没個性王国
国民から個性を奪った国がある。
名前が消され、性格も矯正され、能力も均等に均された。
だが、俺は他の国民の奴らとは違う。個性がちゃんとあるのだ。
性格を矯正されたふりをするのはちょろいものだった。
なんたって没個性に矯正していようとしている奴も没個性に矯正されているのだ。
そんなもの、張りぼてと変わらない。騙すのは朝飯前だった。
こうして俺はこの国で唯一、個性を奪われずに済んだ。
『唯一』というのは気分がいい。
国民全員が個性を持つ俺のことを羨むだろう・・・最も、羨める程の個性もないか。
俺は早速、個性を出す為に外出を始めた。
今の国民の服装は、黒の服と黒のズボンで統一されている。
俺も当然黒ずくめになって、街中を歩く。
人通りの激しい噴水広場前で、俺は立ち止まる。
「お前らに『個性』っていうのを拝ませてやるよ!!」
出せるだけの声の大きさで叫んで、周囲の関心を惹く。
そして俺は黒の服を脱ぎ、それを裏返した。
そうしたらあら驚き。白の服に早変わり。そう、俺の服はリバーシブルなんだよ!!
没個性のお前らには、喉から手が出る程欲しい一品だろ?
そんなことを感じるほどの個性もないだろうがな。
自慢げに誇る俺に、人ごみの中の一人が言い放った。
「おい、あそこに犯罪者がいるぞ」
黒ずくめの警察に連行された。
『個性を出す事』は、窃盗や殺人よりも遥かに重罪らしい。
なんたって、数千年の王国の歴史の中で、それをしでかしたのは俺一人しかいないのだから。
こうして俺の個性は、
犯罪史上類を見ない(そしてこれからも見ることはない)事件となった。
・・・まあ、羨まれることはないだろうが。




