第11話 ご自慢
AM 9:31
「は〜い、皆っさ〜ん! 今日も楽しく、英語のオベンキョいたしましょっ!」
は〜い。出ました〜。
本校ご自慢の英語教師、松野先生で〜す!
………。
…ったく。
どこがご自慢なんだか。
ただの馬鹿教師でしょうに。
「なんですって〜!?」
はいはい。スイマセン。
「あなたの謝り方には! 誠意が全く感じられませんわ!」
へいへい。ごめんあそばせ。
で、分かったから。
その、いちいち「!」つけて話すの止めてくんない?
うるさくって、仕方ないんですけど。
「なっなっなっなっなっなっなっな!」
あ〜。
『なんですって〜!?』って言いたいのに、口が回らないのね。
それはね、先生。
もう、お年なんですよ。
なのに無理して、膝上のピンクスカートなんか履いてくるから…。
「私は! まだまだ! わっわっわっわっ!」
『まだまだ若いわ!』って言いたいのですか〜?
「そうです! 私まだ40代ですのよ!?」
………。
全ッ然、お若くないと思いますけど〜?
しかも、ギリギリ40代じゃん? あなた。
あのね、オバさん。
世間の40代って言ったら。
もう結婚して、暖かい家庭を築いているとか、
会社でも独立させて、キャリアウーマンとしてバリバリ働いているとか、
そんな感じよ?
こ〜んな、どこぞの市立高校で、
ピンクのミニスカ履いて、息ゼエゼエさせてる人なんて、
そうそういないでしょうよ。
「なっ! あっあなた! なんてっことっを…」
ーバタンッー
………。
「バッカ! お前、オバさん気絶させてどうすんだよ。」
…ごめんしゃい、幸平殿。
まさかこの程度のことで、血圧が急上昇して、パニック起こすとは思わなかったもんだから。
つい、ホントの事を…。
「ま、仕方ないよね。」
美紀ちゃん…。
「私も、このスカートと化粧はやり過ぎだと思ってたもん。」
だよね〜?
「んなもん。皆思ってんだって。分かってて、言わないようにしてたの!」
なるほど。
暗黙の了解ってやつですか。
皆やさしいね〜。
「そっか。」
うんうん。
お年寄りは大事にしなきゃってね。
これからは、気を付けまーす。
「おっ、校長来てくれたみたいだぜ?」
「後はお任せしようよ。」
あいよ。
ってことで、校長。
松野先生の事、よろしくお願いしますね。
「お任せ下さい。では、先生、先生!」
「うっ…。こっ校長?」
おっ、さすが!
一発で先生が目を覚まし…
「松野ばーちゃん! ばーちゃん! 起きて下さいよ!」
「ばっ、ばーちゃ、ん…」
ーバタンッー
………。
この、あほんだら!
せっかく、一瞬目覚ましたのに、アンタがばーちゃんなんて言うから!
松野ばーちゃん、またお花畑に行っちゃったじゃん!
「おい、お前もばーちゃんって言ってる。」
あっ!
しまった…。
って。もういいよ!
めんどくさいよ! いいかげん。
ホントの事言って、何が悪いのさ?
「あら、開き直っちゃった。」
そうさね。あたしゃ知らないよ。
もう、好きにしな!
「…なんかさ。今日のナレーター、超機嫌悪くない?」
「そういえば…。何かあったのかな?」
「二人とも。今はそっとしておいてあげましょう。」
「?」
「?」
「誰でも、無償に腹が立ってしょうがない時が、あるものです。」
「…要因はアンタか。校長。」
「……。」