World-ヴァンパイア-
意味不明な話ですが、読んで下さると光栄です。
俺はある時、知らない男によって目覚めることができた。男はフード付きのローブを身にまとっていた。顔はフードに覆われ、表情が全く読めない。男は言った。
「一緒に来ないか?共に世界を滅ぼし、我らの世界を創ろう。」
俺は即答で承諾した。この世界は腐っている。くだらない人間どもが溢れ返っているだけの世界。確かに魔法使いやモンスターだって存在している。しかし、大半が人間なのだ。人間は醜い。自分達とは違う者を見ると、逃げ出す。俺も人間に恐れられている種族の一つだ。俺達の種族は人の血を飲み、肉を喰らう。そう、ヴァンパイアなのだ。だが、俺は人間を食料とはしていない。多少は口に入れるが、腐った世界の腐った種族など食べたくも無い。
「そう言うだろうと予測していた。これからは、我らは仲間だ。ゼル。」
男は俺の名を呼んだ。やはり表情は見えないが、一応喜んでいるらしい。
「お前の名はなんだ。」
静かに問いかける。
「・・・ラッシュ。では、行くとしよう。」
そして、ラッシュは夜空に飛び立った。翼も無いのにどうやって宙に浮いているのだろう。小さな疑問が頭をよぎったが、そんなことはどうだっていい。俺もラッシュに続いた。
数分夜空を横切った。ずっと俺たちは黙っていた。先に口を開いたのは俺だった。
「ラッシュ。お前の他に同士はいるのか?」
「・・・いる。我らのように、人間に蔑まれてきた者達が。両者とも、強者ばかりだ。お前にもその強さを見込んで誘いをかけた。」
初めに見た時も思っていたがラッシュは多分人間だ。それなのに世界を滅ぼそうとしている。いったい何故なのか。まだ、理解できない。
またしばらく夜空を飛んだ。今度はもうどちらも口を開かなかった。
そして、もうすぐ夜が明けるだろうという時、俺たちは目的地に着いた。そこには、俺たち二人を除いてもう二つの影があった。二人はヴァンパイアだ。ヴァンパイアの波動はすぐにわかる。人間にはわからないのだろうが。一人は物静かに座っていて、もう一人も座ってはいるが、がさつそうだ。
「よう、ラッシュ。遅かったじゃね〜か。夜が明けちまうぜ。」
二人の中で、背が高い方がラッシュに話しかけた。その男もやはりローブを着ている。フードは被らず、顔がはっきりとわかる。ローブでわからないが、多分力がかなりある。
「ああ、すまない。探すのに苦労したんだ。」
ラッシュが淡々と説明する。
そして、巨漢の男が俺に視線を向けた。
「おう、名前は?オレはディフィア。ディーと呼べよ。」
「ゼル。」
ディーは俺に少し興味を持っているらしい。にやついている。
「んで、この、無口なヤローがフォン。ほとんど喋らねーけど、強いぞ。」
俺はフォンの方を見た。やはりローブを着ている。ラッシュと同じくフードを被っている。軽く顔が見える。銀髪だった。フォンは俺のほうをチラリとも見ようとしない。
そんな時、ラッシュが口を開いた。
「これで、揃った。今から、人間狩りを始める。」
人間狩り?世界を潰すんじゃなかったのか?
そう心の中で問いかけるが、どうだっていい。奴らを殺せるなら何でもいい。
「ディーとゼル。我とフォン。二手に分かれよ。デス・ゲーム開始。」
俺はディーと東を殺ることになった。デス・ゲームと言うのは、直訳で『死の計画』。人間を殺して新しい世界を創るらしい。殺すのは犬だろうと猫だろうと構わない。たとえ、ヴァンパイアだろうと、この町にいる全てを殺す。それがデス・ゲームなのだ。
俺はディーにローブと剣をもらった。ローブは着ているだけで防御力が上がるらしい。フードを被っているとヴァンパイアの苦手な日光や十字架の効果を消し去ることができる。
「ゼル、勝負しようぜ!どっちが多く殺せるか。」
「・・・ああ。」
もう夜が明けた。夜から日の出までがベストタイムだが、今日は少し遅れている。あと数十分でケリをつけなければならない。
スタート!!
