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smile hamily  作者:
2/2

テント暮らし

「ふうーー、疲れた・・・

 宿題しなきゃ・・・」


大会社の掃除のアルバイトを終えて、テントに戻る頃にはいつもくたくた。


でも勉強はちゃんとして、ちゃんと進学するのが今の目標。


お母さんがいつも「ちゃんと大学行って、人生楽しみなさい。」って言ってたから。


お母さんとの約束は守りたい。


重たいまぶたを持ち上げて、手作りのダンボール机の前に座る。


教科書とワークを広げて勉強を始めたそのとき・・・


「ねぇねぇ、こんなとこにテントがあるよ!!

 こんなとこでキャンプかなー??」


「中に人がいるかもしれないだろ。

 大声出すなよ。」


外で誰かの話し声がした。


しかも私のテントのことを話してる。


「どうしよう・・・」


気持ちだけが焦って、逃げ道はない。


少しだけ入り口を開けて、外をのぞいてみる。


「っきゃーーーーーーーーー!!!!!!」


外をのぞいた私の顔の目の前に人の顔がっ・・・


外の人も、中をのぞこうとしていたらしい。


「こら、おまえ何のぞいてんの。

 しかも女の子じゃん。」


また違う人がやってくる。


「え・・・・」


その人たちの顔を見て、私は固まってしまった。


「あ、小柴さんじゃん!!」


「前田くん・・・」


だって目の前にいるのは学園の王子の一人の春野先輩で、他の四人の王子もそろっていたから。


「ん?前ちょの知り合い??」


う・・・高野くんが私の顔を覗き込んでくる。


思わず顔をふせる。


「僕と同じクラスの小柴 悠香さんだよ。」


「前ちょと同じクラスってことは・・・俺と学年一緒!?

 2年の女の子の顔はだいたいチェックしてあるはずなんだけど・・・」


すみません。私が地味で目立たないんです。


「小柴さん、僕たち見て騒いでる子たちとは違うから、チェックし忘れたんじゃない?」


前田くんが助け船を出してくれる。


「すみません・・・

 男の人が苦手なんです・・・」


「珍しい先輩ですねー。

 顔はかわいいのに。」


高野くんの顔が目の前に・・・っ


「祐、俊、悠香ちゃんをいじりすぎ。

 ごめんね。大丈夫??」


三浦先輩が暴走しかけてた二人を止めた。


「でも・・・なんでこんなとこでテント張ってるの??」


「えっと・・・

 両親がいなくて、親戚も知らないので・・・」


「こんなとこに女の子一人じゃ危ないよ??」


「だ、大丈夫です!!

 今まで暮らしてこれましたし!」


「でも・・・」


三浦先輩はどうも心配してくださってるみたい。


「翼ー、腹減った。」


もう飽きたのか、高野くんが地べたに座っている。


「はあ・・・ほんとにあいつは・・・

 ごめんね、俊腹減ると機嫌悪くなるから、とりあえず帰るね。

 ちゃんと気をつけるんだよ?」


三浦先輩ってこんな優しかったんだ。


「はい、ありがとうございます。」


「ほら、俊、飯作るから帰るぞ。」


「はーい。」


あの五人の中では、三浦先輩の言葉って絶対なんだな。



私は五人の帰っていく背中を見送って、テントの入り口をふさいだ。




「小柴さん!!」


しばらくすると、また外から声が聞こえた。


「・・・前田くん?」


外をのぞくと、息をきらした前田くんが立っている。


「もし何かあったら連絡して?

 これ僕の番号だから。」


そう言って、一枚の紙を渡された。


奈津いわく、王子はケータイ持ってなかったんじゃなかったっけ。


「ケータイ・・・持ってるんですか?」


「うん。

 でもケータイの番号教えちゃうと、いろいろと大変だから、持ってないってことになってるんだ。」


そっか。

女の子たちがいっぱい電話しちゃいそうだもんね。


でも、そんなレアなもの、私がもらっていいのかな。


「だから、小柴さんもこのことは秘密ね?」


前田くんが私の手に紙を握らせた。


「それじゃ、みんな待たせてるから!

 おやすみ!」


いつものさわやかスマイルをつくって、再び闇の中に消えていった。


紙をみると、電話番号とメールアドレス。

その横に、いつでも連絡してね~と走り書きで書いてある。


きっと連絡なんてできないだろうな、と思いながらも、一応その紙を制服のポケットの中にしまった。






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