第8話 ロン毛
AM 11:30
その日は、一日中授業が無いってんだから、皆浮かれまくっていた。
朝っぱらから南国ビーチへ出かけていた連中や。
朝っぱらから弁当食ってる連中や。
朝っぱらから喧嘩を始めた連中もいた。
「はぁ? テメェ、それはこの前返しただろ?」
あら。こちらでも早速始まったみたい。
「嘘つくなよボケ! 俺は返してもらった記憶なんて無い!」
物の貸し借りは、トラブルの元になるからやめなさいって、いつも言ってるのにねぇ…。
「ふざけんなよ? 返したっつったら返したんだよ!」
「返されてないって言ってんだろ!」
―バシッ―
「やりやがったな!」
おっと、取っ組み合い始めちゃったよ…。
てかさ、そのくらいで怒るなよなぁ。
全く。今時の子は血の気が多くて困るわ。
「お前も十分、今時の子だろうが。」
あっ、バレた?
つーか幸平君。
ボーっと見てないで、止めなさいよ。この二人。
「やだよ。」
なんでさー? 教室めちゃくちゃになっちゃうじゃん。
「めんどくセー。」
……。
アンタそれでも男の子?
ちゃんと玉ついてんの?
「……。」
…しまった。つい。
いやね、二人ともこのままじゃ怪我しちゃうでしょ。
「いつもの事じゃん。」
そんなにしょっちゅう喧嘩してるんだ。あの二人…。
(えっ? 何で回想シーンに、ナレーターが出てくるのかって?
まぁ、そんな細かいところ気にしないでよ。
この方が説明しやすいのさ。)
もう、ずべこべ言わず止めて来い!
「しゃーねーな」
ふぅ。これで何とかなるかな。
「おい! その辺でやめとけって。」
そうだよ! やめなさい!
「は? 何だよ。邪魔すんじゃねぇ!」
「つーかさ。幸平にも、あれ貸してたたよな?」
えっ?
「……そうだっけ?」
ちょっと! 何よ、もう!
アンタも何か借りててたの!?
「えっ、いや、あれもう返したじゃん?」
………。
「だから。返されてねぇって言ってんだろ!」
―ゲシッ―
(何よ、―ゲシッ―って…)
「ってーな! そんくらいで怒ってんじゃねーよ!」
あーあ。
火に油注いじゃったみたいだね。
「そのくらいって何だ! あれスッゲー高いんだぞ!」
そんなの人に貸すなよな。
「だから、ちゃんと金払ったじゃん!」
金取ってたのかい…。
―ゲシッ―
―ブシッ―
「痛い…痛いって。」
ん?
あっ! ロン毛!
ちょっと2人とも! 足! 足元!
ロン毛踏んでる! 最初の不良が一人だけ泣いてる!
聞いてんの? 幸平とリーゼント君!
「ふざけんな!」
「自分の毛の世話も出来ないような、間抜けは知らねー!」
…可哀想なロン毛君。
それ多分抜けるよ?
ただでさえ、そのヘアスタイルで痛んでるのに。
それ以上引っ張ったら。
間違えなく。
寿命が来る前に、毛根が力尽きちゃうよ。
可哀想に…。