俺が初めに目をつけたのは小柄な男だった。俺を見ると、顔が真っ青になっていく。最初のほうは「近付くな!汚らわしき吸血鬼!!」とか強気だったけど、だんだん弱気に「許してくれ!!殺さないで!」と言うようになった。俺は、そう願う奴が好きだ。その願いを無視して殺す。俺に真っ赤な血が飛び散る。顔についた血を舐める。
「不味い血だ。」
俺はその後も人間を殺し続けた。そろそろ戻ろう。大体は殺した。それよりも、こんな風にちまちまと殺していくなんて一体どれくらいの時間が掛かるのだろう。
「よう、ゼル。何人殺した?オレは421人だ。」
得意げに笑うディー。421人。随分ハンパな数字だ。
「350人。」
「よしっ!勝った!」
うるさい奴だ。俺達が戻った時にはもう、フォンとラッシュが戻っていた。二人には血も何もついていなかった。どんな戦い方をしているんだろう。
もう朝日が昇り始めていた。俺達は夜明けと共にその場から消え去った。いくらローブを着ていても陽は苦手だ。もちろん、ディーとフォンもだ。ラッシュは日光も平気なようだ。本当に何者なんだろう。フォンの声も聞いたことが無い。
数日後、俺はディーと次のターゲットとなる町を見ていた。遠くからだが、よくわかる。騒がしくて、ウザい町だ。人間が笑ってる。それがどうしようもなくムカつく。今すぐにでも潰したい。でも、今はまだラッシュのゲーム開始命令が出ていない。俺達にはラッシュの言葉が絶対なのだ。
「うっとうしい町だな。」
俺はディーに話しかける。しかし、ディーは黙ったままだ。いつもと違う。
「ディー?」
「あ?なんだ?」
「・・・いや、なんでもない。」
それからディーはずっと上の空だった。話しかけても生返事しかしない。上の空というより沈んでる気がする。
そして夜。
「ディー。わかっているな。情けは無用だ。」
ラッシュが話している。何のことだ?ディーは敵に情けをかける奴じゃない。それは、数日見た俺がをかるくらいだからラッシュもよくわかっているはずだが?
そんなことを考えていると背後から声がした。
「次に殺るのはディーの町。ディーが育った所。」
声の主はフォンだ。初めて声を聞いた。人の心が読めるのだろうか?だがそれで、理由がわかった。自分の町は壊したくないのかもしれない。というより、普通はそうだろう。俺が違うだけで・・・。
「デス・ゲーム開始。」
ラッシュが開始の合図を告げた。
「おい、ゼル。ディーがためらいを見せたらお前があいつの分まで殺れ。」
「・・・ああ。」
今日は勝負するのだろうか。多分あの様子じゃ無理だろう。
俺はディーから貰った剣で技を少しマスターした。そのおかげで随分戦いやすくなった。一人ずつ殺るよりいい。
何度も何度も剣を振る。その度に血が俺に纏わりつく。全身が真っ赤に染まっていくことに快感を覚える。人間を斬ることは心の底から楽しめるものとなった。今まで殆ど口にしなかった奴らの血を飲むのが癖になっていく。相変わらず不味いが、その不味さがまた俺を奮い立たせる。
ディーは一応殺してはいるが、攻撃が甘い。
「ディー。しっかりしやがれ。世界を壊すんだろ?自分の町くらいで沈みすぎだ。」
そういった俺をディーが睨む。「うるせえ」とだけ言ってまた戦闘に戻った。本当に何かあるのだろうか。アイツらしくない。
俺はディーのことを放っておくことにした。このままいたら、苛ついて殺しかねない。俺が。
「先に戻る。」
一言だけ言っておいた。
「今日は早いんだな。ゼル。」
俺が戻るとフォンがいた。やはり、血がついていない。
「ディーのことが気になるのか?」
フォンはいつも以上に口数が多い。何故だ?今日は何かあるのか?
「今夜は満月だからな。満月のときは気分がいい。」
こいつは絶対人の心が読める。デリカシーの無い奴だな。まあ、いい。その方が都合がいい。
「ディーは何故あんなに沈んでる?おかしいだろう?」
「・・・アイツの親友がいる。同じヴァンパイア。アイツは仲間意識が私達より強い。仲間と一度認めれば絶対に裏切らない。世界を破壊するのは、自分の力を試したいから。生きてきた中での初めての裏切り。」
淡々と話すフォンの説明は分かりやすかった。フォンは月を見つめている。つきは怪しげに赤く輝いている。月は人の血がたくさん流れると赤く染まるらしい。今夜はいつも以上に血が流れた。大地や月を真っ赤に染めるまでに。
血が好きな俺。血が嫌いなアイツ。一緒に居られるわけが無かった。俺はもう一度アイツに会うだろう。デス・ゲームで。アイツを俺は殺せるか----?
