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僕らは突然見知らぬ地にワープした。
ワープなんて我ながらおかしい表現だけど、僕の知能を疑わないでほしい。そうとしかいえないんだ。
だって僕らは校舎裏の日当たりのいいベンチで昼食をとっていただけで、別に森林浴していたわけじゃない。
まばたきする一瞬でこの緑の景色に変わってたんだ。
僕含めて4人で食べていたんだけど、その4人で状況確認。見たことのない植物やちらほら見える奇怪な動物達、今いる場所から下った所に見える村とその住民達。
僕は呟いた。
「異世界にとばされた」
その一言でみんな震え始め、怯えがでてきてざわつく。
「みんな冷静に」
一人冷静な女の子トーカはみんなを落ち着かせるようとする。
「こんな状況で冷静でいられるわけない!」
僕が焦りを口にすると、彼女は傍らの岩を裏拳で叩き割った。
「落ち着いてくれないとタクはこうなる」
「みんな落ち着け!」
トーカは見事に僕たちに冷静さを取り戻させた。そして改めて4人で周囲を確認、それぞれ近場をウロウロ。
「これ食べれるかな?」
そう聞いてきたのはいつでも空腹のクラト。
手には絶対に食べちゃいけないような色のキノコが一つ。
見ればわかるでしょ。
「いただきます」
クラトは崩れ落ちた。
「何で食べる!?見て分からなかったの!?」
「う、、死、ぬ、、」
「吐いて!ほらはやく!」
倒れたクラトを揺さぶりまくる。死んでも僕のせいじゃないよね!?自分の手を突っ込ませやっとの思いで吐かせると、そのまま眠ってしまった。迷惑なやつ。
僕が再度周囲を探索していると
プルルッ
ゲル状の塊が現れた。
出た。
これはRPGの定番スライムとかいうモンスターだろう。驚きと同時にやっぱり異世界にきたという予想が当たり妙な安心感を覚える。そして出たからにはやっぱり問題は、、、
「攻撃してくるよね」
スライムが敵は常識である。さしづめゲームで冒険者の初戦闘の様だ。僕は少しワクワクを感じ、落ちていた木の棒を装備。さぁバトルだ。経験値稼ぎ経験値稼ぎと張り切っていると
「カワイイ!」
横からキャッキャッとはしゃぎながらイオが割り込んできた。そのままスライムをなで始める。
「イオそれ敵キャラだぞ」
僕が忠告すると
「はぁ!意味わかんないんだけど!こんなカワイイのが敵なわけないし!」と言い全くきこうとしない。
それどころか
「ていうかタク!この子倒す気!」
僕が構える木の棒を見て、信じられないというような非難の目を向けてきた。そしてスライムを守るように抱きしめる。
「邪魔だよ!」
「サイテー!」
「どけって!」
「嫌!」
「お姉ちゃんどいて!そいつ殺せない!」
「怖い!」
このままでは貴重な経験値がもらえない!レベル1のままだ!
イオにいくら言っても聞かないのでわき腹をつついたり、生えていた草をむしり首もとで揺らしてくすぐったりしてみたが、エロく悶えるだけで一向に離さない。たまらん。
そんな不毛なやりとりを数分続けた。が、、、
「キャーー」
イオの悲鳴とスライムが投げ捨てられたことにより終わりを迎えた。さすが初めての敵モンスター。投げ捨てられただけでやられてしまった。経験値がもったいない!だけど
「何でスライム離したの?」
あんなに必死だったのに。
尻餅をついているイオを見やると
「せ、制服が、、、」
イオの制服の、スライムを抱いていた部分が、無くなっていた。キュートなおへそが丸見えだ!
「あぁ溶かされちゃったのね」
どうやらあのスライムの体液は物を溶かすような性質だったらしい。とすると
「撫でてたから手も荒れてるんじゃない?」
「ヤダホント!」
イオはすぐさまハンドクリームを塗る。さすが女子力高め。
そして何故か気づいて無いようなので肩を叩いて、のびているスライムの方を向かせてあげる。
「イオ。君が倒した」
「イヤーーーー!」
事実を伝えるとイオは大泣きし始めた。それでもハンドクリームを塗る手は休まない。彼女の女子力は無意識のレベルになっている!
面白いので丸出しのおへそを木の棒でつつく。彼女の行動に悶えるが追加。ぐへへ。エロい。たまらん。
女の子が泣き悶え塗る様は見ていて飽きない。
イオをいじっていると頭をど突かれた。
「痛い!」
振り向くとトーカが立っていた。
「女子にいたずらはやめな。遊んでるように見えたけど何か成果はあったの?」
「僕らがいるのは異世界なのかも」
「そんなことわかってるのよ!もっと何かこう核心をつくような、、、」
そう言って彼女は言いよどむ。最初から冷静だった彼女とはいえ、やっぱりこんな非常識な事にあまり考えが追いつかないらしい。なにより彼女は脳筋の気がある。
僕は彼女を安心させるため近くにひらけた場所があることや遭遇したスライムの事、イオをくすぐった反応、がまんしてるのに出ちゃう声のエロさ、キュートなおへそなど、この世界の根幹に関わる情報を伝えた。
伝えた結果、トーカからは鋭い腹パン、起きたばかりのクラトに怪しいキノコを口に詰め込まれ、僕は深い眠りに落ちた。
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僕の意識が戻ったとき他3人は近くでこの状況について話し込んでいた。まだまったく情報の収集ができていない様子だ。僕が意識を取り戻した事にも気づいていない。
トーカがまとめ役として一言。
「スマホは圏外なのねイオ」
「うん。トーちゃんに言われたように色々試したけどつながらなかった」
「クラトは何かある?」
「ごめん。見回ったけどこっちも重要な物は何も見つけられなかった」
「いやいいわ。こんな状況だもの。仕方ないわ」
僕が倒れてどれくらいたったか分からないけどある程度ここらの探索は終えたようだ。声だけで落胆が感じ取れる。だがトーカは言葉を継ぐ。
「問題は山積みだけど、こういう時こそ力を合わせて頑張りましょう!」
「「おー」」
三人の士気は高まった。いい雰囲気だ。僕も真面目に協力しよう。
「そうでないと」
ん?
「死んだタクに申し訳ないわ。」
死んでないよ。
「頭の良くないあたしでも分かってる。タクの犠牲は忘れない」
頭の良くないイオさん。死んでないよ。
「タク。キノコ供えておいたから、あの世でいっぱい食べるんだぞ」
死んでないよ。そしてキノコを供えるな。あの世でも苦しめってか。
僕がガバッと起きあがると、みんな腰を抜かした。
そしてトーカの
「お化け怖い」
この一言とともに放たれた反射的な一撃でまた気絶してしまった。