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アタタメマスカ

李さんは外国人留学生だ。そして、駅前のコンビニで、僕と一緒にアルバイトとして働いている。


資格外活動許可もきちんと取得。大学での専攻は日本語。

発音的にはまだまだぎこちないけど、日本語の会話は全く問題ない。


早口でぶっきらぼうにしゃべるコンビニ客の言葉もちゃんと聞き取れている。


その上、仕事も的確で、勤務一週間もしていないのに、うちの店ではもうかなりの戦力だ。


半年前から働いている浪人生のナントカ君なんかよりよっぽど気が利く。


その上かわいい女の子。ここ重要。


李さんのおかげで最近コンビニのバイトがとても楽しい。


「オベントウ、アタタメマスカ」


レジに入っていた李さんが、お客さんに聞く。


お客さんは一瞬だけ「あ、外国の人かー」なんて顔になりつつ、「はい、お願いします」と答える。


「ショウショウ、オマチ、クダサイ」


李さんがそう言って、お弁当を電子レンジで温める。


うちの店での外国人アルバイトは李さんだけ。近隣の別のコンビニとか、工事現場とか、そういうところで働く外国の人も増えたよなーなんて、僕は品出しをしながらぼんやりと思う。


レジ待ちの次の客もお弁当で、やっぱり李さんは「アタタメマスカ」と聞く。

まあ、コンビニのマニュアル通りの聞き方だから当然と言えば当然。


彼女のいかにも外国人的な発音を、バイトの時間内、僕は何度も何度も聞く。


「アタタメマスカ」


お昼どきだからね、弁当を買う客は多いんだ。「アタタメマスカ」の声を、繰り返し聞いていると、李さんの声が、まるで魔法の呪文を唱えているみたいだな……なんて、思ったり。


戯言、だったのに。

まさか本当に、「アタタメマスカ」が魔法の呪文になるとは……。


あははははは……。


そう、今の日本では、魔法が使える。

使えるようになってしまった。


まるでラノベかアニメの展開だけど、異世界というものがあって、ダンジョンというものがあって、それが、日本と繋がってしまったのだ。


いや、日本だけじゃない。世界中のありとあらゆる場所が異世界のダンジョンと繋がった。


で、そのダンジョンから、魔物やら魔法生物やらがどんどんどんどん世界各地に出没しだした。

自衛隊の皆様も、各国の軍隊やら自衛組織やらが頑張って戦って、魔物を排除して……、で、ある時、フツーの人間だった僕たちも魔法やら何やらが使えるようになってしまっていた。


わーあ。

びっくりだ。


なんて、言っている場合ではなく。

今日も、コンビニの近くのダンジョンから、魔物がわらわら湧いて出てくる。


運悪く、コンビニの外で清掃をしていた僕は、ゴブリンという魔物たちに囲まれた。


マズいなー。


魔法が使えるようになったと言っても万能じゃない。

その上、僕が使えるようになった魔法は、戦闘向きじゃないんだよな……。


さて、どうしようか……と思っていたところで、コンビニの店内から外に飛び出してきた李さんが、ゴブリンに向かって「アタタメマスカ!」と叫んだ。


ゴブリンたちは「ギギャギャギャギャ!」なんて感じに歯を剥きだしにして叫ぶ。


すると……。


ゴブリンの身体が爆発四散した。


うわーお。


「ありがとう、李さん。助かったよ」


李さんは半泣きの顔で「スズキサンガ、ブジデ、ヨカッタデス……」と言った。


李さんの固有魔法「アタタメマスカ」は、電子レンジに入れて温めたお弁当のごとく。「アタタメマスカ」の問いかけに答えた魔物たちを、電子レンジに入れたような状態にするのだ。


電子レンジには入れたものを内側から温める性質があり、温められた水分が蒸気になって一気に膨張。

皮で包まれているということは、行き場を失った蒸気が「ボン!」と爆発してしまうと言うことで……。


魔物だって、皮膚という皮があるからね……。


どれだけコンビニバイトでこのセリフを繰り返していたんだろうかと、眉をひそめてしまいそうになるけど。


魔物がわらわらと出てくる世界では、身を守るためは広域攻撃魔法を持っていたほうが良いよね。



というわけで、僕の目の前には、爆発したゴブリンの屍累々……。


スプラッタはあんまり見ていたくないので、死体はさっさと消すに限る。


「清掃」


僕がぼそっと言えば、ゴブリンの爆発死体はきれいに消えた。


コンビニから出るゴミとか、生きている魔物も消せればいいんだけど、僕の能力は残念ながら魔物の死体限定。

生きている魔物は倒せない。


だから、こうやって、コンビニ周辺に魔物が出た時は、たいてい李さんが爆発させて、僕がきれいに片付ける。


ナイスコンビネーション。

ナイスパートナー。


なんてね。



「さ、コンビニの中に戻ろう。助けてもらったお礼に何か飲み物でも」


と、僕は李さんに言って、温かいコーヒーを二人分用意。


コンビニのコーヒーだけどね。


ほっと一息。


二人でふうふう言いながら、コーヒーを飲んで。


魔物は嫌だけど、こんなふうに李さんと一緒に温かい飲み物を飲む時間が増えればいいなーなんて、僕はちょっとだけ思ったりした。





終わり





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