第17話 耳障り
ードガッー
「…ぎゃぁっ」
ーバキッー
「…お゛ぇっ」
次々と、いとも簡単に倒される男達。
相手がどんな武器を持って向かってきても、
5、6人が一斉に襲い掛かってきても、
幸平にとってそれは、何の支障にもならないとでも言うように、
彼を止める事は、誰にも出来ない。
「…っ! くっ来るなぁ!」
最後の最後。
1人だけ残ったのは、リーダーである筈の工藤。
…幸平たちの2コ先輩。
2年前、まだ幸平が1年だった頃に“あの事件”を仕組んだ男…
「…お前だけは、どんな事があったって、許す訳にはいかねぇんだよ。」
幸平の血走った目には、今目の前にいる真っ青な顔の工藤ではなく、
いつかの、あまりに憎らしい、薄汚い顔が映っていた。
『お前がもし、約束を破ったんなら、
俺等、サッカー部を潰しちゃうかもよ〜?』
工藤の言葉の後に続く、耳障りな笑い声。
…そうして人を嘲笑っていた、奴の側近達は、
今はもう、そこらに転がるだけの、ただのマネキンと化している。
…そして、散々自分を苦しめた張本人が…今、目の前にいる…
ーギリッー
「うっ…ぐぅ…」
幸平の両手が、工藤の喉元を締め上げていく。
工藤の足が、地面からゆっくりと離れるのに比例して、
顔の色が次第に小麦色から薄い紫へと、変貌していく。
「…やっ…めで、ぐれ…」
そう、必死に悲願する工藤の言葉など、まるで耳に届いてはいないかのように、
幸平の手に込める力は、全く衰えない。
彼の瞳に映る、黒い怨恨の炎が、
消えることなど、この先一度だってありはしないのだとでも言うように、
ただただ、
黒く黒く、燃え上がっていた。