第5話 バナナ
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そんな訳で、またまたやって参りました。
屋上でっす!
カモメが飛んでおりまっす!
…つーか、校長室を屋上に造ってんじゃないわよ!
何? スウィートルームみたいな気分な訳?
「校長曰く、ここに校長室があることで、よからぬ事を考える生徒が減るんだと。」
なーるほど。ま、確かに。
目の前に南国ビーチと、海の家みたいな校長室があったら、飛び降りる気も失せるわな。
って、校長!
絶対それだけじゃないでしょ! 絶対私情が入ってるでしょ!
「いいじゃないですか。ここは快適ですよ〜。」
ふ〜ん。冷蔵庫にクーラーにシャワールーム完備ですか。
もう、完ッ璧、リゾート気分じゃん?
いーなー。学校でリゾートなんてさ。
「だから、学食造れないんだ…。」
そーよ! 美紀ちゃん怒ると恐いんだからね!
反省なさい! 校長先生。
「それより校長。」
って、美紀ちゃん。
こんなに長いツッコミさせた後で、何事も無かったかのように話し始めないでくれる?
「何ですか? 米坂君。」
もういいわ…。あたしゃ疲れちまったよ。
「『何ですか』って…。私は校長に呼ばれて、ここに来たんですよ?」
その通りです。自分で呼んどいて、『何ですか?』 は無いんじゃない?
「そーでした、そうでした。では、ちょっとこちらへ。」
あ、人に聞かれちゃまずい話? でもナレーターには聞こえちゃうんだな〜。
「今日の泳ぎ、見せてもらいましたよ。やはり早いですね〜。流石、県大会1位の腕前。」
「どうも。」
あれ、美紀ちゃんあんま嬉しそうじゃないね。
「しかし、もう大会には…。」
「はい。どうしても、大会とかになると…。」
「そうですか…。残念です。」
そうそう。
美紀ちゃんは、ある事件がきっかけで、大会じゃ泳げなくなってしまったのです。
トラウマってやつねぇ…。
校長も惜しい事したわね。
美紀ちゃんが大会に出たら、一発で優勝できちゃうよ。
そしたら学校の知名度も上がって、色んなとこからお金がガッポリ入ってくるのに。
「ですねぇ…そしたら、校長室にサウナでもつけようかと思っていたのに。」
うんうん。…って、おい。
これ以上校長室を、どうしようもなくするんじゃありません!
「よぉ。終わった?」
「待っててくれたの? ごめんね。」
そうよ〜。幸平君ったら屋上の階段の所でずっと待ってたんだから。
「バナナ、食う?」
「えっ、どこから…。」
「ビーチに木があるんだよ。」
「へ〜。ありがとう。」
おいおいおい。学校の屋上でバナナとか採れちゃ、まずいんじゃない? やっぱ。
「で、何の話だった?」
「ちょっとね…。」
そりゃ、言えないよね…。
「水泳の事?」
「えっ、何で…。」
そうだよ、何で知ってんの!? まさかアンタ、盗み聞きしてたんじゃ…
「これでも、色々と情報は入って来るんだよ。」
…恐ろしや。高校生の情報網。侮れませんな。
「じゃ、全部分かってたんだ…?」
「まーな。 まだ、傷痛む?」
傷ってのは、手首の傷の事かな?
「ううん。だいぶ良くなったから。」
「そうか…。」
………。
っと、ここで。
今回は、何か謎を残したまま終了。
気になる人も、ちょっと待っててね。
明日の一時限目は…とりあえず自習!