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西園寺青豆の不運  作者: 雨水卯月
第二章

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小話3 青豆と海翔

青豆と海翔。

いつも仲良し――に見えるけれど、実はよくケンカする。

内容は大体くだらない。

LINEの返信を忘れたとか、どっちが多く電話かけたかとか。


「もうっ!知らないっ!」

大抵、青豆が怒って、海翔が慌てて謝る。


恋とは、想いの深さと重さと質で、力関係が決まる。

でも、今回は違った。


『今回は俺も折れない。絶対』


青豆、びっくり。

でも引くのもなんだか違う気がする。


青豆は、頑固ではない。

もし石みたいに固い頭をしていたら、

降りかかる不運を、こんなに上手に受け流せない。


彼女は柔軟だ。つまり、最先端だ。

そう、「彼氏以外の男友達と海に行くことの、何が悪いの?」理論である。


一方、海翔は保守。いや、保守中の保守。

俺が隣に居ない時に「足は出さないで」「肩も出さないで」

それが彼の信条。



発端は青豆の何気ない一言。


「七瀬とモモで来週海に行くんだ~」

『何言ってんの!?絶対ダメだよ!なんで、七瀬に青豆の水着姿見られなきゃなんないのっ!』


俺だって見たことないのに――

と、海翔は心の中で叫ぶ。


くだらない。

実にくだらない。

けど、本人たちはいたって真剣だ。


「だって、女の子だけじゃダメって言った!」

『それもダメだよ、絶対ナンパされるじゃん!』

「じゃあ、海に行きたい時、どうすればいいの?」


『家族で行くとか?』

「お父さんと海?ないないない!!」


会話は平行線。

いや、もう水平線の彼方。


「ラッシュガード着る。絶対脱がない。」

『……』

「七瀬とモモから離れない。」

『……』

「ね?いいでしょ?海翔」

『わ、』

「わかった?」

『…分かってあげられなくてごめん』


「なにそれぇ!?」


そして冒頭に戻る。


「もうっ!知らないっ!」

『今回は俺も折れない。絶対』

「知らないもん。勝手に行くもん」



---

怒りが行き場をなくした青豆は、

香澄とすずめに愚痴をこぼす。


「海くらい我慢しなよ。お義兄(にい)ちゃんがかわいそうじゃん。」


香澄はサンフランシスコ限定のスタバポーチを指で回しながら言う。

海翔のセンスは、抜群だった。

故に……買収は、完璧だった。


「そこまでして海行きたい?ベタベタするし、砂だらけになるし、クラゲいるし」

すずめよ、なぜお前が敵側なのか。

まさかのホームで味方、ゼロ。



こうなったら、七瀬に助けを――


《ごめん、海行けなくなった》

《モモも~》


二人からのメッセージ。

グループLINEが、一気に静まり返る。


《なんで今さら?》

《青豆との友情と、海翔との友情だったら、海翔の方を取る》

《モモ、ナンパはキライだから。青豆と二人なら行かな~い》


青豆は、この日初めて、恋人の“運のよさ”を呪った。


(もー!この前の帰国で二人を紹介するんじゃなかった!)


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