小話1 モテ期の到来、女豹と友情
海翔はモテる。
どのくらいモテるかというと――
他校の女子が、わざわざ出待ちするくらいには、モテる。
金髪を黒髪に戻し、鋭い目つきが柔らかくなった頃から
学内どころか、学外にまで――
空前の藤堂海翔フィーバーが起きていた。
今日も今日とて、校門前には他校の女子たち。
まるでアイドルの出待ちのような光景が広がっている。
「青豆、隠して」
「やだよ。絶対やだよ。死んでもやだよ」
だって、恋愛って、案外『守る』より『逃げる』の方が難しい
日に日に増えていく女豹の群れ。
日に日に濃くなっていく、女豹のアイライン。
海翔は、もはや肉食獣の前に差し出された子ウサギのように震えていた。
「ひどくない?彼女じゃん。他の女子から守ってくれてもいいじゃん」
「やだよ。怖いよ。絶対刺されるじゃん」
――あの女豹たちのギラギラした目を見たら、たぶん誰でも逃げる。
「私、先帰るわー」
「すずめ!私も帰るっ」
「青豆!置いてかないでっ」
青豆がすずめを引っ張り、海翔が青豆を引っ張る。
それでも蕪は抜けません。
――あ、違った。
「ちょっと!ちょっと!私を巻き込まないでよ」
「すずめだって、藤堂の友達じゃん。無関係じゃないよ」
「じゃ、私、友達辞めるわ」
「そんなあっさり!?」
明らかに面倒そうな女子二人。
「二階堂も青豆もひどい……俺、被害者なのに……」
純粋で素直な海翔は、二人の軽口を真に受けたらしい。
――まっすぐで、なんてかわいい性格。
「大丈夫だよ。置いてかないよ」
「そうそう、こんな面白そうなこと、目の前にして帰るわけないじゃん」
純ボーイをからかいすぎた。
二人はちょっとだけ反省する。
「要は、見つからなきゃいいんでしょ?」
「どうすんの?」
裏門も、変装も、もう試した。
それでも毎回追われて、結果は放課後の持久走大会。
もう、あんな心臓と脇腹が痛くなる逃走劇はごめんだ。
それに最近、女豹たちの持久力も上がっている気がする。
「藤堂家の権力を使って、先生に送ってもらおう!」
「……最終奥義だね」
「俺、頼んでくる……」
恥も臆面も遠慮もなく、権力を使い
恥も臆面も遠慮もなく、大人を頼る。
――それは、すずめらしい最適解だった。
「……先生、本当に送ってくれたね。」
「しかもベンツ。」
「でもあの人たち、今度は免許取るかもよ」




