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転生先にマカロンがないからどうにかこうにか作ってみたよ  作者: 櫻木サヱ
甘さの行き先

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13/17

初めての「値段」

翌朝、家の前に荷車が止まった。


軋む音と共に、見慣れた影が降りてくる。


「早ぇな」

「商人は朝が命だ」


ガルドはそう言いながら、荷台の布をめくった。


中には、木箱が三つ。

一つは卵。

一つは乾燥果実。

もう一つは、濃い色の蜂蜜の瓶。


「……多くないか」

「最初はな」


意味深な言い方だった。


箱を運び込み、机に並べる。

材料を前にすると、自然と頭が切り替わる。


「条件は覚えてるな」

「味を良くする」

「そうだ」


ガルドは腕を組んだまま、俺の動きを眺める。


今日は、試作だ。

乾燥果実を刻み、蜂蜜を少量混ぜる。

砂糖は控えめにして、香りを立たせる。


焼き上がるまでの時間、部屋には甘い匂いが満ちた。


「……悪くねぇな」

「まだだ」


自分でも分かる。

焼き色が少し浅い。

もう一度、温度を調整する。


二度目。


今度は、表面が薄く艶を帯びた。


一口、割る。

中から、果実の香りが立つ。


「……これなら」

「おう」


ガルドは、無言で一つ口に入れた。


しばらく、噛む。


「……で」

「値段は、いくらだ」


その言葉で、手が止まった。


「……まだ、決めてない」

「だろうな」


責める様子はない。


「だがな」

「売るなら、避けて通れん」


皿の上の菓子を見る。


「……高くは、できない」

「材料も、安くないぞ」


「分かってる」


しばらく考える。


「……一つ、銅貨三枚」

「ほう」


「最初は、それでいい」

「安いな」


「……売れなきゃ、意味がない」


ガルドは、少しだけ口角を上げた。


「いい」

「じゃあ、その値で出す」


「……本当に?」

「責任は、俺が取る」


重たい言葉だった。


「代わりに」

「数は、用意しろ」

「……何個だ」


「三十」

「……多いな」


「市場は、様子見だ」

「だが、反応は欲しい」


三十。

今までで、一番多い。


「……やる」


そう答えると、ガルドは満足そうに頷いた。


「明後日だ」

「朝一で出す」


ガルドが帰ったあと、部屋に静けさが戻る。


机の上の菓子を見つめる。


値段。

数字一つで、価値が決まる。


「……売る、か」


胸の奥が、少しだけざわついた。


だが、不思議と怖くはなかった。


「……やるしかないな」


甘さは、もう自分だけのものじゃない。

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