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西園寺青豆の不運  作者: 雨水卯月
第二章

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小話1 海翔と七瀬

「百田でーす!モモって呼んでね。うわー…彼氏、イケメンじゃん!青豆やるねぇ!」

「七瀬です!青豆の彼氏さん、初めまして!よろしく」

「……ちわ」


――今、青豆は「板挟み」という言葉を、実地で学んでいる。


七瀬は、“お宅の彼氏どういう態度?”と青豆を責め、

海翔は、“こんなやつとよろしくしたくない”と態度で訴え、

百田が「まあまあ」と間に立つ。


もし百田がいなかったら、

青豆の胃には小さなクレーターができていたかもしれない。


受験が終わった3月の終わり。

海翔がセミナーを終えて一時帰国した。


「受験終わったら遊びまくろ!」と息巻く百田。

予定を詰めていくうちに、青豆が言った。

「その日は彼氏が帰ってくるから、無理」


――のはずが。


「青豆の彼氏見たい!じゃない、会いたい!」

と、いつもの“コミュ力の暴力”が炸裂。

七瀬まで加勢してきた。いつものブレーキ役は、今日は不在らしい。


結局、押し切られた青豆は言ってしまう。

「聞くだけ、聞いてみる」


そして、返ってきたのは――《いいよ》。


いいの?

青豆は不思議に思った。

もしかしたら、あの時のアレは嫉妬じゃなくて、羨ましかっただけ?

と勘違いした。


そして今――全然、“いいよ”じゃないじゃん…

重苦しい空気のまま

4人は、駅前のカラオケ店へ吸い込まれていった。



「青豆、行こ」

百田に腕を引かれ、ドリンクバーへ向かう。


「青豆の彼氏、ほんとイケメンだね」

「なんかごめんね。いつもあんな不愛想じゃないんだけど」

「そんだけ警戒してるってことでしょ」

「なにを?」

「やだー、青豆、しらばっくれないでよ」


百田はストローをくるくる回しながら、ため息混じりに言う。

「七瀬、かわいそ」


青豆は聞き逃した。珍しく。幸せなことに。


---


その頃、室内は――静寂。

沈黙が流れるカラオケルームほど、居心地の悪い場所はない。


七瀬が絞り出すように口を開く。


「あのー……もしかして、俺のこと、キライ?」

「キライ。」

「まじかー……マジかー」


二回言った。ダメージが大きいらしい。

海翔はまっすぐ前を見据え、眉間に皺を寄せたまま言う。


「だって、いつも青豆の隣の“俺がいるはずの場所”にいるし。名前呼び捨ても気に入らない。」


なるほど、嫉妬の塊のようになっている。


七瀬が笑って言う。

「じゃあさ、俺と海翔も友達になればいいじゃん?」

「ならないよ。お前、青豆のこと好きだろ?」

「……あー。でももう諦めたよ」


「諦めたの? ていうか、あの子の隣にいて諦められるの?」


その言葉に、少しだけ沈黙が落ちる。

やけに説得力がある。

やがて七瀬が、笑いながら言った。


「青豆見てると、海翔のこと大好きなんだなって思うから。諦められるよ」

「……名前呼び」


「俺たちもう友達じゃん?」

「“ハルちゃん”って呼ぶぞ」

「なんで知って……青豆かっ!」


海翔がふーっと息を吐く。

張りつめていた空気が、少しだけ、春になる。


「いいよ、遥。友達になろう」

「おう!」

「で、青豆に近づく男がいたら、LINEで知らせて」


――ブレない。潔いほどに。

七瀬は目を輝かせた。

(こいつ、ちょっと面白いかも)



「おまたせー!……あれ、なんか仲良くない?」

百田がすぐ察する。勘がいい。というか、野生。


「海翔、俺たちマブダチになったんだよな!」

「そこまでじゃない」


肩を組まれて、海翔が冷静に突っぱねる。

あ、ツンデレだ。


その光景を見て、青豆はちょっとだけ笑った。

“人って、嫌い同士でも、案外仲良くなれるものなんだな”って。


そして彼氏の新たな一面を発見し、新しい扉を開きかけた。

ツンデレの海翔もかわいいな、と


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