第16話 低い声
ーバァンー
「なっ何だ!?」
蹴り破られ、力なく床に倒れた扉から、大量の埃が舞い上がる。
…その煙幕の向こうには、異様なオーラを発する、一つのシルエットが……
「…ぐわっ!」
入り口付近にいた奴が1人、煙の塊から飛び出てきた。
床に転げ、腹を抱えて呻いているところを見ると、何かで殴られたのかもしれない。
………そして、
静かに、けれど倉庫全体に響く低い声で、
シルエットが声を発した。
「お久しぶりですね…先輩方。」
ーコツコツー
単調な足音と共に、段々とその細部がハッキリし始める。
「…! テメーは…並木!」
「どうしてお前がここに…。」
背に、黒煙と鉄パイプを担ぐ少年はニコリともしないまま、
連中を睨みつけていた。
「…せっかく前回は見逃してあげたのに。」
ーカランッー
棒状の鉄の塊が、コンクリートとぶつかり、音を立てる。
「………流石に、自分のダチに手ぇ出されて黙ってられる程、俺も甘くはねぇんだよ!」
ーガンッー
一番、近くにいた男を、幸平はパイプで殴り倒した。
耳や鼻、口から血を噴き出し床に白目を剥いて倒れる仲間を凝視してから、
少し震える声で、工藤は叫んだ。
「……にしやがる!」
工藤に続き、回りの男達も、
それに共鳴するように、少々上ずった声で威嚇する…
…が、
そんなもの、幸平には何の効果もないようだった。
再び歩を進めると、
そこにいた小柄な男を、蹴り飛ばす。
…男が、5mも離れた場所の木箱へ激突した音が、
倉庫内へ響き渡った。
「テメーら、覚悟できてんだろうな?」
彼の声は、
最早高校生である事など微塵も感じさせないほど、
低く、そして負の感情の詰まったものになっていた。
「ざけんじゃねぇ!」