必死の嘆きにも関わらず、彼女は一向に譲る気はないらしい。悪いけど力づくでも取り戻してやる!そう思いイオの服に手をかけた瞬間僕の体は吹き飛んだ。


「ぶほ」

「何やってんのよこのド変態」 


 女子制服姿の男が女の子の服をはごうとにじりよる姿はとてつもなく犯罪の匂いを放ったようだ。

 かけつけたトーカは迷い無くドロップキック。悪霊退散パンチは避けれたけど、変態成敗キックをくらったぼくの嘆願は却下され女子制服姿のままに。


 そして冒頭につながる。

 転移場所から見えていた街に4人で話を聞きに行くということになり僕らは移動中。異世界住人との初の接触が刻々と近づく。初対面は第一印象が大事だけど、僕はそれを捨てるほかないな!女子制服姿なんだもの!

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