夜が明ける。ラッシュとディーも戻ってきた。ディーは一応『裏切り』の壁を乗り越えたらしい。
「ゼル。何人殺った?オレ、今日は不調だったけど500人やったぞ。」
「・・・残念だったな。オレは601人だ。」
誰か助けて。俺の呪縛を解き放って。アイツにつながる重い重い鎖を----
「ゼル〜。次の場所決まったぞ。お前が嫌いそうなにぎやかな町だ。」
「その方が潰し甲斐がある。」
ラッシュとディーが今日は探索係だ。
「ちまちまと人間狩りをするのも飽きてきたな。今夜からは町ごと破壊する。」
作戦変更はアッサリとやってきた。俺としては少し不満だ。血を浴びるのが好きな俺はそれじゃきっと物足りないだろう。だが、ラッシュが言うのだから仕方ない。俺たちは従うだけだ。
『町ごと破壊』どうやってするのだろう。その方法は簡単だった。俺達四人の武器を合わせて呪文を唱えれば破壊される。もちろん、どこを壊すかを思い浮かべないと効果は無い。四人の心が一つになった時に力が増幅する。
あと、30分くらいで始まる。
・・・俺の剣、ディーの斧、フォンのルーンと呼ばれる魔術師の杖(だから血がついてなかったのか)そして、ラッシュ自身。
ラッシュは人間じゃない。死人だ。死人の力はすごいと聞いた。生けるものを全て無にする力があるらしい。制御しているらしい。コイツがいれば世界だって敵じゃない。
「・・・ラッシュ。お前、死人か?」
「それがどうかしたか?デス・ゲームに関係ないだろう。早くする。面倒だ。では行くぞ。」
【Demolition-デモリション-】
町で破壊音が聞こえる。人間が叫び、死んでいく。こんなとき、アイツならこう言うだろう。「かわいそう。助けてあげたい。」この言葉は俺からしたら、偽善だ。うっとうしい優しさ。
町が死んでいく。
「う・・・かはっ!!」
俺は急に苦しくなった。うまく呼吸ができない。頭の中にヴィジョン(幻影)が入り込んでくる。
「うあっ!はぁ、はぁ、」
「おい!ゼル?どうしたんだよ!?ゼルッ!!」
遠くでディーの声が聞こえる。俺はそんな中、意識を失った。
「ゼル、あのね。」
今、俺が見てるのは夢?アイツがいる。俺の目の前に。笑ってる。シャルビナ。
「わたし、ゼルのこと好きなんだ。ゼルはヴァンパイアでわたしは人間だけど、ゼルが優しいの知ってるよ。」
シャルビナ。無理なんだよ。俺とお前は一緒に居られないんだ。血が好きな俺と、血が嫌いなお前。わかるだろ?俺はお前と居たら・・・ダメなんだよ。
「大丈夫だよ。」
「父様を殺したの?」
・・・そうだよ。殺したよ。血を貰った。
「なんてことするの!?最低。ゼル。わたし、貴方のこと許さない。父様を殺した貴方を許さない。」
ウソツキ。大丈夫だって言っただろ?やっぱり無理なんだよ。シャルビナ。
俺はもう、ここを離れる。お前といられない。
俺は眠る。お前を、この世界を恨んで。目覚めた時には、世界が嫌いでお前を嫌っている俺になる為に。
「一緒に来ないか?世界を滅ぼそう。」
「・・・ルッ。ゼル!」
目を開けるとディーの顔が見えた。フォンも俺を覗き込んでいる。
「ゼル。お前どうしたんだよ。いきなり苦しみだして、倒れて・・・」
そうだよ。俺は世界をぶっ壊す。そう決めたんだよ。アイツを・・・殺す・・・。大丈夫だよ。俺はアイツを恨んでる。憎んでる。
そう、言い聞かせないと死ぬかのように、心の中で何度も何度も繰り返した。
今夜のターゲットは西の町。今回は町ごと破壊はしない。ラッシュが主の力となっているのだが、肝心のラッシュが力不足なのだ。力の消耗が激しいらしい。
もうすぐ、世界を破壊する。ちっぽけなこの世界は一ヶ月ぶっ通しで殺って終わるぐらいの数しか町が無い。もうすぐ、一ヶ月。早い。
今夜も、デス・ゲーム開始。
今夜は人間を殺すのが、とてつもなく怖かった。これでわかった。いや、ずっとわかってた。
俺はアイツを殺せない。
「何故、貴方は人を殺すの?死んだ人の気持ち考えてるの?かわいそう。」
「!!」
俺の背後に人間の女がいる。気付かなかった。『かわいそう』だと?じゃあ、俺達は?人間に追いかけられて闇の世界で生きるしか無くなった俺達の先祖は?人間は俺達に襲われて、一番『かわいそう』だと思ってる。自業自得のくせに、そういう環境にしたのは自分達のくせに!
