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  作者: 二葉 サナエ
3/20

第2話 お弁当

AM 9:00

「…この公式によって、Xの値が割り出せるため…」

ただ今数学の授業中。

担当は、大学卒業間もない新任教師。



朝のホームルーム後、案の定、美紀には質問の波が押し寄せていた。その為、幸平はゆっくり窓の外を眺める事も出来ず、席を外さざるをえなかった。

が、さすがに授業が始まると、それも一旦は収まり、静かになった。



そっと、隣の席を盗み見る。

日に焼けてない白い肌と、肩の辺りまでのストレートヘア。

その視線は真っ直ぐにノートへと落とされ、時々、落ちてきた髪を耳に掛けながら、黒板をノートに書き写している。

(指、細いなー。…ん?)

幸平の目が、ある地点で止まる。彼女の手首に見つけた、薄い跡。

(何かで切ったのか?)

なんて考えていると、視線に気づいた彼女と、思いっきし目が合ってしまった。

「…?」

不思議そうに見つめられる。

(何?)

とでも言っているようだ。

(ワリィ)

手を顔の前に持ってきて、心の中で謝る。何で謝ったかは、自分でも分からない。

(いえ…)

すると彼女も、ジェスチャーで答えてくれた。




PM 0:20

午前の授業が終わり、皆それぞれ昼食をとる為に、移動し始める。

幸平も、席を立とうとしたときだった。

ふと、自分の隣の席に目がいく。

今日転校してきたその子は、困り顔でそこにいた。

「どうした?」

何となく、尋ねてみる。

「えっと…。ここってお弁当なんだね。」

「そーだけど。まさか、弁当忘れた?」

「うん…」

その通りだと、俯き顔で肯定された。

「どーすっか〜。あっ、じゃあ売店でなんか買えば?」

「売店、あるの?」

「あぁ。北校舎にな。一緒に行く?」

なんて、言ったら、彼女がはっと顔を上げて、首を振った。

「えっ、でも悪い…。」

本当に申し訳なさそうな顔をする。

「良いって別に。どうせ俺も、今日はパンなんだ。」

「…ありがとう。」



売店までの道のり、彼らはたわいも無い話しをした。

幸平が、ここまで女子生徒に心を開くなんて、珍しい事だ。それも転校生に…。

「にしても、弁当忘れるとわな〜。お前んとこ、給食だったの?}

高校で給食って、どんな学校だよ。とでも言いたげな口調だ。

「ううん。ただ、いつも学食で食べてたから。」

何故か、彼女の声が少し暗くなった気がした。

「ふ〜ん。うち、学食ねーんだ。」

「何でだろう?」

「何でも、コスト削減のためとか…。うちの学校、変なところにばっか金かけたがるから、そういうとこにまで金が回んねーんだ。」

「へ〜」

妙に感心した感じ。

そんなこと言いながら、

(何で俺、こいつとこんな事話してんだろ?)

何て、ふと疑問に思ったりもする。が、自然と出てくる言葉を無理に留めるも面倒なので、幸平はそのまま放っておくことにした。



午後の授業は、日本史だっけ?


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