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西園寺青豆の不運  作者: 雨水卯月
第一章

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小話4 誰も彼も足りないものを持って、それでも生きている

「なかなか病的だね」

「やっぱりそう思う?でもめっちゃ好きなんだ」

「そもそも思春期まっただ中の、生粋の日本男子がそんなに好意を表に出せるのがオカシイ。変態なの?それとも人生二回目?」

「…どっちでもないと願いたい。」


これ、二階堂すずめと藤堂海翔の会話。

内容はお察しの通り、“青豆について”


「だってあの子、すごい綺麗で可愛いじゃん…」

「そうかあ?」


すずめはすでに飽きていた。

たぶん、あと三分で鼻をほじる。


二階堂すずめという存在は不思議だ。

女らしさも男らしさも、どこか置き忘れてきたような、真ん中のひと。

いつも青豆の味方でありながら、海翔の気持ちも簡単に理解してしまう。

それが洞察なのか、経験なのか――海翔には分からなかった。


「てかさ、青豆が藤堂を裏切ることはないよ」


そうだ。

あの子は情に厚くて、無駄に真面目で、底抜けに優しい。

それでも、どうしてか不安は消えない。


恋って、ほんと理不尽だ。


「それが分かっても、あんたの不安はなくならないよ」


すずめは淡々と、未来を予言した。

まるで悪気のない預言者みたいに。

やだな、超当たりそう…。


「分かってる、自分でも分かってるんだ」


きっと、すずめと海翔は足りないものが似ている。

それ故、諦め方とか、譲れないものの持ち方とか。

そして、好きな人への執着の仕方とか。


「すずめー、帰ろ。あれ、藤堂?まだ帰ってなかったの?」


仮にも彼氏にこの扱いである。

普通、逆じゃない?


「俺も一緒に帰っていい?」

「ごめん。今日は、すずめとの約束だから」


拒絶。

その一言が、心の奥に刺さる。

海翔は立ち上がったまま、フリーズする。


「ま、そういうことで~」


すずめは軽い口調で教室を出ていく。

海翔は思わず青豆の手を引いた。


「藤堂?」


きょとんとした目。

言わなきゃ。何か言わなきゃ。


「青豆、俺の方が好きだからね」


出てきたのは、情けないほど嫉妬まじりの言葉だった。

青豆はすぐに察する。

そういうところ、ほんとズルい。


「藤堂、これ、貸してあげる」


青豆は首から外したヘッドフォンを、海翔にかけた。

まだ、青豆の熱が残っている。

音楽は再生中。青豆のスマホと繋がったまま。


「これ、離れたら切れちゃうじゃん」

「自分のとペアリングしなよ」

「ううん、ギリギリまで青豆ので聞きたい。いい?」



「しょうがないなぁ、聞かせてやろう」と言いながら

青豆はあっさり手を振って出て行った。


窓際に座り、海翔は外を見た。

青豆とすずめが、肩を並べて笑っている。

なんだよ、それ。ずるいじゃん。


ぶつり、と音楽が途切れた。


――ここまでか。


海翔はヘッドフォンを外す。

くん、と電子機器の匂いを嗅ぐ。

青豆の残り香と、わずかなぬくもりが耳に残る。

「あれ?やっぱり俺って変態なのかな?」


恋は、平等じゃない。

でも、“不平等を許せる”のも恋の醍醐味かもしれない。



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