表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 二葉 サナエ
2/20

第1話 転校生

AM 7:30

グラウンドでは、運動部が朝の練習をしている。

それをフェンス越しに眺める、一人の男子生徒がいた。

並木幸平。とある市立高校の3年生。

サッカー部所属。幽霊部員。

部員である彼が何故、今ここにいるのか。

その理由を知っている者は、ほとんどいない。

今は時折、彼の瞳が複雑に光るだけ。



そうしている内に、チャイムが鳴った。

部員達が後片付けを始める。

「あれっ幸平じゃん!」

ボールを集めていた少年が、幸平に気づいて近寄ってきた。

「お前、今日もサボりかよ〜」

フェンス越しに、少年が睨みつけてくる。

「ワリィな。それより洋介(ようすけ)、レギュラー入りおめでとさん。」

「遅いっつの!俺がレギュラーなったの、もう2ヶ月前だぜ?」

「そうだっけ?」

曖昧な笑みで、洋介の視線を交わしながら、幸平も答えた。

「『そうだっけ?』 じゃあねーだろう! テメー、祝いにも来なかったじゃねーか!」

「いーじゃん。だから今言っただろ?『おめでとう』って。それに、お前がレギュラーになったなんて、嘘だとしか思えなかったんだよ。」

「んだと〜!?」

フェンスがなければ、今頃洋介は飛びかかっていただろう。

「ハハッ、冗談、冗談。うらやましいぜ。」

「何言ってんだよ!お前なんか、ちゃんと練習に出てさえすれば、即レギュラーもらえてじゃん!」

幸平の顔が、一瞬曇ったように見えた。

「だーかーらー、俺はもうサッカーやんねーの!」

「じゃ、なんで部活入ってんだよ?」

「……」

「おいっ」

「何でかなー…」

「? 変な奴…」

思案顔の幸平を残し、洋介はボールを持って駆けていった。




AM 8:20

朝のホームルームが始まった。

幸平のクラス、3年B組では、定年近い白髪頭の担任が、日程の説明をしているところ。

いつもと、なんら変わりの無い朝。見慣れた風景。

今日も変わらぬ一日が、始まるはずだった。



「それでは最後に、転校生を紹介する。」

ホームルームも終わりに近づいた頃、担任が唐突にこんな事を言い出した。

当然、クラスはざわめきだす。

「静かに。 では、入ってきてくれ。」

騒がしい生徒達をたしなめ、入り口の扉を開ける。

入ってきたのは、ストレートヘアの女生徒だった。

今度は一瞬にして、クラスが静まり返る。

「北海道から来た、米坂(よねさか)美紀(みき)さんだ。こんな中途半端な時期だが、親御さんの事情で、急遽こちらに引っ越してくる事になったらしい。」

喋りながら、黒板に今言った名前を書く。すると彼女も

「米坂です。よろしくお願いします。」

と言って、ぺこりと頭を下げた。黒髪が揺れる。

「席は…並木の隣が空いてるな。並木、まだ教科書とか届いてないんだ、見せてやってくれ。」

頬ずえを付き、今の今までボーっと窓の外を見ていた幸平は、自分の名前を呼ばれたことに気づくと、慌てて

「あっ、ハイ」

と生返事。

「皆も、来たばかりで分からないことも多いと思うから、フォローしてやってくれ。」

数人が、返事をする。

「では、これでホームルームを終わる。」

起立 気を付け 礼



 一時限目は、数学。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