第13話 丘の上
AM 4:12
まだ、昼の主が昇りきらない頃。
人知らぬ丘の上。
一人佇む、人影があった。
「……っ…」
その両の目から、大きな雫をいくつも落としながら。
手に握った何かに、まるで語りかけるように。
かすれた声で呟く。
「…ごめんね…っ…ごめん…なさい…」
何かを、慈しむのと。
それを、怖がるのと。
そして、ただ、哀しいのと。辛いのと。
こんなに沢山もの気持ちを、抱えきれないとでも言うように。
それでも。必死に、落とすまいとするように。
彼女は、それを胸に抱き、しゃがみこんだ。
「…ごめん…っ…」
そんな、彼女を慰めるかのように。
夜は、更けてゆく――――――………
AM 6:30
「おいっ早くしろ!」
「ちょっと待てって! まだこれが…」
「誰か来たらどうすんだよ!?」
「るせー! …よし。出来た。」
「行くぞ!」
………。
AM 8:45
今日は朝から何かが変だった。
教師達は落ち着きが無いし、
生徒達も、特に運動部は、しきりに内緒話をしている。
朝のホームルームも、通常なら終わっている時間だ。
「なぁ。あれホントかよ?」
「あぁ。マジらしいぜ?」
「何でも、朝練に来た2年が最初に見つけたらしいんだけど…」
こんな会話が、あちこちから聞こえる。
…つーか、話のポイントになると急にボリューム落とすから、結局何が何だか分からずじまいなんだよね〜。さっきから。
もー。むしゃくしゃする!
何この、一人だけ仲間はずれにされてるような孤独感!
っていうか、疎外感?
ま、どっちでもいいんだけどさ。そんなこと。
問題は、一体何があったのかってことよ。
早く答えを探さないと、私の制御マシーンがまた暴走するわ。
と、言う訳で。
やっぱりここは、頼れる幸平君だよね。
ね?
「………。」
…ちょっとぉ、聞いてんの?
「………。」
聞こえてないの?
「………。」
…むぅ〜。無視ですか。
ったく! あーもう!
制御マシンが赤信号になる〜!
「大丈夫ですよ。赤信号は止まれって意味ですから。」
だまれ校長!
お前のその肉体、主に頭部をレッドゾーンにしてやろうか?
「どうぞ? しかし、レッドゾーンと言うのは…」
―ベリッ―
むかむか…
ムッキー!
「落ち着けバカ」
うぅっ…
「コラ。お前ら席に着けー。」
………。
「これから、大事な話をする。静かに聞くように。」
以外にも、私を爆発の危機から救ってくれるのは、
いつもは頼りないじいちゃん先生だけみたいです。