「アイツと同じこといってんじゃねえ。殺す。」
俺は容赦なく斬りつけた。もう、揺らがない。アイツを殺す。
殺すって言ったり、殺せないって言ったり、随分迷ったけど、人間のアイツはヴァンパイアの『敵』なんだ。それさえわかれば、もう、迷わない。
ラッシュが次の町を俺の町だと告げた。最後の町。やっと、来た。アイツを殺す日が・・・。それよりも、ラッシュは死人だとわかったが、他は何も知らない。顔も、破壊の目的も。あえて言うなら、敵か見方かもわからない。
「ラッシュ。お前は何で世界を壊すんだ?」
率直に聞いてみた。その結果、
「ゲームに関係ない。話す必要が無い。」
軽く、あしらわれた。
「ある人物と戦う為だ。」
ボソッと言うラッシュ。ある人物。俺と同じ目的だ。・・・同じ?
俺はラッシュを不審に思った。そんなわけが無い。第一、性別が違う。しかも、アイツが、世界を壊すなんて、そんなことができるはずない。一瞬でも疑った俺がバカらしい。
ゲームスタート!!
俺は真っ先にシャルを探した。今日は、何故か俺はラッシュと組んでいる。
町を片付けるのに一時間もいらなかった。
「そろそろ、始めたい。いいか?ゼル。」
ラッシュが何か言っている。
「は?何の・・・」
「最終決戦。だ。」
俺の言葉は最後まで続かない。そして、ラッシュはとんでもないことを口にした。
最終決戦?ラッシュが戦いたいと言っていた相手は俺だったんだ。それは、どういうことなんだ?俺はラッシュと会った事が無かったはずだ。あの夜、初めて会ったんだ。「世界を壊そう」って・・・
「何のことだよ。」
「ゼルは鈍感だね。わからない?我は・・・いや、わたしはシャルビナ。」
そう言ってローブをサッと脱ぐラッシュ。いや、シャルビナ。金色の髪、青い瞳が現れる。その瞳は、見たことの無いような鋭い目つきだった。あの時からほとんど変わっていない。
さっき疑ったことが本当になった。シャルはずっと近くにいた。一緒に人間を殺して・・・。
「シャル?何故・・・おかしいだろ?ラッシュは男で、お前は女だろう?声も違っていたし、性格も・・・違うだろ?シャルは、人間が死ぬのを見るのとか嫌だったはずだ。それなのに、率先して殺して・・・」
「普通だよ。『ラッシュ』は元からいない。声色を変えていただけ。わたしの名前のスペルを変えただけ。S.H.A.LとL.A.S.H。ゼルが、この町から逃げ出してから、わたしも、わたしの世界も変わったんだ。わたしとゼルを引き裂いた環境が許せなかった。どうして、ヴァンパイアは血を飲むの?どうして、一緒に居られないんだろう?って考えた。その環境を作った人間が、殺したいくらい、憎かった。貴方も、憎かった。大切な父様を殺した。」
シャルは震えていた。俺は、こんなシャルを殺せるのだろうか。俺を愛してくれた人間を・・・。
でも、迷わないって決めた。戻ることはできない。
「シャル。俺はお前を殺す。」
シャルは俺のほうを見た。
「殺すなら、殺せばいい。でも、わたしは一度死んでるから。貴方にわたしは殺せない。」
そう。ラッシュが死人なら、シャルも死人なんだ。俺の力じゃ無理だ。どうしたらいい?消滅させるしか方法は無い。だが、俺は消滅の仕方を知らない。
「最終決戦なんて言ったけど、わたしは、ゼルを殺したくない。好きだから。わたしを消滅させて?」
消滅の仕方。ヴァンパイアが死人の血を吸うこと。全て飲み干した時、消滅する。シャルは、まっすぐと俺を見ていた。するしかないんだ。
「わかった。」
ガブッ
静かに俺はシャルの首筋に噛み付いた。身体にシャルの血が入り込んでくる。味は無い。さすが、死人だ。この血だけは飲みたくなかった。シャルに殺されたほうがマシだった。でも、そうしないとシャルが永遠にこの世界を彷徨うことになるから。
そっと、口を離した。訳も無く、涙がこぼれる。
「シャル、俺は、またお前に逢いたい。いつか、絶対、また逢おう?」
そう言った時にはもう、シャルは『消滅』していた。
いつか、逢う日まで。
俺は、また眠る。ディーやフォンに何も言わずに。目覚めたら、世界が好きで、人間を嫌ってない俺になっていたらいいと思う。
「わたしと一緒に来ないか?共に、世界を創ろう。」
俺の答えは決まってる。
「・・・ああ。」




